気分転換っ!
残り時間30分!
書ききれるかなっ!?
浮かんだ言葉をとりあえず並べてみるっ!
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桜の蕾がまだ固いその日、私は校門で泣いていた。私の前には一人の男性が立っていた。見た目、少し華奢な感じで銀縁の眼鏡にグレーのスーツに着こなされているそんな風貌。私は両手で卒業証書の入った筒をギュッと抱きしめ溢れる涙もおかまいなしに、
「先生・・・わたし・・・わたし・・・」
自分の気持ちを伝えようとした。けれど、次の単語が出てこない。泣いてるからしゃべれない?想いが溢れすぎて言葉にできない?ちがう、そんなのじゃない。私は気付いていた。
恐いんだ。
自分の気持ちに応えてもらえないという未来が
自分の気持ちを受け入れてもらえないかもしれないという未来が
そのとき、私の頭に感じる重み。
「ほら、泣くな。今日はおめでたい日なんだぞ?キミの人生の節目の日にそんな顔じゃ明るい未来が逃げていっちゃうぞ?」
私はズズッっと鼻をすすって
「それじゃ・・・泣き止んだら・・・センセイ、逃げない?グスッ」
上目遣いの私の視線に、彼はゆっくり微笑んで
「何言ってるんだ。センセイはいつだってオマエらの傍にいたろ?今までもこれからもセンセイはセンセイだよ。」
「ちがう・・・そうじゃない・・・わたし・・・」
そこで私の唇の中心にそっと彼の人差し指が触れる。
「待った。今日それ以上は言っちゃだめだ。キミはまだまだいっぱい覚えないといけないことがあるし、経験しないといけないことがある。センセイはそれを邪魔したくない。だから今日は言っちゃだめだ。わかるな?」
「でもっ!」
私は反論しようとした。すると、
「それじゃ約束しよう。キミは桜の花言葉を知っているかい?」
唐突に出た言葉。
「いえ・・・」
「桜の花言葉はね、『あなたにほほえむ』っていうんだ。だから、約束しよう?キミが社会人になってもその気持ちに変わりがなかったら、もう一度ここで会おう。そして、その気持ちを伝えたいなら、この桜の木の下で僕に微笑んでくれ。いいかい?」
彼の言葉に私は大人しく頷いた。
まだ桜の蕾が固い3月の早春・・・
・・・・・・そして
あの日から5度目の入学式を終えた。
僕はいつものように校門へ続く桜並木を歩く。僕の生活は変わらない。生徒を見守り、送り、迎える。このオルゴールのような日常に少しうんざりしていたのかもしれない。校門の横に立つ一本の桜の下で、ついこぼしてしまう。
「あなたにほほえむ・・・か。約束・・・か。」
「約束、叶えにきました。」
「え・・・」
「アナタに微笑んでいいですか?」
風に舞う桜の下で僕の中のオルゴールが止まった瞬間だった。
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