[No Border Friends] トピック

2011年03月03日
21:12

【解答】ウミガメのスープ【3杯目】~一切れの旗~

※注意!※
このトピックは「ウミガメのスープ【3杯目】~一切れの旗~」の解答になります。
問題文を見ずに解答を見たくない方などはすぐに閉じてくださいますようお願いします。




後に、中東経済戦争と名づけられる戦争が勃発した。
宗教倫理の相違、民族間の対立、国境線の押し引き
数え切れないいくつもの理由が積み重なって起こったと思われたその戦争には、『黒幕』がいた。
先進国。アメリカ、日本、ロシア等世界を代表するといっても過言ではないその国々こそがこの中東経済戦争の真の原因だった。


この戦争勃発の前、大規模な東南アジアの地震をきっかけに貿易封鎖が行われた。
中東と世界とを結んでいたシンガポールを初めとした貿易都市が、この地震により壊滅的大打撃を被ったからである。
中東からの急激な石油高騰により日本、ロシア、アメリカなど貿易航路が断たれた国の被害は甚大。
失業率の急激な増加を初めとした経済恐慌が発生、氷河期の時代を迎えることになる。


そしてその地震から1年。
貿易航路は再構築されたが先進諸国へのダメージは未だ尾を引いていた。
そして、それとは別に中東での石油大国として名高いイランやイラクでの緊張状態がピークに達した。
これを利用しようと、先進諸国が目を付けるに至ったのが中東経済戦争の発端である。




イラク空軍所属兵士、カレル・レングイッツ。
彼はイラク人の父と、イギリス人の母を持つハーフだった。
顔つきや目鼻立ちはイラク人の父の血を強く受け継ぎ、金の頭髪と白肌を母から受け継いだ。
そんな彼は一見してイラク人には見えず、たびたび外国人と間違われるほどだった。

彼が所属する部隊はジョン・バーニス隊長率いるバーニス隊。
作戦貢献度は中の下であるが、部隊内においてトップの生還率を誇る『新米のための部隊』だった。
ここで軍人として働きはじめたカレルだったが、徐々にこの戦争に疑問を持つようになる。
幾度も戦場を乗り越え、勝利しても、疲弊するばかりの国、消えていく仲間達。
「この戦争に意味はあるのですか」
そう問うたカレルに対して、バーニス隊長は歯切れ悪く
「私にもわからない」
という返事を返した。

だが、それもそのはずだった。
バーニス隊長は知っていたのである。
この戦争を引き起こしているのが実質背後にいる先進諸国であることを、
そして、その縁を切ると同時に先進諸国からの援助も途切れ、
今度は疲弊した自国が攻め滅ぼされるか、飢え死ぬかになるということを。
その情報を知っているからこそ、バーニス隊長は答えられなかった。
「この戦争に意味などはない」
そう答えることは軍人において、もっとも口に出してはいけない言葉だった。
だが、軍の上層部はこの戦争に大きな意欲を見せていた。


それもそのはず、先進諸国はイラクに対してこのような貿易を行っていた。
・イラクからの石油輸出の関税を6割に抑える。
・代わりに、その量に応じた軍需物資を非常に安価な値段で援助する。
石油を安価で入手し、その石油を元に軍需物資を製造。
そしてその軍需物資を売りつける。
先進諸国において、これは非常に利益に溢れた商売だった。
失業者で溢れた国民に軍需物資の製造、貿易での積荷仕事を与え経済を活性化
石油の安価な入手、また製造した軍需物資の売りつけにより利潤も得る。
一石二鳥とも言うべき経済活性化政策は非常に大きな数値をたたき出し。
中東経済戦争勃発後、先進諸国の失業率は半減するまでに減少する。


先進諸国の利潤も露知らず、イラクでは軍需物資の調達に歓喜していた。
自国で製造するよりも遥かに質が良い武器、そして圧倒的な物量。
中東の制圧も夢ではないと自惚れることすらあるほどのアドバンテージだったのである。






