さてさて、DEM登場からどんな風に展開していくか
書いている私自身も楽しみですw
でわでわ早速。
今回もお時間のゆるす限りどうぞごゆるりと・・・。
DEM・・・神と呼ばれた第4の種族に出会い、ベリアルはエミルに
マーシャを守れと告げられる。
エミルのココロは次第にみだれ始めた
第7話『 対峙 』 はじまります
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第7話『対峙』
翌朝、エミルはいつもよりも随分早く目を覚ます。昨日のベリアルのセリフが原因だ。顔を洗い制服に袖を通すと、ギルド評議会事務局兼マーシャ宅を目指す。しばらく歩きマーシャの自宅に到着した。エミルは玄関のチャイムを押すと中からいつも聞く聞き慣れた声が聞こえた。割と勢いよく開いた扉から、髪を結っていないマーシャがひょこんと顔を出す。
「オッス。」
「はぁい・・・って、エミル?どうしたの?こんなに早く。何かあった?」
思いもよらない来客者にマーシャは驚きを隠せないといった感じで思わず玄関から飛び出す。
「ん、ああちょっとあってな。って、マーシャあのな?なんていうかちょっとその恰好は流石に幼馴染の俺でも目のやり場に困るっつうか・・・。」
エミルは気まずそうに顔を背け呟く。
「ん?」
マーシャは不思議そうに自分の身体へ視線を落とした瞬間、
「あ・・・あ、あの、これはちょうど着替えようとしてて・・・洗面所に・・・いつもはこんな恰好でウロウロしてな・・・。で、でもねっ、このキャミもパンツも今日おろした新しいので、昨日アップで可愛いなって買ったやつだからダイジョウブ・・・」
みるみる顔を赤らめ、あからさまに言動があやしくなっていく。
「あぁ、わかった、わかったからとりあえず中に入れ。ついでに俺も中に入れてくれ。」
「そ、そうだよね、うん、着替えてくるっ。エ、エミルも中に入って。あ、一緒に朝ごはん食べよ?ね?そ、それじゃ・・・」
マーシャはいそいそと中に入ると、トトトと胸元を隠して自分の部屋へ駆けていった。
「ったく、アイツのアレは天然なのかおっちょこちょいなのか。ハァ・・・。」
リズムよく揺れる全く無駄のないマーシャの流線を眺めながら鼻の頭を人差し指で掻き呟くと
「そういう危なっかしいトコがあるから、エミル坊みたいなお婿さんが必要なのよ。」
奥のリビングから見るからに上品なギルド評議会会長でマーシャの祖母であるルーランが出てきた。
「っ!ちょ、何言ってるンすかルーランさんっ。あ、おはようっす。」
「ハイ、おはよう。さ、アナタもこっちに来て朝食の準備を手伝っておくれ。働かざる者・・・。」
ニコニコしながら人差し指をエミルの方へピッと立て
「食うべからず。っすよね?」
「そうそう。わかってるじゃないか♪」
ウィンクを一つ飛ばす。エミルはルーランの後についてリビングに入り殆ど終わっていた朝食の準備を完了させ、湯気の登るマグカップを3人が座る場所へ並べ自身も椅子に腰かける。すぐにマーシャも着替えを終え、ほんの少し気まずそうな面持ちで自分の席へつく。懐かしい3人の朝食。エミルが記憶を失ってから暫くの間こんな感じの生活があったことを思い出す。ここ数年は一緒に朝食を摂ることもなく、休みの日だけはマーシャが朝食セットと呼んでいるバスケットを持ってエミルの自宅へやってくる。静かに朝食が進んでいき、マーシャが目玉焼きにナイフを入れながら当然の言葉を口にした。
「ねぇ、エミル?」
「ん?」
「今日なんでこんなに早くウチに来たの?」
エミルはポーカーフェイスを貫き、マグカップを持ち上げ
「別に?マーシャの顔が早く見たかっただけさ。」
カップに残った僅かなポタージュを飲み込む。
「え・・・あ・・・あの・・・そう、ありがとう・・・。」
マーシャは俯いて左手がカチャカチャと忙しく動く。
