この間から書き始めたお話『幼馴染語り』。
気分転換的な自分のストレス発散という名目で続きアップです。
稚拙な文章なので恥ずかしいですが、よろしければ目を通していただけると嬉しいです。
タイトル『幼馴染語り』
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第5話 ケンカ
朝、篤史は4人で登校といういつもの風景に今日は何か違和感を感じていた。前を歩く女子コンビに聞こえないように拓也に耳打ちする。
「なぁ、何かいつもと違わなくね?」
「ん?二人?あぁ、やっぱり気になった?」
拓也も同じように感じていたらしい。篤史と拓也は
「なんか聞いてるか?」
「いや、何も。」
「・・・・・・。」
「直接聞いてみる?篤史が。」
「はぁ?!なんで俺なんだよ。」
拓也のセリフに篤史はつい声を上げてしまった。
「ん?どしたの?」
史華が不思議そうにこちらを振り返り、
「なになに?男の子同士で内緒話とかイヤラシイ♪」
晶が史華に合わせて追撃してくる。
「そんなんじゃねぇよ。」
篤史は目線を明後日の方角へ投げて応え、ゆっくりと目線を戻すと晶と視線がぶつかる。
「!」
すると晶は一瞬驚いたように目を開き、慌てて前に向き直す。篤史は晶の仕草に首をかしげるが、特に変わった行動でもないので気にせず学校へ向かった。午前中の授業が終わり、生徒たちは文具を机に片付けていると
「あぁ、今日の日直は誰かな?」
古文の教師が皆に問いかける。
「はい、私です。」
晶が手を挙げると
「あぁ、西園寺君か。悪いが課題のプリントを持ってくるの忘れてね、後で職員室に取りにきてもらえないかな。」
ゆっくりとした口調で伝えると
「分りました。」
と応え、教師は頼みましたよとそのまま教室を後にした。
「んじゃ、メシにすっか。史華も来いよ。」
篤史と拓也は机を向かい合わせにして即席のテーブルを作ると、それぞれ弁当箱を取り出す。今までは4人で向かい合って食べていた昼食も最近は一人増え5人で食べるようになっていた。
「なぁ、いつも思ってんだけど樹の弁当って下宿先の・・・ばあちゃんだっけ?が作ってんの?」
篤史は樹の弁当箱を覗き込む。
「ああ、オレ料理とか出来ないから。そういう篤史は母親に作ってもらってるのか?」
「いんや、俺ンちは当番制で茜と交代だな。ウチ両親事故で死んじまってな。」
一瞬その場の空気が固まる。樹は慌てて
「あ・・・すまん。その、知らなくて・・・。」
申し訳なさそうに言うと、史華が篤史にビシッと指を差して
「こらぁ!あっくん、おじさんもおばさんも亡くなってないでしょ!勝手に殺しちゃだめえぇ!」
史華の言った言葉を理解できずに固まる樹。
「・・・・・・え?」
樹のリアクションに他の3人は笑いを堪えていたが、晶はたまらず噴き出してしまう。
「・・・・・・っく、ぷっぷぷ・・・あはは!だめ、もうだめ。向井君ごめんね。篤史の冗談にきっと史華ならそういうツッコミするんじゃないかって想像してたら、あんまりにもそのままだったからごめんごめん♪」
「は?どういう・・・。」
まだもうひとつ理解しきれていない樹に、篤史が付け加える。
「いやぁ、ワリィ。弁当は交代で茜と作ってるんだけど、父ちゃんと母ちゃんは死んでないんだ。父ちゃんの転勤について行ってさ。二人ともアメリカで第2の新婚生活を送ってる。」
樹は篤史の説明に顔を赤らめ、
「なんだよ・・・そういう冗談はよせ。一応オレでも気は使うんだ。」
「ワリィワリィ。」
「その茜さんって妹か?」
「いんや、姉貴。」
「お姉さんを呼び捨てか。仲いいんだな。」
「まぁ仲良いっつうか、実際のトコ小さい頃から仕事で親は殆ど家に居なかったからな。二人で協力して何でもやるようにしてたんだ、だからかもな。」
「なるほど。」