だが、ジョン・バーニス隊長は誇りを持っていた。
軍人は国を支え、民の盾となり、未来への礎となる職務であると。
しかしこの戦争はあまりにも彼の誇りとは食い違っていた。
先進諸国に踊らされ、目の前の武力に視野を狭め、国を困窮させ民を苦しめる。
今の軍に未来への礎として見受けられる要素など何も見つからなかったのである。
そんな彼が取った行動はある意味当然だった。

彼が持っていた情報を個人的に調査、偶然知り合い、意気投合した戦場カメラマンの新木正道にこの情報を託したのである。
世界中に先進国の悪逆を知らしめるために
この国がたとえ打ちのめされる結果になろうとしても、今のイラクを見過ごすことができなかったのである。


後日、イラク軍においてスパイ容疑により捕縛されていた新木正道の脱走を補助し、この情報を伝えようとする。
しかし、軍部は気づいていた。
ジョン・バーニスがこの情報を探っていることを、そしてそれを同部隊のカレルに秘匿任務として与えていた。
曰く、
『ジョン・バーニス部隊長が敵国のスパイである。情報のリークなどスパイ行動を取るか警戒せよ』
『もし、この現場を抑えた場合、現行犯でジョン・バーニス隊長を捕縛せよ』
カレルは疑いたくないと思いつつも任務を放棄することはしなかった。
そして、バーニス隊長が新木の脱走を補助し、さらになんらかの情報を渡している現場を目撃し、容疑は真実だったのだと確信した。
現行犯でジョン・バーニス、及び新木正道を捕縛。
証拠物件として渡そうとしていた資料を押収、確認のためにカレルが資料に目を通した。
そこで、カレルはようやく全てを悟ったのである。


この戦争の真の根源を。
本当に戦うべき相手が何であるのかを。
だが、時はすでに遅かった。
ジョン・バーニスは捕縛され、どう考えても助け出すことは不可能。
新木正道に対してはカレルの見間違いであったとし、正規の戦場カメラマンとしてのライセンス
イラク大使館との確約もあることからなんとか見逃すことに成功した。
だが、バーニス隊長を助け出すことはできなかった。


バーニス隊長は銃殺刑が軍事法廷で確定。
執行日前に、カレルはバーニス隊長との面会が許された。
そこで、バーニス隊長はカレルにこう伝えた。
「君もこの戦争の真実を知ってしまった。それを知ってしまった人間を、上層部は私と同様、生かしてはおかないだろう」
軍人において、上層部からの命令は絶対服従。
しかし、それに抗わなければならないということは、軍から、国から脱走せよということだった。
しかも信頼のおけるメカニックの手を借り、MIAとして偽装工作をすることでカレルに逃げ道を用意すると言ってくれた隊長。
だが、そのバーニス隊長の命を奪い、おめおめと故郷に逃げることを、カレルという男は自分自身に許さなかった。
「いいえ、私は逃げません。この戦争を、不毛な争いをこの手で止めます」
バーニス隊長は反対も肯定もすることなく、静かに「そうか」とだけ呟いた。
カレルはこの時静かに誓った。
バーニス隊長を殺した罪を、それ以上の功績で償おう、と。
この時こそが、カレル・レングイッツという兵士の本当のスタートラインだった。





バーニス隊長のコネで、メカニックによる『戦闘機の故障』を理由にMIAとしてカレルは戸籍上死んだ。
そしてそこからカレルは戦場カメラマンである新木に再度接触を図った。
「この戦争を止めたい、不毛な争いを止めたい。そのために、僕に力を貸してください」
新木がバーニス隊長の知り合いだったならば、自分の力になってくれる。
神にもすがる思いの接触は、大きな前進だった。
「わかった。俺のできる範囲でなら、全ての力を貸そう」
新木は、義理人情に厚い人間だった。
そんな彼だからこそ、祖国である日本が他の国を食い物にしている現状が許せなかったのである。
これが後のテロリスト組織『Piece Flag』、『一切れの旗』の結成だった。


