23日の日記の続きを書き書き・・・
どうも2話で終わらなくなりました。ま、いつものことなんですけどね。
あ、あとタイトルが付きました。
タイトル『Moment of love』です。
お時間いただけましたら幸いです。
そして、ライグさん勝手に書き続けてごめんなさいっ!
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第2話 即席パーティ
遠くで聞き慣れたハンマーの音。嗅ぎ馴れた炭と油の匂い。ヨミコはうっすらと目を開けると、視界にあるのは
「見知らぬ・・・天井・・・?」
ココがどこなのか、何があったのか、自分は生きているのか、順番に一つずつ思い出していく。
(そう・・・私、光の塔でトロットに囲まれて・・・強化外装に乗った死神に・・・)
「って、ここは地獄ッスか!・・・っつぅぅ・・・痛いッスぅ。」
飛び起きたソコは、くたびれたソファーの上たった。ヨミコは辺りをキョロキョロと見回す。
「ここ・・・工房?あ・・・飛空庭?」
飾りっ気のない武骨な部屋はとても狭く、ソファーとテーブルとクローゼット以外家具らしいものは何も見当たらない。床には、ロボに使うのか何に使うのかよくわからないパーツがいくつも転がっている。ヨミコは立ち上がると、自分に掛けられていた毛布を畳み部屋の扉を開けた。
「ふあぁ・・・。」
部屋を出るとそこは、いかにも工房、いや整備ピットと言った方がしっくりとくる空間が広がっていた。そしてあのとき助けてくれた強化外装を纏ったロボが中央にそびえていた。
「これが・・・すごい・・・。」
ヨミコはフラフラと吸い込まれるようにロボの元へ歩み寄ると、恐る恐る手を伸ばす。なめらかな曲線と表面。ヨミコは触れた手を滑らせてその感触を確かめるように味わうように目を閉じる。
「この外装に使われている金属は・・・確か奈落って言われる転生者だけが行ける遺跡でしか手に入らない・・・すごい・・・私もいつか手にできるのかな・・・。はぁ~><、たまんないっス!」
気が付けばヨミコは触るどころか頬ずりしていた。
「お、起きたのか。身体は大丈夫か?」
「ぴっ!」ガンッ
「あう・・・。」
背後からの声に驚いたヨミコは、反応した瞬間外装に額をぶつけその場にしゃがみ込む。
「おいおい・・・大丈夫か?」
「だ、だ、大丈夫っす!あ、あ、あのっ!」
「ん?」
ヨミコは赤くなった額を隠さず、直立で立ち上がると
「た、助けてくださってありがとうございます!わ、わた、自分はヨミコ、ヨミコ・リードマン、マシンナリーっス!」
腰を90度に折り頭を下げる。
「お、おう。ま、頭を上げてくれ。」
「はいっ!」
ヨミコの勢いに押された青年は頭を掻きながら横を向いてそう言うと、近くにあったオイル缶を2つ、ヨミコと自分の前に置き
「とりあえず座ってくれ。」
「あ、はい。」
二人は座る。
「まず、名乗らせてくれ。俺の名はライグ。しがないロボ乗りだ。」
「はい。って、ええ?マエストロっすよね?強化外装っすよね?なのにしがないんスか!かっけーっす!」
「あ、いや、しがないってのは、そのちょっとカッコつけ・・・ってそんなのはどうでもいいんだっ。」
「あ、はい・・・スイマセン。」
「ゴホン、それよりヨミコ、お前マシンナリーってことは2次職だよな?あの時間にあの場所がどれくらい危険かってわかってるよな?まぁ、俺らみたいなイシ屋は、わりとソロで稼ぐことが多いから分からなくもないが・・・なんでだ?」
「え?」
「なんでそんな危険な場所に一人で・・・何か理由があるのか?しかもお前は女だ。まぁ、女だからとかそういう事言うつもりはないが、それにしたって危ない。モンスターだけじゃないんだ、盗賊みたいなコトやってる冒険者や傭兵崩れもウロウロしてる。その意味分るな?」