そんな話をしながら昼食を終え、それぞれ弁当箱を片付けていると
「あ、晶ちゃん先生の頼みごと行くんだよね?」
史華が唐突に尋ねる。
「え?あ、うん。今から行くわ。」
「それじゃ、あっくん手伝ってあげて?」
史華が篤史にそう言うと、晶の眉がピクンと動く。篤史は面倒臭そうに
「ん?あぁ、プリントとか言ってたやつかぁ。別に構わないけどそんな量多いのか?」
篤史が聞き返すと同時に
「大丈夫!プリントだから量も少ないし!私ひとりで平気!」
物凄い勢いで被せてきた晶に、篤史は少し驚きながら
「お、おう・・・。晶がそういうなら・・・。」
という篤史の言葉に晶はホッと表情を緩め
「それじゃ私ちょっと行ってくるね。机直せなくてごめんね。」
「気にすんなよ。」
そう言って晶は逃げるように教室を出て行った。午後の授業も何事も無く終了し放課後を迎えた。H.R.で来週からテスト週間に入る旨の連絡を担任から聞かされクラス全員が深い深い溜息をつく。アフタースクールへの期待に満ちた空気が一瞬にして凍りついた瞬間だった。そんな曇天じみた雰囲気の中、樹が晶の所に行き
「なぁ西園寺。」
「向井君?どうしたの?」
珍しいシチュエーションにキョトンとした顔で応えると
「数学・・・得意か?ちょっと最後のトコよくわかんなくて。」
樹は少し恥ずかしそうに言う。すると、晶は笑顔で頷き
「あぁ、アレかぁ。あ、そうだ。それなら来週からテスト週間だしちょっと早いけどテスト勉強会始める?・・・史華もね♪」
「げ・・・。」
帰り支度を終えた史華が嬉しそうに晶の机に向かってきたところを見事に捕獲され、ヒキガエルのような声をだす。
「『げ』ってなによ。あ、拓也と篤史もだよ?」
目線をそのまま後ろの席に向ける。篤史はそんな晶のプレッシャーに動じることなく
「ワリィ、今日の炊事当番俺なんだわ。明日からなら付き合うから今日は勘弁な。」
拓也も同じように
「ごめん。僕も今日は母さんに用事頼まれてて・・・。」
そう言うと、鞄を肩に掛け急いで出て行った。
「そっかぁ。ま、篤史と私は勉強会でも教える側だしね。美味しい夕飯を茜さんに作るように♪」
そう言って篤史に向かって親指を立てると、篤史も同じポーズで返し教室を出て行った。放課後の教室に残ったのは樹と史華と晶。今の晶にとってはベストなメンバーだった。
「さて、それじゃ勉強会しましょうか。とその前に・・・。」
晶は史華の前に立ち、少しだけ眉が釣上る。
「ねぇ史華。アレは何?」
晶の口調に史華の笑顔が固くなる。
「あれ?あれってなんだっけ・・・。」
「とぼけないでっ!昼休みのコト!」
すると史華は、固い笑顔のまま
「あれは、晶ちゃんとあっくんが少しでも一緒に居られ・・・。」
「誰がそんなことしてって頼んだの!誰も頼んでない!」
どんどん口調がきつくなる晶に史華の顔から笑顔が消える。
「でも・・・でも、あっくんのこと好きなんだよね?・・・好きな人と少しでも一緒に・・・」
「だからっ!私は忘れてって言ったじゃない!そういう事、史華にして欲しいんじゃない!忘れて欲しいのよ!言ったでしょ?」
「でも・・・きっと、あっくんも晶ちゃんのこ・・・」
そこで晶の表情と身に纏う空気の質が完全に変わった。
「はぁ?!史華、ソレ本気で言ってるの?晶が私のコト好きって思ってるの?ねぇ、なんで?なんでそんなコト言えるわけ?史華いったい今まで何見てきたの?篤史のドコ見てきたの?何を聞いてきたの?何年一緒にいるの?篤史と一番付き合い長いはずの史華は何も感じなかったの?」
まくし立てる様に口早に言い放つ姿を初めてみた史華は、目に涙を滲ませ足も震えていた。しかし、晶から出た言葉を自分の中に取り込んでいくと想像していなかった単語が混ざっていることに気付き
「え・・・?あっくんの見てきた・・・もの・・・?」