彼らは話し合った。
この戦争を止めるにはどうすればいいのかと。
先進国との繋がりを断ち切るだけでは、戦争は続き、イラクは飢えと戦力縮小により滅びる。
かといって逆の国に対して何らかの行動を起こしてもただイラクが勝利するだけで戦争は続く。
イラクと対立関係にあった国家は1つどころの話ではなかったのである。
ならばどうするか、戦争を終わらせ、なおかつ国を豊かにするためにやらねばならないことが何か。
そして彼らは辿り着く。ある一つの結論へ。
戦争を終わらせるだけではだめなのだ、この中東の国々が結束しなければならないのだ、と。
目的は、中東国家の経済的な結束を作り上げることにあると彼らは気がついたのである。



そこからの『一切れの旗』の活動は大胆かつ的確だった。
まず、カレルを先進国からの傭兵として登録、各国の軍部において傭兵活動を行いながら賛同者を集めていった。
見分ける方法は単純、軍服の一部、もしくはドッグタグなどのネックレスに祖国の旗の一部分を持つこと。
兵士において、祖国の旗は誇りの印、たとえ一部であろうともそれを携えることは不自然なことではなかった。
そして、情報はカレルが行動を開始してすぐに各国の軍部において報告されたが、問題が発生する。

カレルは公式上すでにMIA、死亡している人間なのである。
当然傭兵プロフィールも偽造、調査をされたとしても行き着く先は死人。
現行で捕縛しなければ正体すら掴めなかった。
これはよく聞く偽造プロフィールの定番であったため、逆に誰一人として『カレル本人』に辿り着くことがなかったのである。
そして、カレルの欧米人に似た外見的特長もこれに大きく拍車をかけていた。
軍部から見たカレルの行動は
『先進国から派遣された工作員なのではないか』
といったふうに映ることすらあったのである。
しかし、これが隠れ蓑になりカレルはいつしか内外を問わずこう呼ばれるようになる。
PHANTOM、亡霊、と。


カレルが組織内で行ったのは人員の確保である。
戦争の真実を語り、情報を与え、着実に行っていった。
傭兵として戦地を渡り歩くカレル、いつしかその流れは人が人を呼び、
中東の軍人のほぼ全員に達するのではないかと思われるほどまでに『一切れの旗』は増えていった。
だが、これはカレルだからこそできた芸当だった。
すでに公式上で死んだ人間であり、なおかつ外見による詐称も可能。
これは非常に大きなアドバンテージであり、もっとも危険が伴う人員の増加に役立った。


そして、『一切れの旗』の人員はまぎれもない各国の軍人でもあった。
『一切れの旗』はテロリスト組織であるという認知だったが、内情は思想に近い。
普段は何食わぬ顔で軍務に励み、
『一切れの旗』が動く事態になった場合に軍務に支障が出ない程度に『一切れの旗』の職務をまっとうする。
その主な活動は奇異の一言の連続であった。


そして、テロ組織『一切れの旗』は活動を開始する。
彼らは中東諸国結束のための『いい的』となるべく、悪名をふりまくように広めていったのだ。
彼らの目的は中東諸国の結束だったが、そのためにもまずこの戦争を終結させなければならなかった。
各国の軍事施設の無力化、援助物資の重火器などの強奪による戦火の拡大を妨害。
また、先進国が黒幕であることを公表する下準備として
『テロ組織のスポンサー』が先進国であるとひそかに情報を流した。
彼らの初期目標、それは『戦時国家両国が結託してテロ組織を敵視する』ことにあった。
戦争を一時的にでも休戦させ、なおかつ最低限の繋がりを持たせる。
そして、テロ組織を『共通の敵』として認識させられることができれば
両国の関係は改善されるとまで行かないながらも少しはマシになるからだ。


だが、彼らの活動はあくまで無力化、妨害に徹底されていた。
空戦では弾薬の無駄撃ち、軍事施設の配電塔を流れ弾に見せかけて破壊、
各地の隠された地下防空壕や使われなくなった倉庫に重火器を押し込めるようにして解体し鉄材として保存した。
また、組織のメンバーは中東各国の軍人が入り乱れている状態であり、本部のようなものはない。
情報の伝達はこの時代において手紙が使用されていた。
この手紙の運搬役もカレルの役目であり、
緊張状態にある各国を渡り歩ける彼だからこその方法でもあった。