ライグと名乗った青年の瞳は鋭く、けれど温かかった。ヨミコは向けられた視線にドクンと胸が鳴るのを感じると、とても見つめ返すことができず
「い、いやぁ、私の身体なんて貧相なモノに欲情する男の人なんていないっすよぉ。あは、あはははは。」
すると、ライグはパンッと自分の膝を叩き
「茶化すなっ!そ、そんなか、可愛い顔して、そんなわけないだろ。」
勢いのあった口調は段々とフェードアウトし、途中からはそっぽを向いて呟くようになっていた。
「ごめんなさいっす・・・。」
ライグの言葉にしゅんとうな垂れるヨミコを見たライグは
「うっ・・・、ま、まぁ理解して反省してるんなりゃ・・・ならいいんだ。」
咬みながらどこか居心地悪そうに言う。そして、
「それより、ケガの具合はどうだ?知り合いに治癒魔法(アレス)してもらってるから、大丈夫だとは思うが。痛いところはないか?」
「はい。だいじょう・・・ぶ・・・って!そうです!そうですよ!死神!死神!可愛らしい女の子の死神が私を迎えに来たんス!な、なんなんすか!マエストロになると死神とお友達になれるんスか!」
「落ち着け、落ち着け、近いっ!近いっ!」
興奮マックス状態で食いついてくるヨミコの顔がライグの顔にくっ付きそうになる。ほぼゼロ距離の状態は唇を突き出せばそのままキスしてしまいそうで、ライグは慌てて下を向くが下を向けば向いたでヨミコの胸元が視界に入り、襟元が大きく開いたタンクトップから控えめながらも女性としての証が見えてしまう。
「おわっ、胸っ!オマエちょ、胸見える!てかなんで下着着けてないんだよ!隠せ!」
「そんなの見られても減ることないからいいッス!てか、下着着けてないって分るほどガン見っすか!私の胸ガン見っすか!欲情したっすか!イイっすよ、お兄さん割とカッコいいし・・・私初めてッスけど頑張るんで!」
もう何がなんだか分からなくなっている。ライグは迫りくるヨミコの頭を手で押し返し、
「ああああああ!もう!落ち着け!ていっ!」
手を放したタイミングでデコピンを喰らわせる。
「にゃぶっ!あうぅぅ、痛い・・・ごめんなさい、少々取り乱してしまいました。」
額を押さえて正気を取り戻すヨミコにライグは溜息交じりで
「少々どころじゃねぇよ、ったく。説明するから。」
ヨミコの胸元に視線が行かないようがっちり首をヨミコの顔に向け話し始める。
「あの死神は、デス・アルマつって俺のパーティの使い魔だ。」
「デス・・・あるま?え?デスってあの氷結坑道にいるあのデスッスか?」
「ああ、でも少し違う。あいつらは人に憧れて心に惹かれて・・・って、まぁその辺はいい、とにかく人の俺らの味方だ。」
今の説明に納得したのかよくわからないが、そうなんですかと呟いただけだった。しかし、ライグはそれを確かめず話を続ける。
「で、そのアルマってのは何匹かいるんだが、俺が主じゃない。俺の・・・俺のパーティメンバーが主だ。ホントは紹介してやりたかったんだが、知り合いのフォーマスとカーディのコンビパーティの応援に行っててな。よろしく言っておいてくれと言付かっている。」
「そうですか。私のケガを直してくれたのもその方なんですよね。ちゃんとお礼言いたかったな。」
「それでだ。」
「はい?」
「オマエがあの場所に居て、あ、それと悪いがリュックの中を確かめさせてもらった。ロボ・・・欲しいのか?」
ライグの問いにヨミコは真っ直ぐ答える。
「はい。自分専用のロボが欲しいです。理由とか・・・言った方がイイっすか?」
少し躊躇いながら言うヨミコに
「いや、別に理由なんざどうだっていい。この職業に就いたら必ずいるもんだ。それにロボ使ってできることは稼ぐことくらいだしな。」
「はは・・・そう・・・っすよね。」
ぎごちなく笑い相槌を打つヨミコに
