というわけで、『マキナ・ギークと無口な子猫』のシーン2ができましたー♪
特に何も書かなくって・・・いや、書くことが無いとかそんなんじゃないよ?ホントダヨ?(汗
でわでわ、シーン2【マキナ・ギーク】はじまりまーす。
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シーン2 マキナ・ギーク
予定していた討伐数を軽々とクリアし、クエストを終えたパーティは、マイマイのキャンプ地で慰労を兼ねた夕食を取っていた。
「しかし、さすがミサキさんだ。あれだけの魔物を簡単に片づけちまうんだもんな。」
「そうっすよ、オイラが1匹倒す間に2匹も3匹も倒しちゃって。」
「その・・・なんつーんでしたっけ?ア、アルマモンスターでしたっけ?凄いですわぁ。俺らなんてネコマタどころか普通のペットすら手なずけらんねぇのになぁ?がはははは。」
他のメンバーが酒の入ったジョッキを掲げながら、ミサキに対して称賛の言葉を投げかける。
「・・・この子たちはモンスターだけどみんな優しいココロを持ったいい子ばかり。みんな友達だから・・・。」
ミサキは両手でグラスを持ち、ちびちびと中身を舐めるように飲んでいる。俺の隣で。それもピッタリと体をくっつけて。俺は今さっき起った出来事を思い返していた。
「はぁ。なんで、何がどうなったんだ・・・。この状況はよぉ。」
ミサキが現れて、俺の苦戦していた魔物をデスとかいう使い魔で全部片づけて、俺がミサキに襲い掛かってきた鳥をぶん殴って・・・でもトドメを刺したのはアイツの使い魔だった。
「どうしてこうなった・・・。」
俺はジョッキになみなみと注がれた酒を一気に流し込む。さっきの出来事を順に思い出してみたものの、この状態になるためのプロセスが全く見当たらない。けれどコイツはずっと俺の傍から離れない。
「しっかし、ミサキさんがなんでコイツを気に入ったのかがわかんねぇ。」
メンバーの一人がボソリとつぶやく。すると、隣に座っていた男も同じように
「そうだよ。なんでよりにもよってライグなんだ。そりゃ、顔はちぃとばかしオレっちよりいいけどよ。戦闘の腕ならこっちのが上だっつうの。」
「あ~あ~、イケメンはこれだからなぁ。腕がなくても女はついてくるんだもんなぁ。しかも今回はミサキさんだぜ?やってらんねぇ。」
他のメンバーが愚痴をこぼすように俺を睨む。さすがの俺もちょっとムカついた。
「てめ・・・言いたいこといいやがっ・・・。」
その場から立ち上がり掴み掛ろうと思ったときだった。
「・・・・・・ひっ」
メンバー一人がジョッキを地面に落とす。俺は目線を向けると、男の首筋に大きな鎌の刃が突き立てられていた。それと同様に、他のメンバーに、さっきの火竜の妖精と白のゴシックドレスを纏った包帯だらけの少女、ウサギの耳を付け自分の背丈より長いバーベルを持ったメイド服の少女がそれぞれ首筋をかき切る勢いで立っていた。
「これ以上、ライグの悪口いうなら全員この子たちのエサ。」
「ひ、ひ、ひいいぃぃ・・・。」
「ライグは私を助けてくれた。命の恩人。そしてそのとき私の胸に・・・」
そこでミサキは少し頬を赤らめる。
「触ったのか!」
「まさぐったのか!」
「やってねぇっ!てか、お前もなんでそこで顔を紅くする!」
ミサキはグラスをテーブルに置くと、更にライグにもたれ掛るように小さな肩を寄せ左手の人差し指でライグの胸板をすうっと滑らせ
「・・・わたし・・・少し酔っちゃった・・・」
「嘘つけ、それクランベリージュースだろうが。」
「チッ」
「チッって・・・おまえなぁ・・・。」
俺はミサキの額に軽くデコピンをする。
「にゃっ。・・・う~。」
ミサキが額をさすりながら恨めしそうに睨む。俺は盛大に溜息をつくと、改めて質問した。
「はぁ・・・。あのよぉ、なんでこうなってるわけ?俺さっぱり意味が分かんないですけど。」
すると、ミサキはじっと俺の目を見つめて
「意味?簡単。私がライグに恋したの。一目惚れしたの。いっつぁふぉーりんらぶなの。」
言い切りやがった。しかも丁寧に3回も。言葉を変えて。俺は痛くなり始めた頭を抱え
「だからさぁ、その・・・あの・・・あれだ、ほ、ほ、惚れたとか、そ、そういうことになるきっかけがさ・・・。」
「きっかけ?ライグが魔物に襲われて私が助けて、私が魔物に襲われてライグが助けて、恐怖心の共有。これ。」
「って、おいいいいい!それ吊り橋効果!恋じゃない!しかも恐怖心の共有とか既に自分でも恋じゃないってわかってる!」
「言い切れる?」
「おう。あたりまえだ。」
「ほんとに?」
「あ・・・ああ。」