アナログかつ不透明な組織は戦時国家に大きな脅威に映った。
自国の兵士すら疑わしく、また周辺各国はさらに疑わしい。
なのに軍備は燃え上がるように浪費され、戦争継続が見る見るうちに困難になった。




そして『一切れの旗』の活動が起こってから半年余り。
イラクを始め、戦争を行っていた国々は互いに休戦協定を締結。
そしてほぼ同時にテロリスト組織『一切れの旗』の内外一斉摘発に乗り出した。

だが、この話は中東諸国にとって予想外な結末を迎える。







―――イラク国内、とある小丘にて。


「あれ、カレル。ここってこんな見晴らしがいいところだったっけか?」


気軽な口調で話しかける戦場カメラマン、新木が話しかけたのは
素朴な、あまりにも素朴にすぎる墓だった。
墓らしき様子はなく、やや盛り上がった土と、立てられた漬物石程度の石
そのすぐ側に擦り切れた布が巻きつけられた小さな木の棒が立っている。
一見して、墓などとは到底思えないものが
テロリスト組織『一切れの旗』のリーダー。カレル・レングイッツの墓だった。


「祝い事の時だけは酒を飲むんだったな、お前の好物、持って来たぜ」


『一切れの旗』一斉摘発、それをカレル達は待っていた。
組織の目的は中東組織の結束、そして終戦という平和のためだった。
そう、達成すべき状況は『休戦』ではなく『終戦』なのである。


「あれ、こういう墓の場合はどっちに酒かければいいんだ?卒塔婆か?それとも地面?」


一斉摘発開始と同時に、カレルは全世界に対して情報を公表した。
・中東の戦争は先進諸国の経済建て直しのために引き起こされたものだったこと
・先進諸国は中東から石油を安価で手に入れ、それを使い戦争そのものを長引かせるために援助をしていたこと
・『一切れの旗もまたその先進諸国によって戦争継続のために駆り出された傭兵集団だったこと』
戦争の糸を引いていた先進諸国、そしてさらにそれを長引かせようとした悪行を公布し、
『あえて』テロ組織が先進諸国の尖兵であるという虚偽の情報を公開した。
それにより、国民感情は大きく誘導されることになる。


「まぁ両方でいいか。とりあえず、約束守りにきたぞ。カレル」


戦争に疲弊した国民達、そこに知らされた先進国側の一方的とも言える戦争の真実。
反戦感情が持ち上がらないほうがおかしな話だった。
国内からは戦争反対の大きな声と、テロリスト撲滅すべしとの高い声が広まった。
この声に答えるかのようにしてカレルは自分が『一切れの旗』のリーダーであると名乗りを上げる。
そして、組織解散を宣言し、衆目ある公式の場で極刑を受け入れたのだった。


「正直お前が死ぬ必要はないって散々言ったんだがなぁ、たくっ、意地っ張りな男だよお前は」


「何もお前が死ぬことはない」そうカレルに言った新木だったが、カレルは頑としてこれを拒んだ。
「テロリストは所詮テロリストなんだ、アラキ。その責任は取らなければいけない」
テロリスト組織であった『一切れの旗』、たとえ正しい意識を持った組織であっても所詮はテロリスト。
世相が落ち着けば厄介者でしかないことはわかっていたことだった。


「おっと、愚痴りにきたんじゃなかったな。こいつを届けにきたんだったか」
そう言って新木は懐から国旗を取り出した。
ボロボロのようにも見えるツギハギだらけの国旗だった。
まるで、いくつもの国旗を切り貼りしたかのような『いびつな』国旗。


「これはバーニス隊長と、故郷への罪滅ぼしなんです。アラキ」
「罪滅ぼしって、お前な…替え玉とか偽装とか他にやりようはたくさんあるだろうに」
新木の助言に、カレルは首を振って答えた。
「それは、何か違うような気がするんです。貴方が力を貸してくれたように、最後まで誇れるような戦いをテロリストである僕がする必要があると思うんです」
だから――


