[No Border Friends] トピック

2011年01月01日
01:42

【解答】ウミガメのスープ ~メリーメリークライシス~

※注意!※
これは出題、ウミガメのスープ ~メリーメリークライシス~ の解答です。
問題文を見ないで解答を見たくない方などは即座に閉じることを強く推奨します。







スカイランカー世界大会『ハイエンドランカーズ』、全てはそこから始まった。

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Sky Ranker ( 意訳:空の資格者 )
スカイランカーとはRFG(リアルタイムフィードバックゲーム)の一種で、
パルクール、フリーランなどと呼ばれるスポーツを原型にしている。
プレイヤーは五体のみを使い、あらゆる道なき道をも見つけ出して走破する変わったレースゲームである。
ただし、このゲームは必然的に走破する最短ルートがある程度限定される。
よって、プレイヤー達はそのルートを通るためにあらゆる物理的な妨害手段が行われる。
そういったややバイオレンスな要素も含まれるゲームである。
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そのスカイランカーの世界大会の決勝、ステージは空中都市『マチュピチュ』
事実上空中に浮かぶ都市が時間を経過するごとに崩壊していくステージだった。
そこで繰り広げられる熾烈を極めるその戦いが、何事もなく終わるほうが非現実的ですらあった。
とある1コース、といってもすでに足場も危うく、崩落する瓦礫を足場に空中を駆ける必要があるような
そんな道で1組の対戦カードが切られた。
片方はランカーランク4位につけるシェスタ・ローラン。
もう片方はランカーランク13位のジャック・アンバーソン。
勝負はシェスタの勝利かと思われたが、その日のジャックの動きは違い、両者の実力は拮抗した。

しかし、やはりというべきか勝敗はシェスタに傾いた。
崩壊する足場に気を取られたジャックの隙を突いてシェスタの回し蹴りが突き刺さったのだ。
それを決定打にジャックは、はるか下方の大地へと、空中都市の瓦礫ごと叩き落とされた。
この決定打は、もう一つの決定打も与えてしまった。

ジャック・アンバーソンはスカイランカーのプレイ用機器にある細工をしていた。
それはゲームでのあらゆる五感への影響をフィードバックする機能の安全装置を解除するものだった。
この装置を解除することであらゆる感覚を現実世界と寸分変わることなく体感できる
それによりゲーム内での動きがより鮮明に、正確に、行えるという利点が存在する。
しかし、安全装置がかけられている通り、これには問題が発生する。
強力な衝撃などもそのままストレートにフィードバックしてしまった場合、
実際の衝撃は受けずとも、その衝撃は脳へと叩き付けられ、最悪ショック状態を引き起こすからである。



ジャックが受けた衝撃は、想像以上のものだった。
上空30余メートルからの垂直落下、加えてその高度からの瓦礫等の落下物の直撃。
安全装置がかけられていれば最悪失神で済むレベル。
しかし、安全装置を解除していたジャックはそんなことでは済まなかった。
ただちに病院へと搬送されたジャックだったが、まもなく死亡が確認された。
ほぼ即死であったとのことであり、安全装置の解除だけでなくフィードバック効果を増大させていたと思われる。
しかし、激しい戦いが繰り広げられるスカイランカーの大会では搬送者は日常茶飯事であり
また、対戦者だったシェスタにはジャックの訃報は知らされなかった。



――しかし、これにも理由があった。
  ジャックには、病に伏せる妹がいた。
  その妹の病は非常に珍しく、治療するためにも高額の治療費が必要だった。
  発覚したのはついひと月前、一刻も早い治療が必要であることも医者から教えられていた。
  地道に働いても作り出せない大金、ならば一縷の望みをかけて挑んだのがこの大会だった。
  その気負いの余り、不正な安全装置解除ツールにまで手を染めてしまった彼を誰が責められようか。

  そして、そのジャックを支えていた幼馴染の女性がいた。
  名をエミリー・ディキンソン。
  ジャックの妹のことも知り、可能な限り彼をサポートしていた人物だった。
  ひと月に渡るサポートを続けていた彼女の胸には一つの決心があった。
  今、ジャックは妹のために頑張っている。ならば、それが成功した暁にはこの気持ちを打ち明けようと。


