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各月の日記

YUNIKOさんの日記

(全員に公開)

2016年
06月09日
18:46

最終回:タイトル『Moment of love』

自キャラを主人公に、フレさまのキャラを使って文字テロっぽい
お話もこれで最終回です。

お時間が許すようでしたら、一読いただければ幸いです。
また、時間ができたら書きたいな。

それでは第4話はじまります。


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第4話 Moment of Love

 ヨミコは戸惑っていた。今までに感じたことない種類の高揚感に。それは新しい鉱石を見つけたときに感じるワクワクと心躍り出すようなものではなく、胸の奥がポゥと温かくなったり、そうかと思えばキュンと胸が締め付けられるように苦しくなったり。いつからこんな風になったのか、ヨミコはベッドに転がり天井を見つめ考えていた。けれど考えるまでもない、この工房のオーナーであるマエストロの青年・ライグに出逢ってからだ。最初は『命を救ってくれた恩人』で『マシンナリーの私に色々指導してくれる先輩』という憧れにも似た感情でしかなかった。けれどこの数週間、彼と共に行動し寝食を共にするようになって彼の真面目さだったり優しさが見えるようになって、マエストロとしてではなく一人の男の子として彼に惹かれていたのだ。

「考えるまでもないんだよ・・・。私・・・あの人のこと・・・。」

次の言葉を口にすることを躊躇う。それは、本当にその単語が正解なのかやっぱり自信がないから。

「・・・あぁンもう・・・こんなの初めてなんスよぉ・・・。」

頭の下の枕を抜き取り、胸にしっかり抱きしめるとそのまま枕に顔を埋めウンウン唸る。

「ヨミコ?そんなに自分を追い詰めるように考えてはダメよ?」

横向きに転がったヨミコの顔の前でふんわりとした優しい口調のお姉さん猫がぺたんと座って尻尾をゆらゆらと揺らしていた。

「フリル・・・。だって・・・私・・・。」

抱きしめた枕から目だけを出してフリルを見つめると

「ヨミコ?貴女のその気持ちは自分を責める為に生まれたモノじゃないわ。悩むことはあるかもしれないけど、それはとっても自然な事で大切な事。」

フリルは優しくヨミコの頭を撫でる。ヨミコは母親に撫でられているような安心感を感じた。

「それにね?」
「ん?」
「そんな風に感じられるのは女の子の特権なのよ♪」

そう言ってフリルは可愛くウィンクした。ヨミコの戸惑うような瞳の色はみるみる消えて、代わりに頬が薄紅色に染まり

「そっか・・・。こんなの初めてで戸惑っちゃったッスけど、でもこの先どんな風に変わっていくかワクワクもしてる・・・。ドキドキとワクワクが一緒に味わえるとか私・・・ラッキーなンスかね?」

ニッと笑ってフリルに話すと

「そうですね♪そんな風に前向きになれるのがヨミコの良いところなのかもしれませんね。だったら・・・」

二人は顔を見合わせて、同じ言葉を口にした。

「めいっぱい楽しまないとね♪」
「目一杯楽しみましょう♪」

 それからの毎日は楽しかった。ライグと一緒にロボを組み立て調整し、食事して時には二人並んで昼寝して。ヨミコの瞳に映る世界は鮮やかにそして輝いていた。

「ヨミコ、そこの8のメガネ取ってくれ。」
「はぁい・・・えっと、ハイ、どぞッス。って、ぁ。」
「ん、わりィ・・・おっと・・・。」

工具を受け渡す二人の指先が触れ、ヨミコはその場で動きが止まってしまう。ライグに手袋越しでも触れたという事実に、ヨミコの胸はドキドキと耳鳴り程に煩く鳴り、神経は指先に集中し顔が自分でもハッキリと分るほどに火照る。ライグもヨミコの不可解な所作に引っ張られるようにほんの少しだけ顔を染めて俯き、お礼の言葉を失った。

