この間から書き始めたお話『幼馴染語り』。
気分転換的な自分のストレス発散という名目で続きアップです。
とか言いながら、早くも6話になりました。
初々しくて、青くて、切なくて、そんなお話にしたいなぁと思っているのですが・・・w
稚拙な文章なので恥ずかしいですが、よろしければ目を通していただけると嬉しいです。
タイトル『幼馴染語り』
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第6話 笹島拓也
いつかこんな日が来るんじゃないかと思っていた。篠田篤史、彼は魅力的だ。同性の僕が見てもカッコいいと思う。頭も良くて運動神経も抜群、口が少し悪いけれどそれはこの年代の女子から見ればちょいワルな感じできっとウケる。不良っぽい男子がモテるのは中学生まで高校は頭のいい男子が比較的モテる。篤史は頭もイイから高校に入っても継続してモテる。なんてヤツだ。チートじゃないか。けれど、篤史に告白する女子は過去殆どいなかった。理由は幼馴染グループのせいだ。常に成績が学年トップクラスの晶と妹みたいに常にくっついて回ってる史華、この二人が常に篤史の周りにいる僕を含めた4人の幼馴染グループは他の女子には近寄りがたいものだと思う。しかし、僕もこの状況に甘えている部分があるのは否定しない。『どっちが篠田篤史の恋人なのか』この疑問のおかげで、僕はずっと一人の女子を想っていられるのだから。
放課後の廊下、僕はある場所を目指して歩いている。教室で用事があると言って勉強会を断ったのは嘘だ。篤史が今日炊事当番で参加できないのは予測できたし、今朝の二人の様子から何かあったのは明白。なら、ちゃんと解決してほしくて敢えて嘘をついてその場から離脱した。そして、教室の入り口が見える場所からそっと見ていたのだ。何かが起こると感じていたから。僕は階段をゆっくりと上がり、屋上へのドアがある踊り場に辿り着くと
「大丈夫?」
優しく声を掛ける。晶はびっくりした顔で拓也を見上げると、ゴシゴシと制服で涙を拭い
「な、なんで?拓也・・・用事が・・・グスっ、あったんじゃ・・・。」
必死に震える声を抑えて問いかける。
「うん、まぁ・・・なんていうかさ。今朝も二人の雰囲気おかしかったしね。あの篤史ですら気づいてたんだからよっぽどじゃない?だからちょっと心配でね。」
拓也は優しい声でそう言いながら晶の隣に並んでしゃがむ。
「拓也・・・。」
「ん?」
「教室での話・・・もしかして聞いてた?」
「ううん、聞いてないよ。盗み聞きはよくないでしょ?でも・・・。」
「でも?」
「想像はできてる。」
「そっか・・・。まいったなぁ・・・。ずっと変わらないで一緒に過ごしていたかったんだけどなぁ。しくじったなぁ・・・。ハァ、反省・・・。」
晶は体育座りをして膝に顔を埋める。
「変わらないか・・・。晶は変わらないのが一番だと思ってるんだ。」
拓也の言葉に
「変わらないのがいいよ・・・。ずっと仲良しで幼馴染で一緒に楽しいことも嬉しいことも共有していたいわ・・・。だって、ここが私の居場所なんだもん・・・。」
晶は呟く。
「僕はね、変わってもいいって思ってる。だって僕たちは成長してるんだ。考え方だって昔よりずっと大人になったし、諦めるとか我慢するとかいっぱい覚えたじゃない?」
拓也の話に割り込むように晶が口を開き
「そうじゃない、確かにそうかもしれないけど、私が・・・」
「わかってるよ。晶の言いたいことは全部わかる。だって・・・。」
「だって?」
「だって、僕は晶のコト・・・誰よりもずっと見ていたから。」
「・・・・・・え?」
晶はそこで口を開いたまま声を出せなかった。