――しかし、二人のそれぞれの願いは叶わなかった。
  ジャックは死に、エミリーの思い人は逝った。
  だが、エミリーの思いはそのままの大きさを保ち憎悪へと変わってしまった。
  あの時、あの女がジャックをやらなければ、と。
  スカイランカーの世界大会は失神者の即時ケアを目的とする専用会場にプレイヤーを招待して行われる。
  エミリーはシェスタの顔がわかり、そして大会優勝者である彼女の住居もネット情報を頼りにすぐに見つけ出した。



そして事件は起こる。
エミリーは深夜、ハイエンドランカーズ優勝者・シェスタを襲った。
「あっちの世界なら存分に活躍できるんだ、一生あっちで生きてしね」と。
完全な逆恨みによる襲撃だった。
エミリーはシェスタの現実世界での活動を封じるために目を激しく持っていた刃物で切りつけた。
誤算だったのは、勢いのあまりそれが眼球だけでなく視神経すらも傷つけたことだったろうが、
当人であるエミリーはそれを知ることなく現行犯で逮捕された。
そして、この逆恨みはまた一人の少女を傷つけた。



全力を尽くし、ネット上とはいえ五体をフルに使うその戦い。
そうした世界が、現実まで襲ってくるとはシェスタは想像すらしていなかった。
今までしてきた数々の行い、ゲーム上では日常のような戦い。
勝ちもしたし負けもした、しかしそれらがまるで自分に襲い掛かってくるかのような錯覚を覚えたからだ。
視力を失い日常生活も困難な上に見えない人全てがまるで自分を襲うのではないかという錯覚
それらが彼女の他人に対する視点を捻じ曲げていくのに長い時間はかからなかった。



シェスタの姿を見た彼氏、デニー・ロバーツは大きな行動に出た。
元来、プログラムの腕に秀で、それを生かした仕事に若きながらも精鋭として働いていたデニー。
彼が立てた計画は壮大でありながら、荒唐無稽ではなしとするものだった。

まず、世界中に高性能なハッキングツールのフリーソフトをウイルス形式で散布する。
この方法でばらまいたツールには隠しておいた機能も含まれていた。
そして、ハッキング騒動が立ち上がったところで専用の対策ソフトを公開する。
これは匿名による投稿という形でアメリカの国防省に寄贈した。
このウイルス対策ソフト(ハッキング対策ソフト)が十分に散布され、
特定の日時がくるまで静かにその時を待つことになる。
覚醒するのは12月の31日。

この計画と並行して彼は友人達に声をかけてもう一つの計画を立てた。
シェスタの誕生日が12月31日、その日に晴れて成人を迎える彼女に最高のプレゼントをあげたい。
そういう風に声をかけたら友人達は快く承諾してくれた。



そして、12月31日が訪れる。
世界中のあらゆるネットワークがダウン。
その時点において事前にばらまいたハッキングツールと、ウイルス対策ソフトがリンク。
世界中にそのどちらかのツールが含まれているありとあらゆる電子機器をハッキングして乗っ取った。
そして、この瞬間にデニーはスカイランカーを使い、ある処理を開始した。


――同時刻

シェスタの家に、彼女の親友があるものを持って訪れた。
1つは言葉、デニーからのどうかスカイランカーに繋いで欲しいとの伝言。
そしてもう1つ、デニーがシェスタへ、と言って渡した小さな小箱。
小箱を開き、触り、驚き、再びやさしく触れた。
目が見えずともそれが指輪であり、どのような意味をもつ指輪なのかを彼女は理解した。
恐る恐るスカイランカーにアクセスするシェスタ。
エミリーに襲われ、知らずのうちに接続すらしていなかったスカイランカー。


スカイランカーにアクセスした彼女の目の前に広がっていたのは夜空だった。
そして、何度も見かけたメールアイコンが左上に表示されているのを見つけ、メールを開く。

『 まず、この手紙を見てくれているということは
  あれほど嫌っていたこの世界にまた来てくれたということ。
それをまずありがとうと言わせて欲しい。

僕から君にかける言葉はあまり多くは見つけられない。
でも、僕は君と笑っていきたい。
君の笑う顔を見たいし、僕が笑う顔も見ていてくれると嬉しい。
リアルで叶わない願いでなら、せめてこの世界で。
君と一緒に歩めるこの世界をどうかもう一度好きになって欲しい

