揺れるトーコの前に現れたマーシャ。向けられる敵意。
キサラギから聞かされるベリアルの行動。
生まれて初めての展開に戸惑うトーコ。
ダウンタウンの一室で恋の略奪作戦会議が始まろうとしていた。
第11話始まります。
------↓↓本文↓↓------
「そういえばね、前から気になってたことがあるんだけど。」
部屋に帰って、夕食の準備を終えテーブルに料理を並べているときだった。キサラギは私と一緒にテーブルにお皿を並べてくれている。
「ん?なに?」
キサラギがパタパタとこちらに寄ってくる。普段は結構キツイ物言いで勝気なところが多い彼女のふとした仕草や言葉にとても女の子を感じることがある。でも気になっていたことはソレじゃなく。
「キサラギはその・・・食事ってしないの?」
そう、彼女が私の前に現れて一度も一緒に食事をしたことがない。食事のときは姿を消しているか、私の傍で話し相手になっているかどっちかなのだ。
「ん?あぁ、アタシたち守護魔は基本的にマスターの魔力が力の源だからね。何かを食べるって文化はないわ。でも・・・。」
「でも?」
「トーコって、何でも美味しそうに食べるから多少の興味はある・・・かな。」
キサラギはほんの少し頬を赤らめて言う。かわいいな・・・。
「じゃあ、別に食べても問題ないんだよね?」
「そうね、魔力のないマスターと契約した場合は、魔力の供給がないから魔力物を食べることで補うんだし。」
「魔力物?」
「そ、魔力物。」
「ってなに?」
「そうね、分かりやすくいうと・・・この辺りならエルダーワームとかペペンとか・・・。」
「ちょっ!それって魔物じゃないの!」
「そうよ?でも、魔力を持ったやつじゃないとだめだからね。でも美味しくないのよねぇ。」
キサラギの言葉は私の想像を遥かに超えていて、魔力が足りなければ魔法使う魔物を食べて補給?そんな単純な事なのだろうか、私はにわかには信じられない。
「えっと、えっと、そんなの食べられるの?エルダーワームっておっきいよ?」
「あはははは、ちがうちがう♪私が食べるのは魔法器官。魔法を使う魔物はね、身体の中に魔力を作り出す器官があるの。アタシ達はソレを食べるのよ。でもこれがムチャクチャ不味くってさぁ。」
「ひぃ~。それ話聞いただけで食欲なくなっちゃうよぅ。でも、それなら食べ物も食べられるみたいだし、これからは私と一緒に食事しようよ。一人で食べるより二人で食べた方がずっと美味しいもん。」
私の提案にキサラギは、ソッポを向いて
「な、なによトーコ。そんなにアタシと食事したいの?し、しょうがないわね。そんなに言うなら食べてあげてもいいけど・・・。」
と口を尖らせるが、その表情は明らかに・・・。
「じゃ決まり。普通のお皿は大きすぎるから・・・あ、この深めのソーサーをお皿にしてティースプーンとフルーツフォークがちょうどいいね。」
そう言って私の向かいにキサラギ用の食器を並べる。そして、
「ウチのマスターお手製のモーモーテールの煮込み。キサラギきっとホッペ落ちちゃうよ♪」
小さめにカットして盛り付ける。
「わぁ♪・・・・・・んっんんっ。ふ、ふーん、お、美味しそうね。ア、アタシの口に合うといいけど。」
もう、素直になればいいのに。
「はいはい、それじゃ食べよう?」
「「 いただきまぁす♪ 」」
小さくほぐしたお肉をキサラギは小さな口へ運ぶ。
「(☆o☆)」
「どう?」
「う、うん。まぁまぁね。これなら普段から一緒に食べてあげてもいいわ。」
「よかった♪」
あんな風に言ってはいるものの、キサラギの目が終始星のようにキラキラしていたのは、彼女のプライドのためにも内緒にしておこうと思う。彼女の一口一口を味わって食べている姿を見ていると私も食事が一段と美味しくなる。特に会話はなかったが楽しい雰囲気の食事は続く。そんなときだキサラギはおもむろにフォークを置き、口元をナプキンで軽く押さえ切り出した。
「それよりトーコ、作戦考えないとね。」
「ん?」
「エミルをあのマーシャとかいう風船みたいな胸のうらやm・・下品なスタイルの女から奪う作戦!」
「ぶぶっ!げ、下品って。それに今羨ましいとか・・・」
「言ってないっ!刺すよ?」
「ひぅっ」
置いたフルーツフォークを再度手に取り、私の目に向ける。
「あの手の女は手強いと相場が決まってるのよねぇ。トーコ可愛いけど、インパクトがないしなぁ。スタイルもいいけど風船みたいなインパクトが・・・。」
「もうっ、人をそんな影薄い子みたいに言わないでよ。そ、そりゃ私はマーシャさんみたいに胸大きくないし・・・あんな風に甘えたりとかきっとできないけど・・・。」
私はフォークで煮込みをツンツンと突きながら呟く。
「ホラ、そこ。そうやってフェードアウトするのがよくないの。でもほら、エミルだって大きい胸が好きとは限らないからね。知らないんでしょ?好みとかさ。」
「う、うん。そういう話ってした事ないし。でも、男の人って胸が大きい方がいいんじゃないの?」
「それは違うわっ!!!!!!」 バンッ
キサラギは両手でテーブルを叩き立ち上がる。
「ひっ!」
「小さいのだって需要はあるわっ!というか小さいって事はステータスなのよっ!」
ダウンタウンに夜の帳が下りていく。
・・・To be continue
コメント