「「・・・・・・。」」

微妙に気まずい空気感の中、無言で作業は進んでいく。暫くしてこの雰囲気に我慢できなくなったと言わんばかりにライグが口を開いた。

「な、なぁ。」
「は、はい?」
「ヨミコって・・・その・・・恋人っていうか・・・そういうのいるのか?」
「・・・・・・え?って、キャッ。」

まさかの質問にヨミコは調整に挟みこんでいたホースピンチャーを緩めてしまい、ホースからオイルが噴き出して慌ててホースピンチャーで挟みなおす。

「おま、なにやってんだよ。」

呆れ顔でロボのボディの隙間から顔を出してライグが言うと、ウエスで零れたオイルを拭きながら

「だ、だ、だって!ライグさんが突然変なコト言うから!・・・言うからびっくりしたんじゃないッスかぁ・・・。」

愚痴るように呟くと

「ったく、しゃぁねぇなぁ。」

そう言うとライグはヨミコに近づき、首に掛けていたタオルを手に取り

「ほら、ちょっと動くなよ・・・。目に入ったらどうすんだ、ったく。」

ヨミコの顔に飛んだオイルを丁寧に拭き取っていく。ヨミコはされるがままに目を閉じて大人しくしていると、

「ほら、取れたぞ。」
「ありがとッス・・・って、ハッ・・・。」

閉じていた目を開けると、ヨミコの視界に現れたのはライグの顔。その距離は今までにない程近く、ヨミコは慌てて視線を外そうとしたが、ライグの瞳に吸い込まれるような感覚を覚え、全く瞳を動かすことができない。

(・・・コイツ・・・キレイな顔・・・してんだな・・・。)

ライグも当然同じ距離でヨミコの顔を見つめていた。いつも元気で笑顔しか見た記憶がないライグにとって、ほんのり頬を染めたヨミコの真顔を見るのは初めてで、ついついじっくりと一つ一つのパーツを確かめるように見る。

(睫毛・・・長いんだな・・・。唇も・・・)

ライグは身体が熱くなり始めたことに気付き、とっさに視線を唇から持ち上げると、トロンと熱に浮かされたような瞳で釘付けにされる。ほんの一瞬二人は見つめ合うと、ヨミコは何も言わず瞳を閉じた。

「・・・・・・っ!」(ゴクッ)

ライグは思わず生唾を飲み込むと、両手をヨミコの肩にゆっくりと置いた。すると、ヨミコはビクンと小さく身体を震わせたが、瞳を開くことはない。ライグはそのままゆっくりとヨミコの身体を引き要せようと腕に力を入れたときだった。

「たっだいまーーっ!イカれたレディのお帰りだよー♪」

元気な声で色々おかしな言葉が飛んできた。

「っ!うわ!オ、オレナニヤッテンダ・・・。」
「きゃっ」

その声に驚き、我に返ったライグはヨミコから飛び退くように離れた。ヨミコはライグに押されて、よろめきながら糸の切れたマリオネットのようにヘナヘナとその場に座り込む。

「ミニーちゃん、それを言うなら『イカれた』じゃなくて『イカした』だよ・・・。」
「よいではないか。ある意味このウサギっ子にはぴったりな言葉ではないか♪」

キャイキャイと声の主たちは工房に入ってくる。

「ライグさま、ただいまもどりました。」

腕には包帯、そして右目に眼帯をした白い使い魔・アルマのシロがぺこりと頭を下げて挨拶する。

「ライグー!イカれたレディのミニーちゃんが・・・って、あー!ライグが女の人いじめてるー!」

シロの後に入ってきたミニー・ドゥ・アルマのミニーがライグを指差して叫ぶ。

「なんじゃミニー、ライグの小僧にそんな漢気溢れる行動が取れるわけなか・・・ほぅ、ほぅほぅほぅ・・・これは未遂か?びふぉーか?あふたーか?」

気怠そうに自分より大きい鎌を担いでゆらゆらと飛んできたデスが瞳を輝かせて指を顎に当てる。

「ち、ちげー!全部ちげーし!お、お、オレ様は紳士だからな!ホラソコ!そこの白いのっ!WIS端末で誰にメッセージ送るつもりだ!って、死神幼女!テメー、期待に満ちた顔でゴミ箱漁んなっ!」

さっきまでのちょっと甘い空気は完全に霧散し、完全に普段の空気に戻っていた。

「で?おまえらが帰ってきたってことは、ご主人様もいるんだろ?」

ライグはデスのフードを掴んで持ち上げながらシロに尋ねると

「はっ!そうなのです!ライグさまにお願いがあったのです!」
「こぉら!放さぬかっ!妾はウサギではないぞ!ええい、放せぇ!主が大変なのじゃぞ!放せ、はーなーせ~・・・グス」

