今回は挿絵なしでーす!
可愛い可愛い絵の魅力を壊さないように、今回はつなぎでーす。
バウちゃんカワユス・・・
------本 文------
「それじゃ、残るは・・・」
私は少し離れたトコロでしゃがんで尻尾を振っている少女と目が合った。今にも飛びついてきそうな感じではあったが、ウズウズとしながらも私の言いつけを見るからに一生懸命守っているようだった。鈴緑の頭を優しく撫でると抱きついていた鈴緑をカラダから放して、バウの元へ歩き出す。しゃがんだ少女は私を見上げて何かを期待するような視線をこちらに向ける。
「バウちゃんって呼んでいいのかな?お待たせ。」
「わん?」
「えっとね、バウちゃんはお家ドコかな?」
「んと・・・おうち?おうちってなぁに?おいしいもの?」
やはり・・・私はこの少女が、アップタウンで最近噂になっているモンスターに間違いない、そう確信した。しかし、この辺りにいるモンスターのように殺気は微塵も感じられない。どちらかというと人懐っこいように思う。それなら、ここで別れるより私が連れて帰った方が色んなトラブルからこの子を守れるかもしれない。
「えっとね、お家っていうのは私達が生活するところのコトで、美味しいご飯を食べたり、温かいお風呂に入ったり・・・フカフカのベッドでおやすみしたりするところだよ。」
「おおぉぉぉぉ・・・・・・。美味しいご飯はボクがさっき食べたのより美味しいもの?」
「そうだよ。」
「おおぉぉぉぉ・・・・・・。フカフカのベッドはボクがいつも寝てる干草のベッドよりフカフカ?」
「もちろんっ!なんなら、これからウチに来る?」
私はウィンクしてバウを誘う。返事は聞くまでもキラキラを輝くバウの瞳を見れば明らかだった。私は左手を差し出すと、バウはすかさず右手を出してきた。
(これって・・・お手?いあいあ、さすがにそれは考えすぎか。)
私はそのままバウの手を握ると、にっこり笑って
「それじゃお家へしゅっぱ~つ♪」
「しゅぱああつ~♪」
自宅に向けて歩き出す・・・がその瞬間、殺気にも似た視線が私の背中に突き刺さる。
(あ、しまったぁ・・・。)
私は恐る恐る振り返ると、そこに買い物袋を両手に持った鈴緑が仁王立ちしていた。尻尾の毛は全て立ち上がって普段の倍の太さになっていた。肩をふるふると震わせ、
「にゃ、にゃかにゃか楽しそうれしゅね。ご主人・・・?」
私はバウから手を放すと鈴緑に駆け寄る。そしてそっと耳打ちする。
「事情は帰ってから説明するからココは怒らないで。今ここであの子と別れるときっと大変なことになるから・・・おねがいっ緑ちゃん。」
すると、鈴緑は少し考えて、
「むぅ~、分かりました。ご主人がそんな風に言うってことはホントに事情があるんですよね。はぁ・・・わかりました、でもちゃんと帰ったら説明してくださいよ?」
「あいあい。大好きだよ♪」チュッ
私は鈴緑の頬に軽くキスをしてバウの元へ戻った。
私と鈴緑、バウと名乗る少女は我が家へ向かう。遊びつかれたのかバウは途中眠ってしまい、私がおぶって歩く。鈴緑はそれが羨ましかったらしく、自宅に着くまで私の手をキュッと握って歩く。自宅に着くと、バウはゲストルームのベッドに寝かせ、私と鈴緑は夕食を済ませた。今日は鈴緑をかなり怒らせてしまったのでメニューが心配だったが、過去にあったようなペットフード1缶という復讐メニューでなかったのでホッと胸を撫で下ろす。夕食後、今日あったことの経緯を説明し最近噂になっている人型のモンスターの話もした。
「・・・ということなんだよ。緑ちゃん、心配させ・・・やきもち妬かせちゃってごめんね♪」
「べ、別にやきもちなんて妬いてないですっ。ご主人はちょっと自惚れすぎなところがあるです。そ、そりゃぁ確かにご主人が他の人と仲良くするとゴニョゴニョ」
