キサラギから徹夜で指南された異性へのアピール方法。
でも眠かったから殆ど覚えてないのが事実。
けれどあの悪魔もとい守護魔に事実を報告できるほど私は勇敢ではなくて。
さてさてどうなりますことやら・・・
第13話はじまります。
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結局、月1回の貴重な休みはベッドの中で消えてしまった。色んなことがありすぎて私の頭は少々オーバーワーク気味だったので、結果としてはリセットする意味でもこの休日の使い方は正解だったのかもしれない。気持ちを切り替えてまた新しい1日を迎える。私はベッドからもそもそと抜け出すとクローゼットを開けて着替えを始める。しかし、開けたクローゼットの中に見慣れないものが。
「ん?この服・・・こんなの持ってたっけ?」
そこにあったのは赤と黒のチェックのスカートとシャツ、それにソックスも。
「メ・・・モ・・・?」
服と一緒に小さなメモが置かれていた。
『今日はこの服で過ごすこと。これはアタシからの餞別よ。』
「キサラギ?ふーん、結構かわいい服だぁ♪せっかくだし、お言葉に甘えて・・・。」
私はパジャマを脱ぎキサラギからの餞別らしい服に袖を通す。そのとき机の上のウィスモバイルが鳴り響き、私は端末を手に取り着信画面を確認する。そこに表示されていたのは
「マスター?何だろう・・・。もしもし?おはようございます。」
『トーコちゃん?おはよう、ごめんねぇ朝早くに。実はさぁウチのチビ介が熱出しちゃって、カミさん昨日から実家に帰っちゃってて面倒見れるヤツいないんだよ。だから今日はちょっと店閉めるからさ、トーコちゃん今日もお休みってことで。』
「はぁ・・・大丈夫なんですか?お子さんの看病とか私手伝いに行きましょうか?」
『いやいやいや、そんなの申し訳ないよ!カミさんもこれから戻るって言ってるし、トーコちゃんいつも頑張ってくれてるからさ、ご褒美くらいに思ってゆっくり休んで?それじゃ悪いねよろしく!』
マスターの電話を切ると、端末をベッドに落として私も一緒にベッドに腰掛ける。一瞬で私の今日の予定が白紙になった瞬間、まくし立てるようなマスターの電話で頭の中が真っ白になった瞬間。腰掛けた身体をそのままベッドへ沈ませて私は天井を見つめる。すると、部屋の入り口からキサラギが顔を覗かせる。
「トーコ?どしたの?なんかピーピー鳴ってたみたいだけど。」
「んー?今日お仕事お休みなんだってー。マスターのトコのお子さんが熱出したーって、店閉めるから今日お休みなんだって。」
「そっか、よかったじゃん。いつも働き過ぎくらい働いてるんだから、今日くらいはゆっくりすればー?あ、そーだトーコ、あれ作ってよ。」
「あれ?」
「あの白いやつ!甘くて暖かいやつ!」
「あぁ、ホットミルク?うん、いいよ。朝ごはんにしよっか。それじゃ着替えちゃうからお皿とか出して?」
「ほいほい。お、それ着るんだ?ふっふーん♪」
キサラギは意味ありげな含み笑いを浮かべてダイニングへ。それから数分後・・・
「トーコ~?まっだ着替えられないのぉ?」
「き・・・着替えたけど、これ・・・」
私はダイニングの入り口から顔だけを出す。
「なによ、着替えてるんならさっさと来なさいよっ。ほっとみるく作ってくれるんでしょ?」
キサラギは腕を組んで私を睨む。私はもじもじとその場へ出ることに躊躇する。そんな姿にキサラギは我慢できなくなったのか
「こらっ!ちゃっちゃと出てくる!」
「でも・・・」
「でもじゃないっ!」
「ひぅっ!」
私はおずおずと入り口に立つ。
「なによ、可愛いじゃない。よく似合ってるわよ♪トーコってタイタニアには珍しい黒髪だからその色で正解だったわね。」
入り口に立ったトーコは、胸元に大き目のリボンがついた赤と黒のコンビのブラウスに同じ色のチェックのスカート、左右で色と長さがちがうボーダーのオーバーニーソックスに包まれていた。
「これ、ちょっとスカート短くないですか?ソックスの長さも左右違うし・・・」
「何言ってんのよ、だからいいんじゃないの。」
