渡り鳥 第1話 中
驚きのあまり僕はコーヒーを勢いよく噴き出してしまった。
マトの顔面には茶色の水のようなものつまりコーヒーが顔中に広がっており、顔だけではなく髪をぐちゃぐちゃ目を合わせると僕はタイタニア界に旅立ってしまうのかと思った。
おそるおそるマトを見ると眉間をピクピクとしていたのは束の間、鬼の形相に変わっていたのがわかった。
マトを見るのはことはできずに僕はマトから視点をずらしてしまった。
それが僕を自ら逃げ道を塞いでしまったことでもある。
上に引き上げられると、次は首を絞められるように引きずられる。
「……マ……ト、げ……ふぉ……ご………め……ん許し……てくだ……さい。な……んで……もしま……すから……」
「なんでも? じゃあ、クエストでも手伝ってもらおうかしら?」
引きずられることから、開放された。僕は息を整えるのだけで精一杯だったものの、息が整うにつれて、最大の過ちに気が付いた。
マトと安易に交わしてしまった約束、それは僕の平和をいや、自由を奪われるに近いことだった。
「ついたわ、ぼっーとしてないで行くよ」
「この先、危険って書いてるってことは、僕らはこのまま引き返してもいいってことだ うん、帰ります。」
後ろから、突き刺さる視線に僕は「冗談ですよ、マトさん」
それでも、マトの白けた視線だけは痛く僕を突きさすのだった。
大量のライギョといっても、イレイザーである。マトからすると物足りないようなものだと思う。
「あくびばかりしてないで手伝いなさいよ」
「マト、前……」
軽がるく、マトは宙を舞うように飛ばされると鋭い爪のようなもので壁に叩きつけられる。僕はあまりの出来事に目を疑う。