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各月の日記

YUNIKOさんの日記

(全員に公開)

2012年
02月29日
16:54

第22話 ココロのかけら~ティタ篇3~

アクロニアに伝わる言葉
ボクがキミの盾になる
キミの笑顔が見ていたいから

22話 はじまります。

------↓↓本文↓↓------

「呼吸が戻らないっ!!どうしてっ!」

エミルはピクリとも動く気配が無い。

「どうしてっ!?リザレクションちゃんと発動したのにっ!」

周りの全員が同じことを思った。しかし、そこに横たわるエミルの呼吸は依然回復しない。どうして?!その言葉だけがティタの頭の中を駆け巡り軽いパニックに陥っていた。
 一方、デスと対峙していたベリアルとルルイエは、かなり苦戦していた。おかしい、まずデスがこんなところで現れるなんてことが普通じゃない。そして、戦って感じた違和感。本当ならばもう倒していてもフシギじゃない。確実にダメージを与えている、なのにデスの動きが衰えない。デスの体当たりにルルイエが吹き飛び壁に叩きつけられる。

「キャァッ!」

「大丈夫かっ!くっそ、こいつなんでこんなに強いんだ!ルルイエ動けるか!」

「っつう・・・。だ、大丈夫だけど・・・さすがに体力が・・・カハッ・・・」

ベリアルはルルイエの元へ駆け寄り詠唱を始める。

「『闇の契約に基づきし、冥界の番人よ 御身が奏でる破壊の旋律が我が身を癒し魂を奮い立たせん!冥界狂想曲(ライフテイク)!』」

詠唱と同時にベリアルの周りに紫色のオーラが表れ、そのオーラはルルイエの体を覆う。そして髑髏のような模様を模るとそれはルルイエの両手に吸い込まれていった。

「ワリィな、余裕かましてポーション持ってきてないんだ。ちっと頑張って自給自足してくれや!」

「な・・・によぅ、ベリアルそのSっ気発言・・・幼なじみだからって・・・優しくしてくんないと、愛想尽かしちゃうんだか・・・らぁぁぁ!」

ルルイエは、その場から立ち上がると俊足でデスへ詰め寄り両手に装備したクローで斬りつける。斬りつける毎にその動きが俊敏になっていく。クローによる斬撃が暫く続きデスの体が消滅した。

「ふぅ~・・・。はっ!それよりエミル!」

二人がエミルの元へ駆け寄る。しかし、状況がよくない事はすぐにわかった。

「おい、タイタス!どうなってんだ!なんでエミルが生きかえらねぇ!」

ベリアルがタイタスに掴みかかる。タイタスはソレを振りほどき、

「わからんっ!体は治癒しているし、リザレクションも発動した。こんなハズないのに・・・何かが引っ掛かる・・・。」

考え込む仲間たちの中でルルイエの顔色が変わる。

「あっ・・・まさか・・・。エミル、ごめんね!」ビリッ・・・

ルルイエはおもむろにエミルの服の胸元を裂く。すると、ちょうど左胸・・・心臓の辺りに黒い痣が浮かんでいた。その痣は、まるで生きているかのようにグルグルと回りながら何かの形を作り始めていた。

