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ベルッドさんの日記

(全員に公開)

2012年
06月12日
22:53

【小説】とある捨て犬バウの追憶 ‐ペットの心情‐

俺の名はノラ・バウアー
誇り高きバウ族の戦士だ。
俺たちバウが何をもって一人前と呼ばれるか知ってるか?
狩りに参加したときから、子供じゃなくなる。
一人前の大人として扱われるんだ。

俺たちにとって一番の敵は何か。
実はエミルやドミニオン、タイタニアと呼ばれる種族。
ニンゲンって奴だ。
あいつらは、妙な武器を使う。
妙な術も使う。
強い奴は俺たちが何匹、何十匹で襲いかかっても倒せない。

「ニンゲンには気をつけろ」

よくオヤジが言ってたもんだ。
そんなオヤジも、ついに帰ってこなかった。
仲間から聞いた話じゃ、ニンゲンに倒されたらしい。

俺がニンゲンを嫌いになる理由が一つ増えたってわけだ。

しかし、どうだい。
運命ってのは分からないもんだ。
ニンゲン嫌いの、この俺がだぜ。
そのニンゲンのペットになっちまったんだからよ。
ただ、言っておくぜ。
カテゴリーからするとペットになるだけで、俺と奴は同格の仲間だ。

俺と奴の出会いは三ヶ月前になる。
俺がエサを探して単独行動をしていたときだ。
バカそうな面をしたエミルのオスが来たんだ。
身のこなしを見ても、まだヒヨっ子だってのが分かる。
そこで俺は思ったんだ。
こんな所まで一人で来た無謀さを教えてやろうってな。

ところが奴は強かった。
いや、俺も未熟なヒヨっ子だったんだろう。
要するにガキ同士の殴り合いみたいなもんだ。
意地と意地をぶつけ合い、気がついたら意気投合してたんだ。

「俺の名前はベルッド、一緒に来いよ。二人で大きな事をやろうぜ!」
その言葉を聞いたときに、俺は奴、ベルッドとコンビを組むことにしたんだ。

でもベルッドは新米の冒険者で何も持ってなかった。
仲間もいなかった。
ベルッドは、となりを歩く俺に向かって言ったよ。
「テメーが俺の仲間の第一号だぜ」
嬉しそうだった。
「いまに見てろよ、俺は必ず・・・・・」
と前置きしてからベルッドは色々な夢を俺に語るんだ。
庭を作ろう。
仲間を増やそう。
城だって作ろうぜ。
俺たちが世界最強になってやろうじゃないか。
実現可能な夢も、無理そうな夢だって何故か実現できそうな気がした。
だから俺は、こう答えた。
「俺とお前なら、必ずできるぜ!」

そんなある日、あいつは俺に言った。
「テメーとのコンビを解散する」
ショックだった。
でも、俺のオヤジはニンゲンに殺されたんだ。
コイツは良い奴だったが、元の敵同士に戻るだけだ。
次に会った時は・・・・
俺が覚悟を語ろうとしたとき、ベルッドは呆れて言った。

「これからはトリオだぜ。だからコンビは解消だ」

あいつは、どんどん仲間を増やしていくぞ、と言って俺を見た。

「バウアー、お前が隊長だからな」

そしてネコマタの桃を紹介してくれた。
ネコとイヌでは、相性は良くないと思うんだ。
案の定、桃の奴は隊長の俺を認めない。
だが、ベルッドは言った。
「俺を頼るな。隊長ならば実力で心服させてみせろ」
お前なら出来ると笑ってた。

この日以降、あいつのそばには、いつも俺と桃がいた。
どんな敵がいても、三人で倒してきた。
やがて、ベルッドの目標だった飛空庭ができた。
粗末な家だね、と桃は笑った。
これからだよな、と俺も笑った。
まだまだ、これからだぜ。とベルッドも笑った。

庭が完成した直後に、ベルッドがタイタイニアの女を拾ってきた。
考えてみればニンゲンの仲間は、この女が最初だったんだ。
ウイザードのホーリィベルです。
と女は名乗った。
術を使う奴か、と俺は思ったもんだ。

更にそのあと、今度はウルとルウという二人の守護魔がやってきた。
こいつらは、合体するとウルゥという守護魔になる。
その戦闘力は恐ろしいほどに高かった。
それ以降、俺と桃がベルッドと冒険に出ることは無くなった。
あいつの側には、常にウルゥが控えている。
本音を言うと悔しいし寂しい。

「仕方がないよ」
桃が俺に言った。
「ウルゥの方が強くて、ベルッドを守ってくれるんだから」
そう言った桃の顔も寂しそうだった。

それから桃とは色々と語り合った。
そして二人で出した結論は、仲間が増えれば役割が出来るというものだった。
ウルゥはベルッドを守る。
桃とホーリィベルは庭の雑用をする。
俺の仕事は、この飛空庭を守る事になった。

