新年明けまして随分経って おめでとうございました。
今年もよろしくお願いします♪
今年最初の文字テロです。
『ルピでのんびり遊んでいます
※フリ鯖のアンゼットさんとは全く無関係の別人です。偶然ってあるのねー※ 』
今年は色々去年以上に書きものしたいなぁ。
そして、勝手に書いてゴメンナサイ。
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『 死神アンゼット 』
四方を氷で覆われた坑道で、私はどんどん広がっていく惨状に一歩も動けずにいた。次々に襲い掛かる死神たちの鎌が自分の部下を容赦なく刻んでいく光景。ランスを握る手がそこに立ち尽くす両足がガタガタと震え力が入りすぎて動かない。
「た、隊長っ、ぐあぁ!」
「ひ、ば、化け物が!ぎゃああ」
蒼白い氷の壁や床は一瞬にして真っ赤に染まり、数十に上る兵たちの亡骸が所狭しと折り重なっていく。
「あ・・・あ・・・み、みん・・・。」
「たい・・・ちょう・・・たす・・・け・・・いて・・・ぇ・・・。アンゼ・・・ト・・・たいっ・・・。」
両腕を斬り落とされた兵が口から血を吐きながら私にもたれ掛ってくる。彼の顔が私の顔と向かい合った瞬間、後ろにいた死神の鎌が彼の首を捉えた。盛大に吹き上がる血液を顔面に浴び・・・
「うああぁぁ!」
私はベッドから飛び起きる。辺りを見回すといつもの見慣れた自室。体を捻り窓の外へ視線を投げると外はまだ闇に包まれている。
「またあの夢・・・か・・・。それにしてもすごい汗・・・シャワー浴びようかな。」
私は身に着けていた大きめの白いシャツをパサリと床に落とすとシャワールームへと足を運ぶ。シャワーのコックを捻りまだ温まりきっていないぬる目お湯を浴びながら
「私は・・・いつまでこんな夢を・・・償いを・・・ううっ・・・。」
頬を流れていく水滴と一緒に小さく言葉を吐き流してみたが、それに答えてくれるモノは誰もいなくて。流したはずの言葉は胸の辺りでとどまり、チクリと私の胸を突き刺した。
翌朝、私はまたあの坑道の入り口に立っていた。銀の鎧を身に纏い、右手にはランスではなくレイピアを握り、左手にはバックラーを持つ。私の周りには傭兵崩れの冒険者が数人、今日のパーティメンバーだ。
「それじゃあ、よろしく頼むわ。今日だけっつっても背中預けるんだ、互いに自己紹介くれぇいんだろ。俺は・・・」
眉間に傷のあるガタイの良い男から順に名乗り、最後私の番になる。
「それじゃ、最後はアンタだ。・・・ん?なんだアンタ女か♪女騎士、いいねぇ。しかもよく見りゃかなりの別嬪さんじゃねえか♪」
最後に自己紹介をした男は右手の人差し指を俯いていた私の顎の下へ潜り込ませ、私の顔を持ち上げる。
「ひゅう♪やっぱイイ女だぜ。」
「くっ。」
私は顎に添えられた太く武骨な指から首を捻り逃れると小さく舌打ちする。すると、最初に話していた男が腕組みをして
「俺、アンタどっかで見たことあンだけどなぁ・・・。」
「・・・・・・。」
しばらく考え込んでいた男が下を向いていた顔を凄い勢いで持ち上げ
「あああああっ!思い出した!思い出したぞ!アンタ、アクロニア騎士団は13分隊長の・・・ア、ア、アンゼットっっっ!」
「っ!」
男の一声に他の男の動きが止まった。
「こ、この姉ちゃんが、あの・・・。」
「死神・・・アン・・・ゼット・・・。」
「チッ・・・。」
男たちの反応に私は舌打ちする。もうこのパーティには参加できない。私の素性がばれてしまったのだから。久しぶりのパーティだったのにな、残念。そんな思いが脳裏に浮かんだ時だった。
「うっひょー!こりゃあいいぜ!」
その場にいた一人が歓喜を上げた。私は驚いてその男を見る。男は嬉しそうに
「これから死神の巣に突っ込むんだぜ?向こうが死神ならこっちにも死神だ。過去に何があろうが隊長だろうが強えのには変わりねぇ。そこら辺の訳のわかんねえヤツよりよっぽど安心だぜ!そうだろ?姉ちゃん?」
「だが、死神の二つ名は『全滅』って意味の死神なんだぜ?コイツと一緒にいるってことは俺らが死んじまうってことなんだぜ?」
「はっ!そんなもんなぁ、全滅の矛先を向こうに向けちまえばいいんだよ!それにだ、そんな二つ名を持ったヤツと一緒にパーティ組んで生き残ってみろよ、俺ら死神より強えってことになって、仕事わんさか金がっぽがっぽだぜ?」
男たちの話は決まった。
「よろしく頼むぜ?死神アンゼットさんよ。」
荒くれ者は、その武骨な右手を私に差しだした。私はゆっくりと
「ああ・・・よろしく頼む。」
固く握手を交わした。
私たちパーティは氷に包まれた坑道に足を踏み入れた。そこは、現在ノーザン地方に存在する氷結の坑道にあるもう一つの坑道。ある日突然現れた次元の歪みに存在する異次元世界(パラレルワールド)その世界は、私たちの世界と全てが逆に配置された世界。学者たちはディメンションワールドと呼んだ。私たちパーティは次元安定石を歪みに掲げると、糸が縺れるようにウニウニと蠢く歪みは次第に大きく口を開き、人が通れるほどの入り口に変化した。
「さぁ行くぞ!」