「気付いてなかったかもしれないけど、僕はずっと晶のコト見てた。晶のコトだけを見てた。どんどん成長していく・・・キレイになって行く晶を。晶、僕は晶のコトが好きです。」
「え・・・拓・・・でも・・・でも私は・・・。」
やっと声を出せた晶を遮るように
「いいんだよ。それも分ってる。晶、篤史のこと好きなんだよね?それも分って僕は晶の事が好きなんだ。史華が篤史のコト好きでも、晶が篤史のコト好きでも僕には関係ないんだ。もし、篤史が史華の事が好きでそれで晶が傷ついたら、僕がその隙間に入って晶の傷を癒やせたら・・・晶の心の隙間を埋められるならそれでいいって・・・打算的でしょ?軽蔑したかな。でもそれくらい想ってるんだよ。」
「・・・・・・。」
晶は何も言えず、拓也の言葉を俯いて聞いていた。
「まぁでもさ、せっかく幼馴染でずっと一緒に過ごしてきたんだもんね。この関係は居心地がいいし、出来る事なら壊したくない、壊れて欲しくない。だから、晶が返事できないならそれでもいい。僕も今すぐ返事が欲しいわけじゃない。ただ・・・」
「た・・・だ・・・?」
「ただ、僕の気持ちは変わらない。ずっと、ずっとこの先も・・・今の関係が壊れても、きっと変わらない。僕は晶の傍に居たいし居る。晶の味方であり続けるよ。」
「たく・・・や・・・。」
晶の目に再び涙が溢れる。晶はその涙を拭う事はせず
「あ・・・ありがとう。その・・・今はまだ・・・返事とか・・・でも、その、篤史にフラれてから・・・とかそういうんじゃなくて・・・その、世間でいう保険・・・とかそういうんじゃなくて・・・。」
「わかってるよ。晶が自分でちゃんと答え見つけて納得して・・・そういうことだよね?」
拓也は相変わらず優しい口調で声を掛けると
「うん・・・うん・・・。ごめんね・・・私・・・自分で思ってた以上に弱い子だった・・・今だって・・・拓也の言葉にすがってしまいそうで・・・でも・・・それってやっぱり拓也に失礼・・・だし・・・。」
晶は流れる涙をそのままに、俯いて、自信なさげに声を震わせて一言一言絞り出すように話す。でも、それは決してその場の言い逃れや言い訳ではなく、晶の本心から出る言葉であり、拓也は当然それを理解していた。拓也はハハッと軽く笑い
「そういうキチンとしたところ、ほんと晶っぽいね。だから好きになったんだよ。」
「たくや・・・」
拓也は晶の頭をそっと撫でると立ち上がり
「それじゃ、僕は先に帰るね。晶も僕と一緒じゃ何かと気まずいでしょ?ホラ、涙拭いて下で顔洗って今日はこのまま帰りな。」
ポケットからハンカチを取り出し晶に持たせる。晶は受け取ったハンカチをギュッと握り締め
「うん・・・ありがと・・・。ごめんね・・・。」
小さな声で呟くと
「うん。それじゃね、バイバイ。」
拓也は階段を下りて行った。
予想外だった。今日こんな形で告白してしまうなんて。僕は何を焦っていたんだろう。いつもの僕ならきっとあの場面でもいつもと同じ雰囲気で優しい言葉をかけて慰めて、きっと晶を笑顔にできたはずだったのに。笑顔どころか涙を流させてしまった。変わらない方が良い、晶はそう言っていたけど僕だって同じだ。今の関係がずっと続けば僕はそれだけ晶の傍に居てあげられる。晶の味方でいてあげられる。なんでこうなったんだろう、晶だってきっとあんなコト・・・篤史のコトが好きだなんて口にしなかったはずだ。でも口にした。口にしてしまうような事があったのか、口にしてしまうような気持ちにさせる誰かが居たのか。
「・・・樹・・・。」
そうだ、僕たちの関係に関わっていなくて僕たちに関わっている人間・・・拓也はぽつりと一人の名前を呟いた。