ベルッドが冒険から帰ってくると仲間が増えた。
桃の姉妹達、守護魔のカナデ、ヤヨイ、ウヅキ・・・・・
ベルッドの妹のオーレリィも転がり込んできた。

そしてベルッドはリングを作った。
庭がたまり場だとベルッドは言った。
庭への来訪者が増えた。
次第にニンゲンの仲間が増えていく。
だが、みんな良い奴ばかりだった。
常に誰かがいて賑やかで、悪く言えばウルサイ。
雑用の桃も忙しいと、ぼやいてた。

でも、ある日を境にニンゲンは来なくなった。
飛空城を作って、そちらをたまり場にしたんだそうだ。
俺も連れていってもらったが、とても広かった。

俺達は城へ引っ越すのか?
そう聞いてみたら

「俺個人の城じゃないからダメなんだ」
と申し訳なさそうに謝られた。

でも、俺は逆に安心したんだ。
庭が俺の家なんだ。
狭くても、こっちのほうがいい。
桃たちも同じことを言ってた。
でも、俺と桃達の理由は、たぶん違う。
あいつらはネコだから、本能的に狭いほうが落ち着くんだろう。

元の静かな生活が戻ってきた。
静かと言っても、女ばっかで姦しいけどな。
家の玄関前が俺のお気に入りの場所で、ここで日向ぼっこをするのが好きなんだ。
でも、急に暗くなったので顔をあげたら、ベルッドが来ていた。
おかえり!
声をかけたら、ベルッドは言った。

「隊長、たまには体を鍛えにいくか?」

まだ覚えてたんだなぁ・・・・
俺が隊長だってさ。
久しぶりに、庭を降りて町の外へ行った。
スイカ、チェスの駒、悪の戦闘員、魔導晶石を使って体を鍛えた。
なんだ、俺もまだまだいけるじゃないか。

「ついでだから、行きたいところはあるか?」

そう聞かれたが、別に行きたい場所もない・・・・
いや、あった。
俺は故郷の家族に会いに行きたいと告げた。
奴は快く承知してくれた。
久しぶりに家族と再会したら、弟はすっかり一人前になっていた。
これなら、あとは任せても大丈夫だろう。
だが弟は頼みたい事があると俺に言う。

妹が行方不明なんだそうだ。
そういや、確かに姿を見せなかったな。
弟の話では妹はニンゲンに姿を変えて出ていったという。
俺は嘘をつくなと叱ったが、本当なんだと言い返してきた。
そしてニンゲンの町で生活してるなら探してくれと頼まれた。

俺は困惑しながらベルッドに事情を話した。
奴は笑わずに最後まで話を聞いてから、心当たりがあると言った。

アップタウンのとある場所の飛空庭。
通常の庭より、やけに広い。
責任者らしき女性が言うには、ここは人の姿をしたモンスターの学校なのだそうだ。
だが、そんな説明は俺の耳には入らない。
妹のニオイが大きな建物からしてくるからだ。
やがて一人の少女が出てきた。
全然知らないニンゲンの少女だが、ニオイは確かに妹だ。

少女は俺に気がつくと、バウの姿になって俺の元に来た。
妹のようなモンスターをアルマというらしい。
俺はベルッドに言った。
妹と一緒に生活したいから引き取ってくれ、と。

「ふざけんな、お金が1000M以上も必要になるぞ!」
大声で怒鳴ったあとに、ニヤリと笑って奴は言った。
「でもまぁ、そんな目標を持つのも悪くない。」

俺たちは妹に別れを告げて庭へ戻った。
いつか、弟に妹は無事だと知らせに行かなければならない。

そして俺は今日も庭を守る。
ベルッドが安心して戻ってこれるように。
そして妹と、いつか一緒に生活ができるように願いながら。

コメント

1番~8番を表示

2012年
06月12日
23:49

バウアーが好きになっちゃったじゃないかεε=ヽ( `Д´)ノ ウワァァァン

2012年
06月13日
00:01

とても感動した!
バウアーの好感度が急上昇!!

2012年
06月13日
00:23

>>1 アリストロメリアさん
庭に来てくれたら、いつでもバウアーに会えるよ!

2012年
06月13日
00:25

>>2 ツクヨミさん
バウアーの株が上がった?!

2013年
09月04日
19:52

5:

ベルッドさんに小説の才有りw

バウアー株は1から80に上がりました^^

2013年
09月04日
21:37

>>5 水鏡図書館さん
100ではないんですねぇ・・・・
もっと上げてくださいw

2014年
04月30日
21:55

過去の世界から、未来のバウアー隊長へ
...何時か...何時の日か...妹に逢えると良いですね...(つT)
*超亀レス失礼致しました...

2014年
04月30日
22:40

>>7 エジャムさん
こんな過去から読んで下さって、ありがとうございますw

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