「やっぱり・・・。これ呪術(カーススペル)だよ!なんでデスごときがこんな事できるわけ?!」

痣を見た瞬間、ルルイエの表情が険しくなる。ベリアルも同じように舌を鳴らす。

「チッ・・・。呪いかよ・・・。なんでなんだよ・・・ったく」

「どうするんだ。スペルの言霊が判らないと解呪できないぞ。やっかいだな。ここにはソーサラーもエンチャンターもいないしな・・・。」

タイタスが吐き捨てるように言う。しかしコレは現実、全員の顔から血の気が引く。時間が無い。そのとき、静かにティタが呟いた。

「解呪できないなら、呪部を直接消しちゃえばいいんだよ・・・。」

その言葉に全員がティタを見る。

「な、何言ってんだよ!そんなことできるわけないじゃないか!ティタ、ちょっと落ち着け。」

ベリアルがティタの言葉に噛み付く。ルルイエもタイタスも頷くが、ティタは表情ひとつ変えず更に小さく言葉を紡いでいく。

「できるよ・・・。あ、でもこれはソーサラーでもエンチャンターでもムリ・・・。私たちドルイドじゃないとできないの。だから今ここででき・・」

ティタの声を遮ってタイタスが怒鳴る。

「だめだっ!!!ティタ何言ってるんだ!アレは禁忌の魔術だ!スキルじゃないんだぞ!絶対だめだ!」

「じゃあどうするの?!このままエミルくん助からないの?助けないの?イヤ!そんなの絶対イヤッ!」

普段のおっとりしたティタとは想像もつかないくらいの迫力があった。二人のやりとりを見ていたルルイエもベリアルも何のことか全く理解できていない。

「どういうことだよ?さっきから何言ってるんだよ。」

ベリアルが二人に問いかける。しかし、

「いや、なんでもない。気にしないでくれ、ティタ動揺してるだけだ。」

タイタスは答えてくれなかった。何かを隠してる、二人はそう感じ取ったがここでソレを追及することはしなかった。時間がないんだ早くなんとかしなければ・・・それだけが今この瞬間の最優先事項だから・・・。そして、タイタスが切り出す。

「ここで考えていてもエミルは助からない。一旦外に出よう、外にゴーレム露店があったから、時空の鍵を買ってアップタウンに戻ろう。急いで行けばギリギリなんとかなるハズだ。」

ベリアルとルルイエは顔を見合わせ、

「そうね、でも入り口まで魔物がいるわ。私とベリアルで道あけていくから、タイタス、エミルをお願い。」

「そうだな、確かにオレとルルイエじゃないと道作れないか。そういうことだ、タイタス頼んだぜ。」

タイタスは、メガネの中央を右手の中指で押えて、

「わかった。ソレでいこう。でも大丈夫か二人とも。さっきの戦闘で・・・。」

二人は先程のデスとの戦闘でかなり消耗しているはず、いくら入り口までの魔物がザコレベルといっても数で来られれば当然道を開けるよりもベリアルとルルイエの命だって危険にさらされる・・・タイタスに少し戸惑いが残る。

「それなら・・・、それなら兄さん、二人の支援をして。私がエミルくんを背負っていく。」

ずっと黙っていたティタが口を開いた。さっきの昂りが嘘のように落ち着いていた。

「大丈夫かティタ。おまえが支援してもいいんだぞ。」

タイタスの言葉に首を横に振ると、にっこり笑って

「私だと余計な心配させちゃうもん。それにさっきみたいにパニックしちゃうといけないし。それに、エミルくんの盾になるって決めてたから。」

その表情は穏やかで、落ち着いた口調に3人はもう大丈夫と安堵した。

「それならグズグズしちゃいられない。ルルイエ、さっさと掃除してこようぜ!タイタス、サポート頼んだぜ。」

ベリアルは腰に下げた短剣を右手で抜くと、今来た道を走り出す。ルルイエも後に続く。タイタスはもう一度ティタに歩み寄ると、頭の上にそっと手を置き優しく微笑んで

「心配するな。エミルはオマエの想い人かもしれないが、俺たちにとってもかけがえのない仲間だ。必ず助ける。ベリアルたちが道を開けたらすぐに声をかけるから、ちょっと待っててくれ。」

ティタの頭を優しく撫でる。ティタは

「うん。」

小さく頷いた。タイタスは入り口の方へ振り返るとベリアルたちの元へ駆け出した。タイタスの背中を見つめながら

「今までありがとうお兄ちゃん・・・バイバイ。」

ティタが呟く。ティタは地面に寝かせていたエミルの上体を抱き起こし、ぎゅっと抱きしめる。そして、自分の膝の上に頭を乗せて膝枕のように座ると、

「エミルくん・・・いつか、本当にこんな風にしたかったね。春、桜がいっぱい咲いたファーイーストの農園でお花見とかしてさ。ごめんね、私、エミルくんの盾になるって決めてたんだよ?」

ティタは優しい笑みを浮かべて、一言一言丁寧に言葉を綴りだす。

「でも・・・こんな風にできるの今日が最後になっちゃうんだ。でもいいの私それでも・・・。だって私、エミルくんの盾になるって決めてたんだし、それにエミルくんのこと好きなんだもん。」

優しい微笑みの中にある瞳から涙が溢れ出す。それはやがて頬を伝い一筋、二筋と流れを作りやがてエミルの頬に落ちる。しかしその瞳に悲しみの色はなく、決意の色がはっきりと浮かんでいた。