「でも・・・なんかスースーするよぅ。それに・・・」
私はスカートの裾を手で押さえながらテーブルに近づく。
「バッカねぇ、そんなにスカート気にしてちゃ男に『私のスカート短いからみえちゃうかもよ』ってアピールしてるようなもんじゃん。そーゆーのは気にせず堂々としてれば誰も気付かないよ。・・・ウソダケド」
「そーかなぁ・・・?ちょっと屈んだら見えちゃわないかなぁ・・・」
「はぁ・・・この子はまったく・・・。イイ?そのチラリズムがいいんじゃないの!それでこそ女の魅力が磨かれるんだよ?」
「ほんとに?」
「ええ、ホントよ。・・・ハンブンウソダケド」
「わかった、堂々としてれば気にならないんだね。わかった・・・。」
「そうそう♪意外にその丈だって見えないもんだよ!・・・ウソダケド」
「わかった、それじゃ朝食にしよっか。」
私はそのままキッチンへ向かい朝食の準備に取り掛かった。食後のコーヒーをキサラギはホットミルクを飲みながら今日の予定を話する。せっかくの休みで昨日一日だらだらとベッドで過ごしたこともあって今日はアップタウンへ出掛けることになった。キサラギが用意してくれたあるチケットのためだ。
「トーコ黒髪のストレートって清楚な感じだけど、ちょっと気分変えてみるわよ。この紹介状もっていけばバッチリかわいくなれるから。」
そう言って渡された一枚のチケットがコレだった。ソコには見たこともない文字で何か書かれていたが、キサラギに聞いても内容は教えてくれず、行けばわかるの一点張りなのだ。朝食の後片付けを終えると私とキサラギはアップタウンのニーベルングのヘアサロンへ向かうことにした。
アップタウンに入ると、やはりアクロニア一の貿易都市だけあってかなりの人で賑わっていた。その中でやはりといっていいくらいトーコは目立っていた。すれ違う人(特に男性)がみんな立ち止まってトーコの姿を見ていく。中には口笛を吹く人まで現れる始末。
『やっぱり、恥ずかしいよ・・・。』
スカートの裾に手をやってキサラギとコンタクトする。
『何いってんのよ、トーコが可愛いからみんな見てるんじゃんか。ほらシャキッとして』
『え~ん。』
歩くたびスカートの裾がフワフワとするなんとも心もとない状況で私たちはヘアサロンに到着した。店内に入ると店長のニーベルングが出迎えてくれ、私はキサラギからもらった紹介状を手渡す。すると、彼の瞳が一瞬にして燃え上がるように見えた。
「あら~、これって地獄の紹介状じゃない!アナタこれどこで手に入れたか知らないけどイイセンスしてるわ♪これでもっともっとキレイになっちゃおうか?そうねぇ、アナタの髪って珍しい黒髪なのね、それならそれを生かさないと・・・。それじゃいくわよ~!」
彼のシザーが走り出して数時間後、黒髪のストレートロングの少女は緩やかなウェーブを両端で束ね紅いリボンで留めたエアリーなツインテール。大人しく清楚なイメージから一転、着ている服装とも相まって少し小悪魔的な雰囲気を持った少女に変身していた。トーコは鏡の前でその変貌ぶりに自身驚いていた。
「これが・・・私?」
「うんうん、いいわ~。やっぱり想像通り♪キレイになったよ。またいつでも来て下さいね。」
私は何だかフワフワした気持ちでサロンを出る。髪形が変わっただけなのに今見えている世界までも変わった気分。
『さて、それじゃ作戦実行しますか。』
フワフワ気分を吹き飛ばす、恐ろしい囁き。
『え?作戦実行?』
『そーよ?せっかくこんなにキレイになったんだから、このままエミルにアピールするよっ!』
いつもなら「ええええええええ?!」と言うところだが、今日は違った。誰かに見せたい、見てもらいたい、そんな気分になっているこれが女の子のフシギだ。
『そだね、ちょっとだけ見て欲しいかも。でもエミル君ドコかなぁ』
『そんなの歩いてれば見つかるって。さー行くよー!』
こうして、アピール大作戦(ハプニング付き)がスタートした。
・・・To be continue
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