「あいあい、ごめんね。と、そういうことだから連れて帰ってきたんだよ。あのままアップタウンに残したらまた被害者が・・・。ゴホン、それにトラブルが起きちゃいそうだからね。」
と、食後の紅茶を嗜みながらそんなやり取りをしていると
「あの・・・ぼくお腹すいたの・・・。」
ダイニングの入り口にバウがひょこっと顔を出した。
「あ、おはよう。よく眠っちゃってたから起こさなかったんだけど、お腹すいた?それならご飯用意してあげるからこっちに来て食べよ?おいで♪」
「ん~・・・おはようござますっ!ご飯たべるー!」
バウはとてとてとリビングに入って、ちょこんと空いている椅子に腰掛ける。
「ぼく知ってるよ!これ椅子っていうんだよね!ここに座るとご飯が出てくるんだよね!」
自慢げに話す。私は鈴緑に食事の用意をお願いして、その間バウに色々聞いてみることにする。
「バウちゃんはお家どこ?」
「お家・・・果物がいっぱいある森のトコだよっ。」
「お父さんとお母さんは?」
「ん~、しらなーい。いなーい。」
「そ、そっか・・・。それじゃ、バウちゃんどうして人の格好してるの?」
「んとね、ここね、人がいっぱいいてみんな楽しそうだったからね、ぼくも一緒にあそびたいなーって思ってね、夜お星様にお願いしたのー。そしたら、お星様がキラキラぁってなってね、そしたら人になれたのっ!」
「・・・・・・そ、そっかぁ・・・よかったねぇ、お星様がお願い叶えてくれたんだね。人の言葉もわかるんだね。」
「うんっ!」
「アップタウンに来て楽しい?これからもずっといたい?」
「うんっ!楽しいよっ!ぼく、ずっとここにいたい!」
バウは尻尾を左右に大きく振って、大きな瞳を更に大きく見開いてキラキラと輝かせる。
(この子は純粋に人に憧れてるだけで悪意はないんだね。それじゃウチで・・・といっても緑ちゃんがいるから、一緒だとあの子が可哀想か。それじゃユニコかニャッコに頼んでみるか。)
などと考えていると、
「お待たせしたのですよ~♪美味しいご飯ですよ~♪」
鈴緑がプレートに食事を載せて入ってきた。それを見たバウは
「ごはーーんっ!ごはーーんっ!」
両手を上げて足をバタバタさせて到着を待つ。テーブルに食事が並ぶと、バウはそのまま顔をスープ皿につけようとしたので、鈴緑が慌てて
「バウちゃん、ダメですよ?お行儀悪い子になっちゃうですよ。みど・・・お姉ちゃんが教えてあげるから、みんなと一緒に食べられるよう、ご飯の食べ方お勉強しましょ?」
バウは、一瞬首をかしげたが好奇心が勝ったようで
「はいっ!ぼくお勉強する!」
元気よく手を上げて返事をした。『いただきます』から『ごちそうさま』までの流れを教え、スプーンの使い方やフォークとナイフの使い方など。口の周りに付いたソースを隣で鈴緑が拭いてあげている。どうも、お姉さんでいたいらしい。元々世話好きだから、バウの拙い言葉遣いや行動が母性本能をくすぐりまくりなんだと思う。
バウの食事が終わると、美味しかったを連呼して鈴緑に懐いていた。そういえば、食事の途中から『お姉ちゃん』って呼んでいた。食後の紅茶をバウにはミルクとお砂糖をたっぷりいれてミルクティにしてあげる。バウは先程覚えたての「フーフー」をしながら、一口含むと、耳をふわっと一瞬浮かせて尻尾を左右に大きく振って、
「おいしー!これおいしー!お姉ちゃん美味しいのいっぱいでいいねっ!><」
と、鈴緑に感動を一生懸命伝えていた。その間に私は、この子の保護者役を探すべく携帯を取り出し、アドレス帳を開くそのときだった。
「姐さーん、姐さーん。お邪魔しますよ~。アナタのエイルですよ~。」
玄関から聞き慣れた声がした。
「あぁ・・・(ΦωΦ)キラーン」
声の主は、この先起こる絆イベントのことを気付くはずもなかった。
今日はゼッタイ
とぅびぃこんてぃにゅうだよ!
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