そう言葉を続けたカレルの顔を新木は10年が経った今ですら鮮明に覚えていた。
「約束通り、『ここ』がまとまるまでは面倒見てやったぜ、その旗は餞別だよ」
中東諸国は石油経済の土壌を磐石のものとし、経済上の都合とはいえ戦争は半永久的に休戦。
先進諸国の経済力にはまだ遠く及ばないが、それに迫るための一歩目を踏み出したといえる。
中東の経済が自立への方向へと進むスタートラインである。
だが、その為の礎となったカレル・レングイッツは凄惨たる仕打ちを受けたと言わざるを得ない。
戸籍上はMIA、組織のリーダーとして裁かれた後、灰すら残さず、溶鉱炉にて死体は処分された。
だから、今新木の訪ねた墓前には、カレルの名残すら一片たりとも残されてはいない。
生前において立てて欲しいと頼まれたちょっとした場所に、墓らしくあつらえただけである。


「アラキ、貴方に1つ。最後に頼みをしてもいいでしょうか」
『一切れの旗』のリーダーとして、裁かれるため世界に名乗りを上げるわずか10分前のことである。
「あまりに無理難題は厳しいが、聞ける範囲なら聞いてやるさ。言ってみ」
「はい、僕が死んだ後にこの国々がちゃんと戦争をやめて、手を組むか見守って欲しいんです」
「見守るだけでいいのか?」
はい、とカレルは言いかけたが、口を一度閉じて言葉を選ぶようにゆっくりと語った。
「はい、アラキは見守ってくれるだけで構いません。そしてもしアラキが見て、僕が望んだ形にこの国が歩みだしたら」
そう言葉をためると、カレルはアラキにしっかりと向きなおった。
最後の言葉を紡ぐように。
最後の言葉であることを認めるかのように。
静かに。
「僕の墓前にいつものお酒を届けてくれませんか」


「『この国を騒がせたその責任は自分自身でとらなきゃいけない』なんて言うあたりが若僧だよ、カレル」
だが、カレルの居場所も、戦う場所も、戦う意味も、全てなくなった彼の
死に場所、死に時があの日、あの処刑場であることがまるで完成しているかのような彼の人生の最後として相応しい、とも思う。
「まったく、最初あった時はただのわめくだけのガキだったってのに、一人前の男になりやがって」
そうぼやきながら新木は木の棒につけられた擦り切れた布を手に取った。
力を込めれば破れてしまいそうなその布をいたわるように、持ってきた国旗に結びつけた。
「さて、約束は守ったぜカレル。あの世で達者に暮らせよ」
そう言って新木は立ち去った。
カレルの墓前にはツギハギだらけの国旗が立っている。
その国旗は良く見れば、中東諸国のさまざまな国旗の一部が縫いとめられたものだった。
国旗の破片達は総じて真新しくはなく、まるで肌身離さず持っていたかのように色あせている。
カレルなら見間違うはずがない。
共に戦った戦士達の証、『一切れの旗』の兵士が持っていた同士としての証である旗達だった。
新木がどういった経緯でこれを用意したのかはわからない。
だが、どのような気持ちでこの旗を持ってきたのかはなんとなく察することができる。





――時を遡ること11年。
まだ、テロリスト組織『一切れの旗』ができてもいなかった頃。
「それでカレル君、君は何をやりたいんだ?」
1度、バーニス隊長捕縛の際でしか面識がない新木とカレル。
「この国を…いえ、この『中東の国々』を、戦争をする必要がないくらいに大きくしたいです」
搾り出すようにではあるが、しっかりとした話し方をする青年だ、と新木はそのとき思った。
「ふむ、大きくでたな。だが、それを実現するにはいくつもの壁と、時間と、意思が必要だ」
チラッと新木はカレルの手元を見た。その手にはボロボロに擦り切れたイラクの国旗の一部と思われる布切れが握られている。
「祖国の国旗にすがりつくようでは荷が重い、諦めたほうがいいんじゃないか?」
その時、カレルは返す言葉もなく旗を握る手に力を込めるだけだった。
それでも、カレルは心の中で誓っていた。
『たとえ一滴であっても、この中東の礎となりたい』と。
その瞳を見た新木は、言葉なくともカレルの声を聞き届けていた。
「わかった。俺のできる範囲でなら、全ての力を貸そう」


