この間のお話の感想に
「ライグさんとミサキのお話が気になるっ!」
というコメントをいただいたので・・・
それじゃちょっと書いてみるかー♪って感じで書いてみます!
タイトルは・・・
『マキナ・ギークと無口な子猫』
マキナ・ギーク・・・マキナはラテン語でマシン、ギークは(GEEK)ってアメリカでのスラングの一つでオタクって意味です。特にIT技術とかメカなんかで使われる言葉です。
私が参加させてもらってる攻防戦パーティを題材に、妄想を暴走させて、今回はパーティが発足するまでのお話を。
それでは シーン1・『出会い』はじまりまーす♪
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『マキナ・ギークと無口な子猫』
シーン1 出会い
鋼鉄製のパーツで構成された2本のアームを振り回し、目の前に群がる魔物を駆逐していく。しかし本来、掘削や建築用に開発された機体で生物しかも魔物を討伐するのはハッキリ言ってウルトラCに近い。振り回すアームは空を切り、無駄にエネルギーゲージだけが減っていく。
「くっそ・・・チョコチョコチョコチョコ・・・おらぁ!・・・なああああ!当たんねぇぇぇぇ!」
普段から仲間とつるむのが苦手な男が珍しくフリーパーティ、俗に言う野良パーティに参加して魔物討伐に明け暮れていた。エネルギーゲージが半分近くまで減ったくせに討伐数はからっきしな男は自分の不器用さに憤慨した。
「ちょっとお兄さん、邪魔。」
「あ?」
幼さの残る声色で抑揚のない一本調子なセリフ。しかも言ってる内容が自分に対しての文句?邪魔?男はこめかみをひくつかせ、声の方を思いっきり睨みつける。すると、そこには黒髪のロングを一摘みずつ左右でサイドテールに結う召使いスタイル、大きなねこみみのカチューシャをつけた少女が立っていた。装備は・・・いや、装備なんてなかった。今流行のミニ浴衣、黒地に大きなひまわりの模様が入ったこの夏にぴったりの可愛いデザイン。そして、起伏に乏しい胸元にキラリと光るブリーダーブローチ。
「なっ・・・なんだその恰好・・・って、ここはお子様の遊び場じゃねぇんだ!」
「・・・フン。」
男は声を張り上げて、失礼なセリフを浴びせた場違いな少女を怒鳴る。しかし、少女は横目でチラリと見ただけで気にも留めない感じだった。
「こ、こ、この・・・フ、フンってな、なんだよ・・・。」
沸々を湧き起こる怒りを理性で抑えるが、自然と操縦桿を握る手が震える。しかし、次の瞬間その怒りはすべて昇華してしまう。
「ほら、デス、おやつの時間だよ。」
「うぅ・・・余はまだ眠いのじゃあ。まぁしかし、少し小腹が空いていたところじゃしな。ミサキ、これ全部喰ろうても構わんのよな?」
「うん、へっぽこ冒険者だけだし。」
「うむ。なら・・・いただきます・・・じゃな♪」
次の瞬間、少女の懐から現れたのは全身を深い紺色のフードで覆われた幼女。両手にはその幼い躯体と同じ大きさ程の鎌が握られていた。その小さな少女は明らかに人とか魔物とかいう次元の生き物ではないと男は本能ながらに理解した。あまりにも静かな殺気。それは本当に静かすぎて殺気にすら感じないかもしれない。しかし、冒険者であればそれが殺気であるとすぐにわかる。なぜなら、少しでも気を抜けば、自身の身体が細切れベーコンのようになってしまう錯覚しか見えないからだ。
「あれは・・・デス・・・死・・・神か。しかし、見たことない種類だな。てか、このガキ何モンなんだ・・・。」
その一言を言い終わる頃には、あれだけ手こずった魔物が綺麗サッパリ消えてなくなっていた。そして、一仕事終えた死神は真っ白なお腹をさすりながら、少女の元へ戻ってくる。
「ふぅ・・・まずまずじゃったな。やはり獣魔の魂は本能的な殺意のせいで味が落ちるわ。やっぱり人間の・・・。」
「・・・・・・デス?」