手足をバタつかせて涙を浮かべ、今にも泣き出しそうになるデスを放し

「どうしたっ!あいつに、ミサキに何かあったのか!」

ライグの雰囲気が一気に豹変し、座り込んでアルマ達と戯れている様子をぼーっと見つめていたヨミコはビクンと肩を震わせる。

「あの、じつはごしゅじんさまがおケガをされて・・・おにわのハシゴをのぼれないのれす。」

シロが今にも泣きそうな顔で説明し

「グス・・・妾が担いで・・・と思ったのじゃが、なにぶんか弱くてな・・・グス、ズズーッ・・・。」

ライグの嫌がらせで乱れたフードを直しながら、零れそうな涙を鼻をすすって泣いてないアピールをしながらシロに付け足すと

「ばかやろう!早く言え!下にいるんだな!」
「あ、はい、もうしわ・・・あれ?もういない・・・。」
「相変わらず、主の事になると男前よのう、あやつは。」

ライグは二人に怒鳴って駈け出した。

「・・・・・・。ライグさん・・・。」

ぺたんと座ったまま、駈け出すライグを見ていたヨミコに

「おやつ・・・食べる?」

いつの間にか隣に同じようにぺたんと座っていたミニーがニンジンのスティックを差し出し

「うん・・・ありがとッス。・・・ぽりぽり。」

ヨミコはそれを受け取ると、二人並んでぽりぽりとかじりだした。
 しばらくすると、ライグが一人の少女を抱いて戻ってきた。そしてそのまま工房で立ち止まらず、奥の部屋に入っていった。ヨミコは立ち上がると、

「ねぇ、ミニー・・・ちゃん?あの人がご主人様?」

隣でポリポリとニンジンをかじるミニーに尋ねた。ミニーはヨミコを見上げて

「そだよー。ミニーのマスターで、シロとデスのマスターだよ。ミサキっていうのー。」

無邪気に応えて見せる。

「という事は、私の治療をしてくれたのも・・・」
「うん、でも、アレスはシロだよー。ミニーは『のーきん』タイプだから使えないっていわれたー♪」

と自慢げに話す。

「そっか、それじゃ私もちゃんとお礼言わないといけないっすね。」

ヨミコはミニーの頭を優しく撫でると、奥にあるライグの部屋に向かった。一歩、また一歩部屋に近づく度にヨミコの心臓が煩くなる。胸が苦しい、

(これアレだ・・・本能的に危機を察知してるってヤツッスね。ですよね・・・こういうのって行っちゃダメなヤツっすよね。)

ヨミコが部屋のドアの前にくると、ドアが少しだけ開いていた。

「・・・・・・。」

ヨミコはダメだと思いながらも隙間から中を覗いた。すると、そこにはソファに座らされて、頭をクシャクシャと撫でまわされる少女が見えた。そして

「ぁ・・・・・・。」

私が助けられて以降、一度だって見たことの無いライグの横顔が見えた。

「へ、へぇ・・・・・・ライグさん・・・そんな顔する・・・んだ。」

この瞬間、やかましい程に鳴りつづけていた鼓動は普段のソレに戻り、胸の辺りに痛い程の冷たい感覚が襲った。全身の力がゆっくりと抜け、立っているのか座っているのか分からなくなっていた。

「そっかぁ・・・私の感じたあの感覚・・・間違いなかったんだ・・・よかったぁ・・・口にしなくて・・・もししてたら・・・してたら・・・わたし・・・きっと声あげて・・・泣いてたッスよぉ・・・。」

そう言い終わったとき、頬に一筋の涙が流れた。ヨミコは気づかれないようにドアから離れると、頬を拭って工房へ戻り一言も話さず作業に戻った。調整と清掃が終わったのは日が暮れて夜の帳が落ちるという頃だった。実はあの後、ライグがすぐに戻ってきて作業を再開した。特に会話らしい会話もなく、淡々と時を刻んでいく。作業が終わりロボの完成とミサキの無事帰還を祝って、夜は工房でバーベキューをした。その時にはフリルも登場し、ミサキ他アルマ達に紹介するとすぐに仲良くなり、バーベキューは大いに盛り上がりを見せた。夜も更け、ささやかなお祝いの宴も終わるとヨミコは出来上がったロボに乗り込み、ライグの庭の真下にいた。