「お、おい。マーシャ、タマゴサンドでも作るのか?」
「え?ああああああああ!私の目玉焼きぃ。」
気が付けば、マーシャの目玉焼きは黄身も白身もものの見事に微塵切りになっていた。自分が起こした惨劇にがっくり肩を落としたマーシャに
「ったく、しょうがねぇなぁ。」
「あ・・・。」
エミルは自分の皿とマーシャの皿を取り換えると、微塵切りな卵ペーストをトーストに載せ半分に折り曲げかぶり付く。
「エミル坊はホントいいお婿さんになるよ。フフフ。」
ルーランはサラダのプチトマトを口に放り込む。マーシャは俯いたまま消え入るような小さな声で
「・・・・・・ありがとう。」
囁き
「おう。」
エミルは一言応えた。こうして、何事も無くはない朝食を終え二人は学園に登校するため玄関に向かう。
「エミル坊。」
不意にいつもより僅かにトーンを下げ囁くように呼び止められた。
「ん?」
「アンタ、何か変な噂聞いたんじゃないよね?」
普段温厚で温かい瞳のルーランがこの瞬間だけは違っていた。エミルは少しだけ考え
「噂?俺はただ朝飯食いに来ただけだよ。それと、いつまでもそのエミル坊ってのやめてくれ。俺もう16なんだぜ?」
何も知らないという風を貫いた。それを聞いたルーランは小さく笑い、
「そうさねぇ。アンタが大事な人をちゃんと守れたなら、そのときはちゃんと名前で呼んであげるよ。それがあの子であってもそうじゃなくても・・・。」
「ルーランさん・・・。」
エミルはルーランの最後の言葉に違和感を感じたが、
「エミルー!早くしないと遅刻しちゃうよー?」
マーシャの声が玄関外から聞こえて
「ああ!今行く。・・・なんか含みのある言い方だけど、今日は何も聞かない。」
「そうかい?そんな事を感じられる歳になったのかい。なるほどなるほど。私も歳とるはずだよ。ほら、早く行ってやりな。あの子が待ってる。」
「お、おう。」
「約束しな。絶対無茶はしない。いいね?」
「・・・おうっ!それじゃ行ってく・・・きます。」
エミルは軽く頭を下げるとマーシャの待つ玄関へ駆けて行った。
学園に入り、教室に足を踏み入れたエミルは一瞬で雰囲気の違いに気づいた。教室後ろのエミルの席に人だかりができていたのだ。
「あ?・・・なんだ?」
エミルは不機嫌そうに自席に向かい、人だかりの中心が自分の席でないことに気づいた。それは隣の転校生の席だった。
「あ、エミル君おはよう。」
「エミル君、おっは♪」
「お、おう。おはよ・・・。」
クラスメイトの挨拶に返事を返していると、マーシャがトトトと駆け寄り、
「ティタ、おはよう。」
といつもの明るい表情で挨拶をする。ティタも笑顔で
「おはよう、マーシャ。昨日の約束・・・忘れていないよね?」
挨拶を交わす。
「うん、もちろんだよ。ん~、いつがいいかな?」
マーシャは人差し指を顎に当てて少し考えているとクラスメイトの一人が興味津々といった面持ちで
「なになに?なんの話?」
と食いついてきた。マーシャは笑顔で
「ん?えとね・・・ナイショ♪」
悪戯っぽく躱すと
「それじゃティタ、お昼休みにしよっか。」
と、提案してみる。ティタは嬉しそうに
「ええ、お昼休みということは、ランチに招待してくれるの?」
「うん、一緒にご飯食べながらでいいでしょ?」
「わかった。楽しみにしているわ。」
目を細めた。隣での黄色いやり取りを横目にエミルは昨日の事を思い出し、そして胸に湧き起こったざわつきの正体に悶々としていた。そんな事を考えていると午前の授業はあっという間に過ぎて昼休みになっていた。今日は朝からマーシャの家に押しかけたためきっとお弁当はないはずだ。今日からベリアルもいないし、マーシャはあのティタってヤツと約束していたみたいだったからと、購買でパンでも買おうかと席を立ったとき前方からいつもの声が聞こえた。
「エミル、お昼行こ?今日はお弁当がないから学食でいいかな?」