すると、晶は前髪を掻き上げながら更に言葉を重ねる。
「そうよ?ハッキリ言おうか?篤史はね?私なんか見てないの。史華、アナタを見てたのよ!ずっとずっとずっとずっと!なんで気付かないの?幼馴染だからって、ずっと守ってやるとか言う?おかしいでしょ?小さい頃からそうだったじゃない。史華の前にはいつも篤史がいたでしょ?」
「でも・・・それは・・・あっくんが小さい頃から一緒だか・・・」
「まだそんなこと言ってるの?篤史って、史華の事になると沸点すごく下がるんだよ?向井君のことだって・・・あ、ごめん。」
晶は隣にいた樹を気にすると
「いや・・・いいけど・・・オレいない方が・・・。」
「ううん居て・・・。」
「ああ。」
樹は黙ってその場にとどまる。
「史華。」
「え?」
「オリエンテーションのコト覚えてるよね?篤史が怪我した。」
「うん・・・。」
「あの時、私誰よりも篤史の近くに居たんだよ。でも、私より先に史華が篤史の名前呼んで、私より早く篤史の元へ駆けた。私ね、その時思ったんだよ。『あぁ、やっぱり敵わないな』って。わかる?気付いた?自分の心。気持ち。史華だって篤史の事好きなんだって。」
晶の言葉に史華が目を見開く。そして、たどたどしく声を絞り出す。
「え・・・私が・・・あっくんの事・・・好・・・き・・・。」
信じられないという顔で史華は首を左右に振り
「そんなことないよ!私・・・あっくんのこと・・・確かに好きだよ?でも拓ちゃんも晶も同じくらい好きで・・・。」
そんなセリフは晶にとっては、心を掻き乱す以外何物でもなく
「そういう好きじゃないわ!なに子供みたいに!恋したこと無いとでも言いたいの?人を好きに・・・愛したこと無いっていうの?」
晶は更に声を荒げる。すると、史華は両手を握り振り下ろす仕草を見せ、今までに聞いたことのない口調で晶に言い返す。
「わかんないっ!わかんないよ!好きとか!愛とか!そんなの考えたこともないよ!だってみんな大好きなんだもん!ずっと一緒だったんだもん!晶ちゃんだって小学からでも幼馴染で友達だもん!拓ちゃんだってあっくんだって幼馴染だもん!わかんな・・・いよ・・・ずっと一緒だったんだもん・・・一緒にいたいんだもん・・・。」
最後は絞り出すように途切れ途切れで声にする史華の瞳には涙が溢れていた。晶は下唇をキュッと咬み
「もういいっ!なんで?なんで史華は私の気持ちわかってくれないの?私だって・・・私だってみんなと一緒に居たいのよ!」
そう言うと、晶は鞄も持たずに駆け出し教室を出ていく。
「ひぅっ・・・あ、あき・・・ゃん・・・まって・・・ふぇ・・・ごめ・・・ごめんなさぁいぃぃぃ!えーーん!」
史華は晶の背中に声を掛けようとするが、溢れる涙と嗚咽でまともに声も出せず、その場に泣き崩れてしまう。とんでもない場面に付き合わされた樹は小さく溜息をつき
「なるほど・・・居てほしい理由はそういうコトか。」
零すように小さく呟くと史華の横にしゃがみ込み、背中をさすりながら声を掛ける。
「とりあえず泣けるだけ泣いとけ。上手く言えないけど・・・気持ちのすれ違いってこんなもんだ。解ったつもりでも判ってないそれに気付いて傷ついて。そうやってお互い知り合ってくんだ。」
「なぁに・・・?グス・・・それ・・・慰めてくれてるのか・・・な?」
「一応な。」
「優しいんだね・・・向井くん・・・じゃあね・・・。」
「ああ、泣いとけ。今はオレと三森しかいない。」
「うん・・・ありがと・・・あり・・・うぇぇぇぇぇぇぇん!」
史華は樹の胸元に顔を埋めると、思いっきり声を上げて泣いた。そして、廊下を走る晶はそのまま階段を駆け上がって屋上手前の踊り場まで来ると、そこで声を殺して制服の袖を噛みしめて泣き続けた。
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