そして、
ゆっくりと
ティタの想いが
その唇から紡ぎだされる。

「『大天使ラファエル、ウリエル、ミカエル、ガブリエルに求まん、光の神バルドルに求まん、万物から注がれし愛の力をわが命を対価に闇に迷えし悲愴の御霊に生の力を与え給え。』」

長い詠唱が終わり、ティタは閉じていた瞳を開く。そして、もう一度エミルの顔を見つめる。

「エミル・・・好き・・・愛してる・・・だから・・・私の分まで生きて・・・おね・・が・・い・・・わたし・・・あなたの・・・瞳に・・・もう一度・・・映りたかった・・・な。バイバイ・・・。」

溢れ出す涙は滝のように頬を伝いエミルに降り注ぐ。そしてゆっくりとティタは顔を寄せてエミルにそっとキスをする。最初で最後のキス、触れ合った唇から何色ともいえない光の玉がティタからエミルへ移っていく。光の玉が現れたとき、ティタのエンジェルリングが消えソレがエミルに入ったとき、背中の翼は白から灰色へそして背中から落ちた。

 閉じていた瞳を開く。ソコには緑の草原と泉が広がり、目の前にはタイタニアの少女が同じように瞳を閉じて座っていた。さっきと違うのは、彼女の頬に一筋の涙が流れていたこと。

「なるほど・・・。これがこの子の想いか・・・グス。辛かったのね・・・そう・・・幸せだったんだ。そっか・・・。」

キサラギはティタの胸に付けたアクセサリーを外して自分に付け直すと、優しくそっと額へくちづけした。ティタは瞳を開けて右手をそっと額へ持っていき軽く触れる。そして虚空色の瞳で笑顔をつくり

「あら、今日はかわいいお客さんがいっぱいなのね。」

いつものセリフを口にする。


・・・To be continue
  • ECOの創作
  •  キサラギ

コメント

1番~7番を表示

2012年
02月29日
17:33

最期?の描写がとっても綺麗。
うるっときちゃったじゃないのーー!!!

良い過去話でしたっ!

現実へと戻る場面の移り変わりが個人的にツボですw

2012年
02月29日
18:19

切ないなぁ・・・
でもティタの芯の強さとやさしさが感じられるいい話でした・・

ティタァァァァァァァァァァァァ!!

2012年
02月29日
23:43

>>えめるさまん
読んでくれてありがとー!

>最期?の描写がとっても綺麗。
>うるっときちゃったじゃないのーー!!!
うるっときちゃいましたか・・・・よかった(*´ェ`*)
ホントはもっと手を入れたかったんだけど、ボリュームが・・・w
ちょっと切ない感じのでもあたたかいお話を目指したので、えめるんの感想読んだらオッケーなのかなぁとおもいました。
ホントありがとね♪

>>るみねちゃん
読んでくれてありがと~!
切なかったですか♪よかったよかったw
自分でも書いてるときに感情移入しちゃってちょっとうるっとしちゃったのはナイショ。でも、私の筆スキルが低すぎて思い描く世界が100%出せませんでした。TT

拭くもの・・・・・・いらなかったでしょ?w

2012年
02月29日
23:59

>拭くもの・・・・・・いらなかったでしょ?w

ちょっとやばかったですけどね~^^;
ティタの台詞は能登ボイスで勝手に脳内再生されて破壊力バツグンでしたよw

2012年
03月01日
00:05

>>るみねちゃん2
ちょっとやばかったのかぁぁぁぁぁぁ!・・・・・・・・・チッ(ナンデ
そっか、夢見のティタは能登マミだもんねぇ・・・たしかにあの声で言われたら私、うるっとじゃきっとすまないかもwww

2012年
03月01日
14:43

 続き来た~~~っ!
 やっぱりラストのシーンはいいなぁ……でも、どんな形になってもこの結末は切な過ぎるのです(>o<)
 早く元に戻って笑い合えるのを待ってます!

 あ、でも……そうすると確実に1人困る方が(x_x)

2012年
03月01日
16:00

>>詩綺さま
読んでくださってありがと~♪
切ないと感じてもらえたら、嬉しいかぎりですw
筆スキルが低いので、脳内のイメージが100%書ききれてないのが悔しいのですが、これが精一杯だからしょうがないっ!(マテ

これからどう展開していくか・・・私にもわかりませんっ!(マテコラ
お楽しみにっ!

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