ざわつくココロ
エミルくんのこと?
ざわつくココロ
ベリアルくんのこと?
好きという気持ち
恋する気持ち
18話 はじまります。
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なんだろう。エミルくんもルルイエも何かを隠してる。私はそれが引っ掛かって上手く笑顔が作れない。百面相は止まったけど、俯いたままは変わらない。
「で、結局さー。」
またもルルイエが唐突に私に聞いてくる。
「な、なに?」
私は顔を上げてルルイエを見る。
「トーコはベリアルの事どう思ってるわけ?」
いきなりの直球だ。けれど、詰まらせる言葉も気持ちもはっきりない私は
「わかんない・・・。」
としか言えない。それを聞いたルルイエは、ふうんとまた空を見上げる。
「ったくさぁ、ベリアルは気にしすぎなんだよ。トーコが好きならもっと好きってアピールすればいいのに。」
私に視線を投げず遠くを見ながら呟く。私も同じように遠くに視線を投げる。
「でも、それは私困る・・・。」
「なんでよ?」
「だって、そんなに積極的に来られてもどうすればいいのかわかんないもの。」
私のセリフにルルイエが少し怪訝な顔をして
「なんで?自分の事スキって言ってくれるんだよ?普通うれしくない?嬉しいでしょ?もしかしてさー、トーコってコクられたことないの?」
「ない・・・。」
「えー!うそ!?ちょっとソレどーゆーこと!」
ルルイエはかなり驚いた表情で、私の両肩を掴む。
「ねー?ねー?どういうことよっ!もしかしてさ、まさかとか思うけどさ・・・さすがに誰かを好きになった事ってあるよね・・・?」
恐る恐る聞いてくるが、どんな聞き方をされようが結果は・・・返す言葉は同じなわけで。
「ない・・・とおも・・。」
最後まで言葉を放出する前に
「はああぁぁぁ?なんで?!なんで?!ちょっとトーコそれヤバイって!」
掴んだ両肩を前後にガクガク揺すりながら、鼓膜がビリビリと震えるくらいの声で叫ばれてしまった。そんなに驚くことなのだろうか、これって別にフツーの事じゃないのか。確かに興味が無いってことはなかったけれど、学生のときは勉強に付いていくのに必死だったから、部活とかしたことなかったけど。それに友達がいたから寂しくなかったし。
「そうかなぁ。別に普通でしょ?ってイタイイタイイタイ。」
「あっ!ごめんっ。そっかぁ、トーコって初恋まだなんだ・・・。それなら確かに戸惑うよねぇ。うんうん困る困る。」
ルルイエは、両手を私から放すとそのまま腕組みをしてウンウンと一人頷く。その後、思い出したように右手を額に当てて
「なんか、ベリアルが可愛そうに思えてきた。」
そんなルルイエに私はふと思ったことを口にする。
「ねぇ、どうしてそんなにベリアルくんのこと気にしてあげるの?」
額に当てていた手を下ろすと、
「あ、私、アイツと幼なじみなんだよ。言ってなかったっけ?」
意外という感じの表情で答える。私は首を振って
「うんうん、初耳だよー。そうなんだ、幼なじみなんだ。」
そのままルルイエは続ける。
「アイツってさ、あんな感じだけど基本的にはすっごいイイヤツなんだ。」
私は黙ってウンウンと頷く。しかし、私がベリアルくんと出会ったときには今みたいなプレイボーイだったし、俄かには信じられなかった。
「いいトコいっぱい持ってるんだよ?優しいしさ、コッチではあんなジゴローだけどさ向こうじゃリーダーと同じくらい慕われてるんだ・・・って私何いっぱいフォローしてるんだろ。」
ベリアルの話をしているときのルルイエの瞳は何だか輝いて見えた。あれ?ルルイエってもしかしてほんとうは・・・。
「ルルイエ・・・。」
私が彼女の名前を囁いたとき
「うん・・・そうかも、そうかもしれないね。やっぱりさ、気付けないもんだよ近過ぎる距離ってさ・・・。それに好きって気持ちにルールとか形式ってないわけじゃん?だからこれが好きだー!ってことなのかわかんないよねぇ。」
あ、同じようなこと前にキサラギが言ってた。
「そっか、私ってアイツのこと・・・。あはははは♪笑っちゃう・・・ホントかどうか確認しないとっ。トーコ、ちょっと行ってくるよー。」
そう言って、ルルイエは立ち上がるとてくてくとアップタウンの方へ歩き出す。そしてPT広場の柵の辺りで振り返り
「トーコ、ジッとしてちゃだめだよ!ちゃんと行動して、言葉で伝えて、確かめなくっちゃ!」
そう言って小さく手を振るとそのまま走り去っていった。その場に残った私は、アイツにコンタクト
『キサラギー。』
『・・・・・・』
『キサラギ?」
『・・・・・・』
返事がない。さっきまで私の肩に乗っていたと思ったのに。辺りを見回してもその姿を確認することはできなかった。まぁ、それもいつものことだし、家を知らないわけじゃないから心配はしていない。
「それじゃこのまま夕飯の買い物して帰ろうっかな。あーぁ、なんか今日は色々ありすぎて頭の中ぐちゃぐちゃだよぉ。」
ふぅっと小さく息を吐いて、ベンチから立ち上がりダウンタウンへ向いて歩き出した。
稼動橋の雑踏を抜け、ダウンタウンへ向かう階段にさしかかったときだった。見慣れた背中がひとつ。私は声をかけようと近づいたが声を掛けることに戸惑った。その背中は小さく震えていたから。声をかけようと近づいた彼との距離は2メートル、今なら気付かなかったフリをして通り過ぎることができるギリギリの距離。しかし、私が決断する前に向こうが私に気付いた。
「トーコ・・・。」
「ベリアルくん?」
なんだろう、私の名前を呼んだ時の彼の瞳がとても寂しく見えた。胸騒ぎがする。でも、エミルくんに感じたドキドキとさっきベリアルくんから感じたドキドキと違う。明らかに不安な胸騒ぎ。嫌な予感がする。彼は私にスッと近づき、左手を取って階段を下り始める。そして、踊り場に差し掛かったときその歩みを止めた。その場所は、稼動橋の喧騒が届かずダウンタウンの雑踏が消え入る無音の空間。絶妙な距離のバランスがこの踊り場を不思議な空間に仕上げている。そんな世界の狭間で私の体が不意に加速する。
「え・・・。」
刹那
私の体は、ベリアルくんの腕の中にいた。ガラス細工に触れるように優しく、そっと抱き寄せられていた。
「え・・・え?・・・ベ、ベリ・・・」
私は今起こっている状況を認識することはできたが、理解することはできない。私の鼓動が早鐘を打つように跳ね上がる。彼の名前さえも口にするのが苦しいくらい。
「トーコ・・・。」
私を包む両手に力が入る。そして更にきつく抱き寄せられ
「どうしたのっ・・・!ちょ、べ、ベリアルく・・・ん、ダメだってこんなトコっ人が来ちゃう。きゃうっ!」
もがく事も許されず、私の体は鎖に繋がれたように彼の腕の中で自由を失う。
・・・To be continue
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