作戦会議が始まった。
私、エミル君のことが好きなのかな。
誰かを好きになるって、どういうもの?
どれが好きで、何が好きで、どうしたら好きなの?
初めての展開にトーコは・・・。
第12話はじまります。
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「需要とか何のステータスなのよ!ちょ、ちょっと落ち着いて!キサラギっ!」
私は興奮するキサラギの肩に手を置いて押さえる。
「はぁはぁはぁ・・・。ゴメン、ちょっと力が入っちゃったわ。」
「ちょっと?!」
「なに?」
「いえ・・・。」
キサラギは小さな肩を揺らすほどだったが、深呼吸をするとその揺れは静かに治まりいつものキサラギに戻る。小さく咳払いをすると、気を取り直して話が滑り出す。
「コホン、ちょっと脱線しちゃったけど元に戻すわ。まずは、エミルをトーコに振り向かせないといけないわね。アタシ的にはあの坊やかなりのニブチンと見た。まったく、ドコのボンボンなのよ。」
キサラギの話に私はずっと違和感、いやそれが違和感かどうかすらハッキリしないが何かが引っかかった。
「ねぇ、キサラギ。」
「なによ?」
「私、エミル君のことが好きになってる前提で話が進んでるんだけど・・・。」
「そうよ?ちがうの?」
「えっ・・・そうよって、私エミル君のこと好きなのかな。」
「はぁ?何言ってんのよ。あんなに意識してるくせに。それともなに?あのベリアルって坊やの方がいいの?」
「え・・・。ベリアル君は・・・その・・・で、でもね、わかんないの私。誰かを好きになったことないからこれが好きなのかわかんないの。この気持ちが好きっていうのなら、エミル君もベリアル君も好きかもしれない。でも、何か違うような気もするの。」
「まぁ、誰かを好きになったことないっていうなら、違うって思うその気持ちも基準がないんだからアテになんてならないわ。それにねトーコ、好きって気持ちはスグに理解できる感情じゃないわ。」
キサラギの言葉が私にはよく分からない。
「どういうこと?」
「ん~、好きって気持ちはね、人それぞれでカタチが違うの。それに好きって感じるきっかけだって違うわ。その人のココロが好きになったり、その人・・・まぁ外見が好きになったり。その好きを表現する方法だって尽くす事で表す人や憎むことで表す人もいる。だから、好きって感情にルールも形式も存在しない。だから自分が気付くことすらなかなかできないわ。」
「うーん・・・。好きなのに憎む・・・わかんないよぉ。」
「でもね、コレだけは言うよ?好きって気持ちに気付くためには行動しなきゃダメ。部屋に閉じこもって、自分の殻に閉じこもってちゃ、気付けるものも気付けない。だからトーコは今動くべき。エミルの事が好きとかベリアルが好きとかまずは行動。いい?トーコは可愛いんだから、エミルがトーコのこと好きになってあの風船女から奪ってもトーコが違うと思えばフレばいいの。ベリアルが言い寄ってきても告白されてもトーコがその気にならなければフッちゃえばいいの。」
「ちょ、そんなヒドイこと・・・」
「おバカっ!好きでもない相手と一緒にいたって、お互い幸せになれないよ!」
「うぅ・・・。はい・・・。」
キサラギの話は私が今まで考えたこともない世界の話だったので、よく分からないというのが正直なところではあったが、でも新鮮で好きという感情に少し興味が湧いたのも事実だったりするわけで。
「それに、今回のコレだけが契約範囲じゃないわ。トーコが誰かから幸せに愛を奪うことができるまで契約は契約。だから安心して、そうね・・・ブーストを背負った気分でいればいいわ☆」
「幸せに奪うって言葉おかしい!ブーストって・・・なんか違わない?」
「違わないわよ♪物凄いスピードでガンガン突き進んでいくんだから!」
「ひゃうっ。なんかおっかないよぅ。」
「何言ってんの、奪い取った愛は格別なんだから♪それじゃこのままいくわよ。そうね、まずはエミルにアピールするところからかな。最初が肝心だからね、そうねぇ・・・。」
キサラギの瞳がひときわ輝きを放つ。あの瞳・・・まだ一緒にいて期間は短いけど、知ってる・・・私、あの瞳知ってる。アレは危険信号だ。トーコの脳内で警鐘が鳴らされる。ここで彼女を止めないときっと大変、でも今止めるともっと危険。どうしよう、トーコはこれから起こるであろう出来事が穏便に平凡に過ぎていくことを心の中で祈るしかできなかった。
「・・・で、次にチャンスが来たらトーコは・・・って、聞いてる?ちょっとトーコ!」
「ひゃい!」
「アタシの話聞いてる?アンタがやることなんだからちゃんと聞いてないと知らないよっ!」
「みゅぅ~・・・うん、聞いてます。」
キサラギの愛の略奪作戦会議が終わる頃、ダウンタウンの階段に朝日が差し込みはじめて。
「さぁ、トーコこれからが本番よ、思い切っていきなさいっ!」
「う、うん・・・わかった。わかったんだけど・・・キサラギ・・・」
「なによ?」
「寝かせてぇ・・・」
「はぁ、これだからトーコは・・・緊張感がないっていうかなんというか。いいわ、私も眠りたいし・・・って、アンタ仕事はいいの?」
「いいのぉ~、今日お休みだから・・・zzz」
「あぁ、もう寝るならベッド!ほら!」
放っておけばそのまま床で寝てしまいそうなトーコを無理やり立たせて寝室へ行かせと、そのままベッドへなだれこむ。キサラギも巻き込まれるようにトーコとベッドへ沈む。
「ぎゃふ>< ちょっと!トーコ!ちょ・・・ってもう寝ちゃってる。ったく、いいわ今日だけよ一緒に寝てあげるのなんて。もう、窮屈なんだから一緒になんてもう寝てあげないんだから・・・一緒になんて・・・バカ」
トーコの胸に寄り添うように顔を埋める。
「トーコ・・・やっぱり足りないわ・・・。」
キサラギから出るはずの溜息はソレが出る前に寝息に変わっていた。
・・・To be continue
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