「おい、今晩泊まって明日でもいいんじゃないのか。もうこんなに遅いのに。」
「いえいえ、ただでさえ長居してたンすから。それに、約束はパートナーが戻ってくるまで・・・だったじゃないッスか。」
「いや、確かにそういう約束だったけど。そんなキッチリ守らなくってもいいじゃないか。それに今晩寝るトコあんのかよ。」
「あはは~、大丈夫ッスよぉ。寝るトコなんてどこでも寝れるッス。それに今日じゃないと、今晩じゃないとダメなんスよ・・・。」
「なんでだよ?」
「なんで・・・?なんで・・・って・・・」
「ん?」
「そんなのっ!そんなの言えるわけないじゃん!私は!私が!ライグさんのコト好きになっちゃって、どうしようもなく好きになっちゃって!でも、ミサキさんを見るときのライグさんの瞳が全部私に語ってくれて!私、初恋だったのに!生まれて初めてこんな気持ちになったのに!好きって気づいて1週間も経たないうちに終わっちゃったんだよ!?好きな人の幸せな顔を見ながら平気な顔してなんていられるわけないじゃん!そんなコト言えるわけないじゃん!」
「いや・・・全部言ってるじゃねぇか・・・。」
「なんでって聞くからじゃん・・・好きなんだもん、好きだったんだもん、聞かれたら答えたくなるじゃん・・・応えたくなるじゃん・・・。」
「ヨミコ・・・ゴメン。俺・・・。」
「言うなバカッ!これ以上言うなっ!知ってるって、気付いたって言ったじゃん!だから、帰るの!私・・・帰るの・・・。」
「ヨミコ・・・」

ヨミコは、ゴシゴシと腕で顔を拭いロボの上からライグを見下ろし

「はいっ!もう終わったッスよ。全部終わりッス。ロボ製作も指導も。あと私の貴重な初恋も。一瞬で終わったッスよ。アレっす、Moment of Loveってやつっすよ。なんかかっこいいっすよね。」
「ヨミコ・・・あの・・・」
「だーかーらー、そういう辛気臭いの辞めっすよ。ライグさん、ご指導ご鞭撻、ホントにありがとうでした!」
「・・・・・・おう。こっちも美味い飯、サンキュな。」
「いえいえ、報酬には安すぎるくらいッスよ。・・・あ。」
「ん?」
「おつり出るかも・・・。」
「は?」
「だって、ライグさん、私の胸見たッスよね?」
「え、え、アレは、事故でって、そもそもオマエが・・・」
「でも、見たっすもんね?下着着けてないってことも認識するくらいじっくり見たッスもんね?・・・お嫁に逝けない・・・。」
「・・・スマン。」
「あはははっ、やだなぁ、冗談ッスよ、じょーだん。それじゃ行きますね。ミサキさんとアルマちゃんズにもよろしく伝えてください。それじゃ!」
「おう、じゃあな。困ったときは迷わずにウチに来いよ。がんばれな!」

ヨミコは操縦桿を倒し、ロボは走り出した。アップタウンを抜けアクロニア平原に差し掛かる辺りで視界が歪む。どんどんソレは歪み、世界が溺れたように前が見えなくなったところでロボを止めた。

「ヨミコ、いい経験になったんじゃない?」
「フリル・・・。」
「初恋は・・・実るほうがいいのかもしれないけど、実らないのもステキよ。」
「・・・グス、なんで?」
「だって、その恋がヨミコの経験値になるんですもの。次する恋はもっといい恋になるわ。」
「・・・そういうもの?」
「ええ、そういうものよ。でも、次がステキな恋だとわかっていても・・・今この時は辛いわよね。いいよ。今は私の胸を貸してあげる。」
「フリル・・・フリルぅぅぅ!えーん、えーん!なんかフリルがお姉ちゃんっぽいぃぃぃ!うわーん、ちっこいくせにぃぃ、生意気ぃぃえーんえーん!しかも、ちっこいのに胸ふかふかだしぃ!えーん」
「あらあら、ほんと、困ったご主人さまだわ。うふふ。」

こうして、ヨミコの初恋はアクロニアに広がる星空の中に星となって消えた。


「えーん、ちーん・・・ズルズル」
「ちょっ!いくらご主人さまでもそれはイヤですぅぅぅ!」


HappyEnd?
First love of Yomiko became the star of that night sky.
  • ECOの創作