結果としてカレルは死に、中東の経済協力体制も数年後に形骸化。
また戦乱の気風が漂う中東に戻ることとなる。
だが、その時代でも戦う男達がいる。
一石を投じるような些細なことでもいいと、彼らは戦い続ける。
いつか訪れるであろう平和で、豊かな国となったこの中東。そこで無邪気に笑う人々があふれる未来を夢見て。
心に、一切れの旗を掲げる名も無き戦士達が確かにその時代に生きていたのだ。

一切れの旗、それは今でなくともいつか実を結ぶ未来のため
彼らが携えている象徴なのかもしれない。


~ 一切れの旗 ~

~ Piece Flag ~ But、 ~『Peace Flag』~    ...Fin...

書き込み

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2011年
03月04日
04:21

一気さん解答執筆お疲れ様でしたー♪

うーん♪
くやしいかなとても見事な解答…w
異論疑問なさ過ぎ…笑

そして、物語自体すっごいよくできてて唖然…笑
なにこの身のつまり方。濃縮還元すげー。


テロ組織が思想で繋がってる構図はこの解答で初めて認識。
そういうことだったのねー激しく納得。

8…ううん9割看破といったところかしらね、惜しかったなぁ。しみじみ。

それにしても、隊長じゃない方のバーニス……レ…なんたらさん。
見事に関係ないwww

でわでわ、恒例の?三杯目ラストクエッション♪


Q:解答に追記された件りは墓参りのところですか?


個人的に気になったので…!w

2011年
03月04日
08:35

ジョンの兄貴のバーニスさんも弟の弔いのため戦った戦士だった…

うん、それだけでした!あんま関係ないよ!(

Q:解答に追記された件りは墓参りのところですか?
A:はい、そのとおりです
カレルと交わした「墓前に酒を届ける」という約束を守ったシーンになります。

しかしメインの男三人がカッコイイなあ…

2011年
03月04日
08:51

解答本当にお疲れ様でした。
と言うかむしろ個人的に新木さんが墓参りするシーンを見たかったので
墓参りする?する?とひっきりなしに聞いていたのは内緒です(
念が通じたのか全く無意味だったのかはよく分かりませんが(

んー、しかし今回はまぐれで打った中東戦争が何故かクリーンヒットして
あらぬ方向へすっ飛んでった気がしますが、
あれがなければもっと違う方向だったのでしょうかねー。あまり変わりませんかね?
<s>と言うか解答が長引いたのはそのせいもあるのでしょうけれども</s>


と言うわけで改めまして、一通さん、主催者の皆様、本当にお疲れ様でした。


で、ラスト<s>ミステリー不思議発見</s>は…
……というか最後の称号凄く気になるので差し支えなければ教えてくださいっ!(
あれが気になって夜も熟睡ですっ

2011年
03月04日
09:23

その念届いたよ!
後半の墓参りが完全に書き下ろしでした。

元々イメージしていたのが「石油資源豊富な発展途上国の戦争を先進国が利用する」ってやつだったので
中東とかイラクとかの固有名詞がむしろ後付けですね。
流れは少し変えたかな…?自覚がないレベルなので多分問題なし!


そして期待に応えて!
『未解放称号』
称号名:ストックキーパー
解放条件:『何も質問しない日』を挟んで質問をする行動が三回に達する
称号効果:オープンストック
称号保有者は『何も質問をしない(リンクバレットを除く)日』に行えたはずの三問の質問数を次回質問時まで確保することが可能です。
称号取得者は以下の二つの行動がとれます。
1.『確保した質問』も普通の質問と同様に使用が可能です
2.また『確保した質問数』に限り、他参加者に好きなだけ譲渡することが可能です

忙しくて参加できなくても無駄にすることなく、他参加者への支援にもなる。
tizzoさんとは別の『忙しい人向け』の称号ですねー。

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