「な、なんでもないぞ?何も言っておらんぞ?人間の魂なんぞ特に若い純粋な魂は爽やかな風味とあの喉越しが堪らんとか一切思ってないぞ?」
(あぁ・・・思いっきり思ってるな。てか、魂って味あんのか)
猫耳少女に睨まれた死神はしどろもどろに言い訳をしていた。その姿は傍から見ていて少しだけ微笑ましかった。
「では余はもうひと眠りするかの。ミサキよ、もうお腹いっぱいじゃからな。次は余ではなく、シロかウサギか・・・あぁ、たまにはあの火竜っ子でも呼んでやれ。あやつ最近出番が無いとブツブツ文句言っておったぞ?」
「うん。わかった。おやすみ。」
「うむ。おやすみなのじゃ」
死神は少女と一言二言会話を交わすと、煙とともに姿を消した。
「なんだ・・・使役してるのは死神だけじゃないのか?何モンなんだ。あのミサキってやつ・・・。」
男は今目の前で繰り広げられた一瞬をただ呆然と傍観しているしかなかった。一瞬だったからというのもあるが、あの不思議な少女とその取り巻きそのものの存在がそうさせていた。
「残りは、ひぃふぅみぃよ・・・6匹・・・。シロ?うん・・・ミニーも?そう。ん、わかった。それじゃサラおいで。」
そのときだった。少女の頭上から何かが迫ってくるのが見えた。ソレは鳥、それも翼を広げればゆうに2メートルを軽々と超えそうな程の怪鳥。
「チッ、間に合えよっ・・・!」
それに気付いた男は操縦桿を思いっきり前に倒し、目の前の少女に向かって走り出す。勢いよく飛び出したロボットに、少女はビクンと肩を震わせ振り返る。
「上だっ!頭下げとけっ!」
「え・・・。」
いきなりの出来事に少女は目を丸くしながらも、言われたとおりその場にしゃがみこむ。ロボは勢いよく駆け、少女の頭上に鋼鉄のアームを突き伸ばす。
「当たれえぇぇぇ!」
少女に向かって急降下する怪鳥が頭上あと数十センチのところで、鈍い衝突音と共に軌道を大きく変えさせられる。直角に軌道を変えた怪鳥はそのまま吹き飛び、数メートル先の巨木に叩きつけられた。と、同時に少女の懐から炎を纏ったキワドイ衣装の妖精が現れ、
「てンめぇっ!自分のマスターに何しやがるっ!溶かしつくしてやるっ!」
言葉遣いとは裏腹に幼い少しハスキーな声でそう叫ぶと、次の瞬間巨木に叩きつけられたはずの怪鳥は、もはや原形を留めることなく消炭と成り果てていた。
「はぁはぁ・・・はっ!ダンナっ!・・・大丈夫そうだね。今日の自分はちょっと熱いッスよ・・・残り全部自分が片付けるんでっ。いっくよー!レッツ・だんしーんぐ♪」
妖精は腕まくりするような仕草をすると、そのまま物凄いスピードで魔物の群れに飛び込んでいった。
男はロボから降り、座り込む少女の元へ歩み寄る。
「おい、大丈夫か?」
「・・・・・・。」
「おい、なんとか言・・」
「グス・・・。」
「え・・・・。」
「おい、どこか痛いトコでもあんのか?ホラ、手につかまれ。」
男が手を差し伸べたとき
「っちょ・・・。うわっ!」
手を掴んだ瞬間少女は思いっきりその手を引き、その勢いで立ち上がるとそのまま男に抱きついた。首に手を回し、小さな顔を耳元に寄せると、
「痛いトコ・・・胸が痛い・・・お兄さんからクリティカルヒット貰った・・・。私はミサキ・・・お兄さん・・・名前?」
囁くような祖の声はやはり抑揚の無い一本調子だったが、それが逆に艶かしく、男の脊髄を走りぬけた。
「ラ、ライグだ・・・って、お、おい・・・な、な、な、なんなんだあああああ!」
と、そこへ突き刺さるようなハスキーボイスが割り込んで
「テ、テ、テ、てンめぇぇぇ!ウチのだんなに変なコトすんじゃねぇぇぇ!溶かしつくして・・・」
「ちょ、ちょ、ちょおおおおお!ま、ま、ま、まてええぇぇ!」
こうしてバオバブの森で2人は運命の出会いを遂げた。
to be continue
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