マーシャがごめんねというゼスチャーなのか両手を合わせて立っていた。
「そんなの俺が迷惑かけてるんだから、そんなことすんなよ。それよりマーシャ、お前約束してんじゃ・・・。」
そう言ったところでエミルはマーシャの後ろに隠れていない白い翼を見つけ、わかりやすく溜息をついてみた。
「はぁ・・・、なるほどそういうことか。」
「ちょっとぉ、なんで溜息なのよ。いいでしょ?転校してきてみんなと友達になりたいって、私とも友達になってくれたから紹介がてら・・・ね?」
マーシャの後ろに隠れる影は、マーシャの制服の上着の裾をキュッと握っていた。
「別に嫌だって言ってないだろ?行くなら早く行こうぜ。」
ぶっきらぼうにそれだけ言うと、エミルはすたすたを歩き始めた。
「うんっ!やった、ティタ行こ♪」
マーシャはティタの手を握って、エミルの後をついていった。食堂は案の定満席に近い状態だった。3人は、それぞれ思いのメニューを注文すると、テラス席を陣取る。食事を初めて少しした時、マーシャが口を開いた。
「エミル、この子がティタ。」
「知ってる。」
「んと、タイタニアで貴族で・・・。」
「知ってる。」
「怒ってる?」
「怒ってない。」
「・・・・・・。」
一瞬、間を開けて
「エミル、ティタのこと覚えてないの?」
「知らない。ってかそれが目的だったのか?」
あからさまに不機嫌を装うエミルにティタが、
「待ってエミルっ!マーシャもありがとう。いいの、今日はエミル君とお友達になりたいなって思ってマーシャに無理をお願いしたの。なのに私が黙っているのでは伝わらないものね。」
「・・・・・・。」
「私の名前はティタ。シエル家の長女です。この学校にはある人に出会うために来ました。」
ティタは丁寧に簡潔に自己紹介をする。
「そのある人っていうのが俺だっていうのか?」
エミルはティタの瞳を真っ直ぐに見つめて問う。ティタは見つめられた瞳をスッと下へ向け、
「わかりません。名前は同じですが、顔も面影も私の記憶にあるものとおな・・似ていますが、貴方は私を知らないと。だからわかりません。」
寂しそうに小さく呟く。エミルはまたも大きな溜息を吐くとフォークでプチトマトを突き刺し、ティタの口元へ差し出すと
「それならアンタがその幼馴染か友達かわっかんねぇけど、俺と同じエミルってヤツと出会えるように俺は協力すればいいのか?それとも、友達としてマーシャみたいに付き合えばいいのか?どっちにしろ俺は貴族のお嬢様の機嫌の取り方なんざ知らない。それでも・・・。」
「それで・・・も?」
エミルはフォークの先をクンとティタの口元へ更に近づけ、
「俺さトマトが嫌いでさ、だから俺の友達は俺の代わりに嫌いなトマトを食べてくれる。俺の友達の最低条件だな。」
ティタは差し出されたトマトとエミルを交互に見つめ、不安が入り混じった顔色は、銀のフォークで浄化されたかのように晴れていき、一言だけで応える。
「エミル・・・。はい。・・・・・・パク。」
頬をほんのり紅く染めて恥ずかしそうに。その一部始終を見ていたマーシャは、エミルの『あーん』が羨ましかったり、桜色に染まった綿雪のように白い頬に嫉妬してみたり、色んな感情が渦巻いたが、その中心にはティタと結んだ乙女同盟があり、その先にあるエミルの選択への不安が更に募っていた。けれど今は、
「ティタ、おめでと♪エミルもありがとう。」
「な、なんでマーシャが礼なんていうんだよ。別に頼まれた訳じゃないんだから。」
「うん、でもいいの♪だって、楽しく学園生活送りたいじゃん?」
こうして、エミル達のグループに一人の仲間が増えた。そしてこの瞬間だけは、エミルの心のざわつきを忘れていた。
けれど・・・・・・。
to be continue
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