ニーベルングのサロンで髪型を変え、キサラギからのプレゼントの服に身を包み
少し世界が変わり始めたトーコ。
自分が少し変わった気がして、ちょっぴり勇気が生まれた気がして。
変わった私を見て欲しい。
しかし・・・
第14話はじまります。
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私とキサラギはアップタウンをウィンドウショッピングがてらブラブラ歩く。最初は抵抗があったこの服装もいつの間にか気にならなくなった。時折送られる男性からの視線もさほど気にならなくなり、普段と同様に露店を見て周り姿は見えないもののキサラギとひとときの休日を満喫する。お昼が近づきキサラギとランチを食べようとダウンタウンへ向かう途中、南階段で一人の少女の姿を見つけた。向こうも私たちに気づいたらしく、ストローの刺さった紙コップを右手にこちらへ向かって歩いてくる。
「こんにちは。」
「こ、こんにちは。マーシャさん。」
その少女とはマーシャだった。先日の出来事がセリフが脳裏をよぎる。マーシャは両手を組んで、まるで値踏みでもするかのように私を頭の先から足元まで見ると、
「ふうん、普段と全然イメージが違うから最初わからなかったわ。上手く化けたものね、それでエミルを誘惑でもするの?」
その視線は鋭く、敵意は感じられないものの威嚇という意味では十分だった。
「そ、そんなことないです。ちょっと気分を変えたかっただけで・・・。」
「へぇ、それでそんなミニ穿いちゃうんだ?どう見ても思いっきり気合入っちゃってるように見えるけど?」
「そ、そんな・・・」
やっぱりこの人怖い。私は本能的に防御の体制に入る。
「その服、アンタには似合わないんじゃない?サイズが大きすぎるのかしら?胸の辺りが・・・あぁ、ごめんごめん♪そういうわけじゃないのね。」
「なっ・・・」
エミル君からマーシャさんのことは色々聞かされていたが、少しわがままだけど優しくて面倒見がいいなんてそんな部分が今の彼女からは微塵も感じられない。私は初めてマーシャに敵意を抱いた瞬間だった。
『ちょっとぉ、いいように言われてんじゃないわよトーコ!』
そのとき、脳内にキサラギの言葉が駆け込んでくる。
『わかってるんだけど』
『言い返してやんなよ!』
わかっている、わかっているがこういう状況を体験したことがない私にそれは少しレベルが足りない。
「まぁ?見た目もガキっぽいアナタはこういう子供っぽいチャラけた服がお似合いかもね。頭悪そうに見える・・・あ、そのままか、フフフフ。」
『言い返してやんな!私の言葉をそのまま言うんだよ!』
『え?え?』
『いくよ!”そうよね、こういう可愛い女の子らしい服はアンタみたいな牛チチの女には似合おうったってムリがあるものね!”』
「え、あ、そ、そうですよね、こ、こういう可愛いデザインの服はマーシャさんみたいにむ、胸が大きすぎる人には似合わないかもしれませんね。」
『よしよし♪』
私の一言がマーシャのスイッチをオンにしてしまったようで、みるみる顔が赤くなり表情がこわばっていくのがわかった。マーシャの眼光が一段ときつくなり、
「なっ・・ま、まぁ私みたいに大人の女はそんな外見だけじゃなく内からでる魅力で十分だもの。それにエミルだって私みたいな女の子の方が好きだって言ってたし?」
『”内から出てるのは魅力じゃなくて性欲でしょ?そんないつ垂れるか分かんない牛チチにエミルがなびくハズがないわっ!”』
『えええええ!そんなこと言えないよう!』
『言えっ!』
『あううぅ・・・』
「あ、アレですよね、マーシャさんの出てるのって、その魅力じゃなくってその・・セイヨクですよ・・・ね?」
『もっと強くハッキリ言えっ!』
「ひゃい!それにっ!そんないつ垂れるか分かんないただ大きいだけの脂肪の塊なんてエミル君が好きなハズないっ!そんな栄養が全部胸に行っちゃてて脳の発達がイマイチなアナタなんかにそんな事言われる筋合いもないしっ!ハァハァ」
『エライッ!アタシ以上にヒドイ事言った!』
「な、な、な、っんもうガマンできないっ!なによこのガキ!エミルは私のものなんだから!この間だって映画のあとウチで夕飯食べてそれか・・・」
「夕飯食べてそれから清くお別れして寂しく一人寝たんでしょ!」
『ワォ☆』
「ぐっ・・・、な、なによ!アンタだって相手にされてないんでしょうが!アンタなんかエミルの趣味じゃないんだから絶対!」
「だって私はこれからだもん!それに私を好きになってくれるかどうかはエミル君が決めることでアナタが決めることじゃないでしょ!」
『あはー☆やるぅ♪』
マーシャは右手に持っていた紙コップを地面に叩きつけると、ダンッ!と落ちたコップを踏みつけて私を指差し
「アンタなんかに絶対エミルは渡さないんだからっ!私から奪うんなら覚悟しときなさいよ!」
『ほ~♪負けキャラのキメ台詞じゃんコレ♪』
マーシャはそう言うと、そのままアップタウンの喧騒へ消えていった。私はその姿が見えなくなるやいなやその場にへたり込む。
「はぁぁぁぁぁぁ。怖かったよう」
『やるじゃんトーコ。見直しちゃったわ。』
『こんなの初めてだったから、キサラギが言ってくれなかったらあんなに強く言えなかったよぉ。』
『いやいやトーコのほうが私より数倍ヒドイ事言ってたから。でもスッキリしたでしょ?この間も何か言われてたみたいだし。』
『スッキリじゃないよぅ、真っ白だもん~。』
『でもさ、トーコこれで宣戦布告しちゃったんだからこのまま突き進むんだよ♪』
『あぁ~、だよねぇ・・・。なんか大変そぅ。でも・・・』
私はその場から立ち上がってお尻をパンパンと払い、
『お昼ご飯食べにいこっ』
『はっ?全然脈絡ないんだけど!』
『だって、大声出したらお腹空いたんだもーん。それにこうなったらなるようにしかならないんだし。』
『うはー、トーコって結構イイ性格してるかもねぇ。あ・・・そっか、だからアタシ召喚されたのか。うんうん、トーコがんばるよ!絶対奪っちゃうよ!』
『うんうん、頼りにしてるんだから!』
二人は決意も新たに?至高の奪略愛を目指して固く結ばれた・・・のか?まぁ、何はともあれ二人はアップタウンを出ると、南平原のカフェでサンドイッチを買い、PT広場の隅でお日様の下ささやかなランチタイムが始まった。
・・・・・・この後ピンチが訪れるとも知らずに。
・・・To be continue
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