「まずいなぁ・・・篤史みたいなチートキャラだけでもいっぱいいっぱいなのに樹とか・・・樹って晶のコトどう思っているのかな。」
晶はまだ自分の気持ちが篤史だけに向いているって思っている。ずっとひた隠ししてきた自分の想いをこうもあっさり口にさせてしまうくらい晶の深いところに踏み込んだ樹の存在に晶自身は気づいていない。そうだ、だから僕は焦ってしまったんだ。晶が樹に対しての想いを芽生えさせてしまう前に、その芽を摘んでしまおうとしていたんだ。
「敏いなぁ・・・。つくづく自分がイヤなヤツだって思うよ・・・。」
大きく溜息を吐いて、通学路を一人歩く。でも、その考えは悪くない。万が一、晶が篤史と樹に想いを寄せてしまったら僕の入る隙はもう全く存在しなくなる。晶は真面目な子だ、3人を同時に見る事なんてできない。だからこれでいいんだ。けど、もし樹が晶のコトを好きだったら?僕は勝てるのか?僕が見たところ樹は人とのコミュニケーションを得意としていない。きっと自分の気持ちを伝える事は苦手な分野のはず。だったら
「僕が晶の前に立てばいいんだ・・・樹と晶の間に僕が入れば。」
心底自分の黒さに感心してしまうが、もうそういう所で格好つけている場合じゃない。僕の気持ちは晶に伝わってしまったんだ。後は、晶が篤史への想いにケリを着けて、ゆっくりでもいい僕の方を見てくれれば。もし樹がその障害になるなら、僕はソレを排除すればいい。
「よし。」
僕は静かに拳を握り、これからの行動指針を明確にする。
「おーい、拓也ぁ。」
聞き慣れた声が背後から聞こえ僕は振り返ると、篤史がビニールの買い物袋を手に駆け寄ってきた。
「あれ?拓也、お前用事あったんじゃねぇの?」
いつものように気楽に話し掛ける篤史に
「ああ、うん。用事は終わったよ。それより篤史こそ買い物?」
いつもの平常心を保ち篤史に返すと
「そうだよ、茜のやつみりん使い切ったのに買うの忘れてたとか言いやがってさぁ。まぁ、だから今日は献立変えて作ったから問題ねぇんだけどな。明日、茜が料理する時に無いとアレだからな。」
「へぇ。まぁなんていうか、篤史ってホント茜さんのコト好きだよね。」
クスクスと笑うと、篤史は明後日の方を向いて人差し指で鼻の頭を掻きながら
「ば、ばかいうなよ。す、好きとか、茜は俺の姉ちゃんだぞ?そんなん好きとかそういうんじゃねぇよ。」
「ははは、そうだね。『仲が良い』だけだよね。」
「チッ、それに・・・茜が唯一の家族・・・ホントの意味で俺のコト守ってくれた・・・。」
そこで篤史の表情が憂いを帯びる。
「あ・・・ごめん。そんなつもりなかったんだ。」
慌てて口にすると、
「ん?ああ、気にすんなよ。父ちゃんも母ちゃんも俺の親で茜は姉ちゃん。これは変わらない。みんなが居てくれたから、俺は今生きてるんだしな。」
篤史が照れるように口にするその姿は、やっぱり同性の僕から見ても清々しい程に格好良くて、
「やっぱりチートだよ・・・。」
僕は聞こえない程の声で長く伸びた影に向かってこぼす。
「ん?なんか言ったか?」
「ううん、それよりさ。篤史は変わるコトと変わらないコトどっちがいいと思う?」
僕は全く脈絡のない問いかけを篤史に投げた。心の中でいじわるだと呟きながら。すると、篤史は
「ん~、そりゃ変わる方がいいんじゃね?」
深く考えた様子もなく応える。
「なんで?」
「だってさ、変わるってことは新しいものが見えるってことだろ?それってワクワクするじゃん。変わらないと成長しない。大事なコトだぜ?」
やっぱり篤史はチートキャラだよ。僕は心で毒づいた。
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