「おお!」
こうして私たちは、ディメンション坑道へと進んでいった。
狩りは順調に進んでいった。見た目同じモンスターでも、さすがは異次元世界。モンスターの強さは半端なかった。戦闘が進むにつれて、私はあの時の記憶が断片的にフラッシュバックする。
「このまま3Fまで一気に降りるか!」
「おうよ、2Fのヤツらも楽勝だしなぁ!」
メンバーたちは2Fに溢れる魔物たちを討伐しながらそんな会話をしている。確かに今日のメンバーは強い、私だってまだ全力とは程遠い。けれど、3Fは・・・
「待て!3Fは・・・。」
私は一瞬叫んだが、続きの言葉を口にできなかった。
「なんだよ?ネエチャン怖いのか?」
「そういや、俺3Fって行ったことねぇな。」
「俺も無ぇけどよ。なんでも死神がいるって話だぜ?」
「死神?あぁ、デスか。ンなもん楽勝じゃねぇか。あいつら速いってだけだろ?」
迫り来る魔物を斬り付けながら男たちが話しをする。私はレイピアを振りながら、その話に耳を傾け
「デスだけじゃない!確かにアナタたちは強いけど、そんな軽い気持ちで行けるとこじゃないんだ!」
私の言葉に、アックスを振りかざした男が鼻で笑い
「はンっ、そんなもん行っちまえば何とでもなるってもんよ!」
「いや、だから・・・。」
「あぁ、そうか、アンタが二つ名手に入れた場所って確かここの3Fだったんだな。なるほど、びびってんじゃねぇよ!」
「くっ。」
男は強く吐き捨てた。私は、そこで黙ってしまい
「おっ!噂をすればナンとやら・・・。3Fへの階段はっけ~ん♪」
「よし、今日の俺らは無敵だ!行くぜ!」
「おうよ!なんてったって、勝利の女神がついてるもんな!」
「勝利の女神じゃなくて『勝利の死神』・・・だろ?」
「がははは!そうだった!行くぜ!」
意気揚々と階段に足を踏み入れていく男たちに
「あ・・・ま・・・て・・・。」
私は最後まで何も言えず、彼らを止めることもできず、そして自身に覚悟もできず、ただ流されるまま闇の最深部へと進んでいった。
行ってしまえば何とでもなる。それは単なる幻想でしかないと私たちは3Fに降り立った数分後身を持って知ることになった。ソコはまさにあの時と同じ地獄だった。
「おいおいおい!なんじゃこりゃ!数ハンパねぇ!うわぁ!」
「デスだけじゃねぇぞ!ありゃガーズ!ナイトメアまでいやが・・・うわぁぁぁ!」
そこにいた死神たちは私たちの気配を感じ取り、物凄いスピードで襲い掛かる。
「うがあっ・・・誰が助けてく・・・がはっ・・・。」
「こいつら・・・強すぎ・・・だろ・・。」
「死にたくねえ・・・こんなトコで死にたくねぇよぉぉ!」
次々に斬られていくメンバーを目の前にして、私の脳内はあの時の記憶に全て塗り替えられてしまっていた。
「だから・・・だから・・・もう・・・もうイヤだ・・・。」
身体の震えが止まらない。足に力が入りすぎて、一歩を踏み出すことが出来ない。目の前には死神たちの大鎌がメンバーの身体に突き立てられていく。
「に・・・げ・・・ろ・・・ネエ・・・チャ・・・ン。アンタの・・・いう・・・とお・・・」
血まみれになった男が私の前に立って肩を掴む。そして、最後の単語を口にする前に、死神の鎌が男の首を刎ねた。そしてその切断面から噴水のように噴出した血液を顔面に浴びる。
「あ・・・あ・・・あ・・・い、いや・・・もう・・・もうあんな思いをするのはいやだあああああ!うおおおおおお!」
瞬間だった。頭の後ろのほうで何かが弾けた音が聞こえた瞬間、私の頭の中は真っ白になって、何も考えられなくて。握り締めたレイピアの刀身が白く輝き、その輝きはやがて自分の身体を覆い、世界の時が止まったような感覚。全ての動きがスローモーションで再生され、突然前進を襲う震えも鉛のように重かった両足もすべて解放されて。
「はぁぁぁぁ!なぎ払えぇぇぇ、スパイラルスピアァァァァ!」
振り抜いたレイピアから一陣の風が走り、それは竜巻のように螺旋を描き周囲にいた死神を巻き込んでいった。その後のことは記憶にない。気がつけば赤い氷の坑道の真ん中で座り込んでいた。
「ほう。死神って二つ名は伊達じゃないってことか。」
「・・・・・・。」
「死神アンゼット。暑苦しい野郎かと思っていたが、女だったとはな。」
「・・・・・・。」
「おい、聞こえているか?」
「・・・・・・。」
「まぁいい。俺はある魔物を倒すために仲間を探している。オマエのその防御の高さは重騎兵のそれ以上だ。俺はそんなオマエがパーティに欲しい。どうだ?」
「・・・・・・れ。」
「ああん?」
「アナタ・・・誰?」
「俺はビゼン。剣士をしている。どうだ?俺と組めばもうそんな悲しい瞳はさせないと約束しよう。」
「どうしてそんな約束できるの?」
「簡単なことさ。」
「?」
「俺が強いからさ。俺は死なない、そして死なせない。」
「ぷっ・・・アナタ・・・変な人・・・。でも気に入ったわ。ビゼンだっけ?私はアンゼット。よろしく。」
「あぁ、よろしく。」
Fin
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