「本当に誓える?ライグのその今、心の中にあるその感情が本当に違うって誓える?」
「お・・・おう?」
「ほら、自信ない。」
「う・・・。」
ミサキはしたり顔で、フフンと笑うと自分のグラスにジュースを注ぎ足す。俺は最後の最後にどもってしまった事を後悔してジョッキの中身を空にした。ミサキは注ぎ足したジュースをコクコクと飲み。
「私、友達が欲しい。」
「は?」
他のメンバーが盛り上がる中、突然話を始めたミサキに俺は思わず聞き返す。ミサキはそのまま話を続ける。
「私、親がいない。気が付いた時には孤児院で独り。11歳でジョブ取得ができるようになると、レンジャーになった。生きていくために稼がないと。ジョブジョイントしてブリーダーの資格も取って今はストライダー。」
「え・・・。おまえストライダーって・・・転生の儀終わってたのかよ・・・。でもよ、お前にはあのアルなんとかっているだろ?アイツらは友達じゃないのかよ。」
ミサキは空になったグラスにまた注ぎ足ししてコクコクと飲み干す。
「うん、あの子たちは大切な友達。でも友達だけど家族。あの子たちは元々普通のモンスターだった。でもちょっとだけ人の心に触れたいって想いが強かった。だから仲間のところにも戻れず寂しい思いをしてた。だから家族になった。」
「そんなことがあったんか。なるほどな。」
「だから、友達が欲しい。でも、作り方よくわからない。ライグはこのパーティに参加したときから気になってた・・・。」
「え・・・。」
ミサキは瞳をトロンとさせ、上気させた顔はほんのりピンク色で上目遣いで見つめるその姿に不覚にもドキッとしてしまった。
「わらしは・・・りゃいぐと友達になりた・・・。」
「おい・・・おい?どうしたんだ?って、酒くさっ!」
俺はミサキのグラスを手に取り中身を少し飲むと
「これワインじゃねぇか。ったく、いつの間にそんなもん飲みだしたんだ。」
やれやれといった感じでグラスをテーブルの上に置き、ミサキの頭をわしわしと撫でる。
「んんぅ・・・くぅくぅ・・・。」
「こんな無邪気な寝顔しやがって。おい、そこの白いの。」
俺は目の前で他のメンバーに酌をしていた白いゴシックドレスの少女に声をかけた。そいつはビクンと肩を揺らし
「ひゃ、っひゃい!」
「お前のご主人さまが酔っぱらって寝ちまったんだ。どうすりゃいい?」
「あうあうあうあう。」
白い少女はミサキの姿を見て驚き戸惑っていた。
「あの、お家まで運んでいただけないでしょうか・・・。私だけでは力不足で・・・。」
「あぁ?・・・あぁ、そうだな。包帯して怪我してるっぽいもんな。」
「いや、これは怪我というかなんというか・・・。」
「いや、悪かったな。いいぞ、俺が送ってやるよ。」
「はわわ。あう、ありがとうございますです。」
「あ、そういえばオマエ名前ってあんのか?」
「は、はい。マスターにはシロって呼ばれてます。」
「そうか、ってまんまだな。わかった、シロ。案内してくれるか?」
「はいっ!」
俺はメンバーに挨拶をすると、ミサキをおんぶしてマイマイ島を後にした。連絡庭でトンカに到着すると、飛空庭の港にミサキ所有の庭が停泊していた。シロの案内で庭に上がると、
「おぉ・・・なかなか趣のある庭だな。古民家なのか。」
茅葺の和風な一軒家、小さいが竹林もあり奥には何やら神社らしきものまで。あまりにも渋いチョイスでミサキがいくつなのか実年齢に物凄く興味が湧いた。
「ら、らいぐさま・・・。こっちれす。」
「ん?あぁ。」
古民家風のハウスに入ると、中も立派に和風になっていた。俺はシロに案内されるまま奥の布団にミサキを寝かせ、静かに寝息を立てるミサキの顔を見た。そして、キャンプ地での会話を思い出し
「面白いやつだな・・・。とも・・・だち・・・か。」
顔にかかった髪を指でそっとどけて、優しく頭を撫でてやる。
「・・・そうだな。友達か、なってやってもいいぜ・・・。」
囁くように小さく、優しく。そして、立ち上がって少し離れたところで見ていたシロに
「それじゃ、俺は帰るわ。シロ、何かあればここに連絡してこい。ホラッ。」
俺はシロに自分の名刺を渡した。
「あ、それとな。」
「はう?」
「ミサキに言っとけ、友達くらいならいつでもなってやるって。」
「らいぐさま・・・。」
「んじゃあな。」
これが俺とミサキの始まりになった。
あぁ、もうそりゃあ腐れ縁ってくらいのなっ!
でもそんなのもさ、この時はイイと思っちまったんだ。
ミサキの寝顔を見てさ。
to be continue
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