君が覚えているかはわからないけども、
僕達が最初に戦ったあの夜空が今、見ているこの空だ。
あの時の楽しさを、時間を、今の気持ちと共に届いたらと思う

  ――― 愛する、シェスタ・ローランへ 』

そのメールを読み終わった時、シェスタの目の前にはデニーのアバターが立っていた。
「いろいろ話したいことはあるけれど」
そうして切り出したデニーの言葉は、とても信じられないものばかりだった。
ハッキングツールの作成、その対策ソフトの作成、それを使ったネットワークの乗っ取り
そしてスカイランカーを使ってまで自分に思い出させてくれた様々なこと。
彼はひととおり話終えると空を見上げた。
つられてシェスタも空を見上げる。
夜空には、皮肉なプロポーズが書かれていた。

『 Merry Merry cry sys, :素敵な素的な泣き虫シェスタ
I love you 』 :君を愛している

デニーだけがシェスタを呼ぶときに使うシスという響きが、その時どれほど彼女の心を溶かしたのか
それはとてもではないがわからない。だが、きっと素晴らしい力があっただろう。





そして彼の告白を受け、現実世界に戻ったシェスタは隣に立つ親友の気配を見つけてこう頼んだ。
「今すぐ、デニーのところに連れて行って」
しかし、親友はそれはできないといった。
デニーからこう話を聞かされていたのだ
「僕はとんでもないことをする、だからそれにシスを巻き込むわけにはいかない。すぐに自首してくる。
 そして、一日でも早く彼女と一緒に過ごすさ」
生半可なことではシスの心は動かせないことをデニーは感じていた。
だからここまでのことで自分の気持ちの大きさをぶつけようと思ったのだった。

この告白が終わると同時にネットワークのダウンは終わった。
時間にしてわずか6分。停電かと思われた程度の短いスクランブルだった。



この事件の後、デニーは即座に司法によって裁かれた。
懲役3ヶ月、特別保護観察処分20年。
彼の力量を国が評価したことによる異例の判決だった。
わずか3ヶ月で釈放されたスーパーハッカー、デニー・ロバーツ。
しかし、皮肉にも出所した彼を待っていたのは愛する彼女ではなく役人だった。
そこから20年、飼い犬のように政府に監視された労働を強いられた彼だったが
スカイランカーをプレイすることは許され、またスカイランカーにささやかな贈り物をしていた。

視神経が損傷した人でも正常にプレイすることにできる新しいフィードバックのソースコード。
それによりほぼ盲目の人であっても、一部でも視神経が機能していれば通常の人のように
歩き、走り、飛び、戦うことができるゲームへとスカイランカーは進化した。
新生スカイランカー、そこでは多くの視覚障害者が集まり一時のブームを起こした。



そうして新しいスカイランカーが始まり、そこでデニーは毎日空を走る。
横に、今もこれからも長年連れそうであろう愛する彼女を見ながら。

書き込み

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2011年
01月01日
01:38

1: hime

おつかれさまでした。
なかなかハマりそうなので次回も期待してるぜー。

2011年
01月01日
01:44

そちらもお疲れ様でしたー。
次回はいつになるやらわからんけど期待に答えるとするぜー!
あと、物語でまだ不明瞭な部分があったら教えてください。
確認しだい追記いたしますので!

2011年
01月01日
08:03

約1週間にわたるQ&Aお疲れ様でした。
しかし、題名そのものがプロポーズの言葉の一部だったとは、完全にやられました<( __)><( __)>
個人的には、伏せルールによる展開がドツボにはまりました。特に、本編の最後の伏せルールでテンションMAXになってしまいました。
そして、最後の2時間は質問ラッシュになった。 と、言い訳を・・・(殴)(;A゚Д゚)(;A゚ω゚)
またウミガメをやる際は、時間の許す限り参加致します。
最後に、改めてお疲れ様でした&ありがとうございました <(゚Д゚メ)<(゚ω゚ )

2011年
01月01日
09:45

まずは解答作成お疲れ様でした。
延長戦、あとちょっとでしたなー。してやられました。

ウミガメのスープは実はルールを知っていたのですがやるのは初めてで、おそるおそるといった感じだったのですが、本当に楽しむことが出来ました。
次回がある際は、別垢で本腰入れて出来たら良いなぁ。

一通さん、参加者の皆様、本当にお疲れ様でした。そしてありがとうございましたー。

2011年
01月01日
11:11

おつかれさまでした~
次回はお年玉企画的な何かで出たりするとイイナー(マテ

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