「で、さっきも言ったが、俺のパーティは今休業中だ。だから、オマエの素材集めに協力してやってもいい。」
「え?」
「そ、それにだ、あんな無茶してたら命がいくつあっても足りないからな。マシンナリーの心得から叩き直してやるよ。どうだ?素材があっても経験が無けりゃギルドでスキルも教えてもらえない。ちょうどいいだろ?」
ライグの提案は、ヨミコにとって願ってもないものだ。
「はいっ!ぜひっ!お願いしたいっす!あ、でも。」
二つ返事で飛びついたヨミコだったが、すぐに不安そうな表情になる。
「ん?なんだ、何か都合悪いことでもあるのか?」
ライグは不思議そうに尋ねると
「え、だって、私と一緒に・・・その・・・手伝ってもらっても、メリット無いじゃないッスか。それに私、そのすごく貧乏なので報酬というかお礼とかそういうのもきっと満足してもらえるだけ用意できないっていうか。」
ライグは大きく溜息を吐いて頭をワシワシと掻くと
「ったく、そんなもん別にいらねぇよ。俺はオマエ等みたいな新米がちゃんと一人前になってくれりゃいいんだよ。センパイが後輩に教えるのは別に特別な事じゃないだろ?」
ヨミコは瞳をキラキラさせ、向日葵のような笑顔を咲かせると勢いよく立ち上がり
「それじゃっ!ぜひよろしくお願いしますッス!今から師匠って呼ばせてもらっていいッスか!いや、呼ばせてもらうッス!」
ヨミコの態度の百面相ぶりに、プッと噴き出すライグは笑いを堪えながら
「師匠はやめてくれ。俺のことはライグでいい。あ、そうだ。」
「はいっ!ライグさん!って、なんです?」
「あ、いや、報酬の話、オマエに身体で払ってもらうのもアリかなぁと。」
「え、え、え?えええええ?か、か、身体っすか?あ、さっき私の胸見たから我慢できないとかそういうのっッスか?本当なら、私は昨日死んでたハズ。だから、私の身体は救ってくれたライグさんのモノ・・・そうっすね。わ、わ、私初めてなんで・・・いや、そのどんなプレイにも応えるつもりっすけど、最初の1回目だけは・・・んぎゃっ!」
容赦のないチョップがヨミコの脳天にヒットしていた。
「アホか。黙って聞いてりゃドンドン妄想膨らませやがって。可愛い顔してんだからプレイとか言うな。そうじゃない、そうじゃなくってだな。料理できるか?」
「へ?料理?あ、はい、それなりに・・・でも上手かどうかは・・・。」
頭をさすりながらヨミコはキョトンとライグの質問に答えると
「オッケ、それで十分だ。ちなみに俺は料理が全くできない。だから食事の用意を全部任せたい。勿論、食費は俺が出す。それが俺に対する報酬ってことでいいか?」
「あ、はい。ホントに食事作るだけでいいんですか?あ、アレっすか!料理中は裸エプロンでとかっすか!」
「ちげーよ!なんでそんな上級者向けなんだよ。普通でいい!普通に俺らの飯・・・作ってくれりゃいいから。」
「・・・『俺の飯・・・毎日作って・・・』それって言い換えれば、『オマエノミソシルガマイアサノミタイ』ってヤツっすよね!キャー!プロポーズです!大胆ッス~♪みぎゃっ。」
両手を頬に当てクネクネと身体を揺らすヨミコに再度容赦のないチョップが炸裂する。
「アホか!わざわざややこしい方向に言い換えんなっ!」
「冗談っすよー。可愛い乙女の冗談じゃないっすかぁ。」
「ったくぅ。んで?どうすんだ?」
「はいっ!そんな食事の準備くらいでいいんでしたらぜひっ!よろしくお願いします!」
ライグはハァっと呆れた溜息を吐いて立ち上がると、
「それじゃ、善は急げだ。早速行くか。まぁ短い間になるけどよろしくな?相棒。」
スッと右手を差し出す。ヨミコも立ち上がり、差し出された右手を両手で握り
「・・・はい、よろしくお願いします。師しょ・・・ライグさん!」
はにかみながら応えた。ここに、期間限定即席パーティが誕生した。
to be continue......