やっと、続きができました♪
今回のお話はこれでおしまいです。
ゲームの中では、コメント出してパーティを作ってって感じだけど、
ECOの世界の中ではこんな風にパーティができていくのかなーとか、
そんなことを考えて書いてみました。
主役を務めてくれたライグさん、ありがとうございました。
感想のコメントをくださるフレンドのみなさん、
通りすがりで目を通してくださったプレイヤーのみなさん
ありがとうございます。
それでは、また新しいお話が生まれたときに。
でわでわ、ラストシーン【 マキナ・ギークと無口な子猫 】始まりです。
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ラストシーン 【 マキナ・ギークと無口な子猫 】
ぶっきらぼうに垂れ下がった縄梯子を登ると、庭は家というより工房・・・いや町工場のような風景だった。辺りにはジャンク品と思われる金属製のパーツやら何に使うのかも分からない怪しい機器がそこらじゅうに転がっていた。
「うわぁ・・・ミニーもお片付けは得意じゃなけど、これはちょっと汚いなぁ・・・。」
「シロは・・・シロは・・・とてもとてもお掃除がしたい気分になりました。」
「ステキ・・・。宝の山・・・。はう、こんなアンティークパーツまで。落ち着く。」
各々に心の声を口にする。足元に転がるパーツを避けながら奥へ進もうと歩き出したときだった。
「ガガ・・・シンニュウシャ、シンニュウシャ。」
「ん。」
ミサキが振り返ると、そこに1機のロボットが両手を上げて立っていた。大きさはミニーやシロと同じくらいの小型の自立型2足歩行ロボ。外見からしてモデルになっているのは、光の塔やマイマイ遺跡にいるガッテンガーが原型になっているようだ。
「はう!お人形がしゃべったです!」
「ミ、ミ、ミニーはれでぃだから、お、お、驚かないふぁ!」
「ミニー、脚震えてる。おしっこ出そう?」
「で、でないもんっ!びっくりしてちょっとだけだもんっ!」
「ちびった。ミニー・・・お子ちゃま。」
「あううぅぅ。う、うっしゃいっ!」
そんな3人の会話をよそに、目の前のロボットは更に
「セカイセイフクマデアトスコシ・・・コンナトコロデオワリハセン!オワリハセンゾー!」
「マスター、この子何かヘンな事いってましゅよ?」
「ロボ?私たちは邪魔者じゃない。侵入者でもない。」
「ピピ・・・。テキタイノイシハンノウナシ。ガガ・・・ナカマニナリタイノカ?コタエヨ。」
「ねぇ、マスター、コイツ変だよう。」
ミサキに向かって不穏なセリフを吐くロボに、ミサキは真摯に対応する。
「そうね、仲間。なりたいわ。」
「ピピ・・・。ドウダ?イマナカマニナレバ、セカイノハンブンヲオマエニヤロウ。」
「いい条件。わかった。仲間になる。」
「ピピ、ピピ、ナカマニナル ヲセンタクシタアナタハ バッドエンドデス。」
「はぁ?何言ってんのよコイツ。ミニーわけわかんないんですけど!コイツ壊しちゃっていい?いいよね?」
あまりにも意味の解らないやり取りに、ミニーは我慢できなくなったらしい。ミニーはバーベル型の武器を具現化させ臨戦態勢に入る。
「おーい、誰か客かぁ?」
「!」
背後から、聞き覚えのある声が聞こえた。その瞬間、ミサキの鼓動が大きく跳ねる。ミサキたちは声の方へ振り返ると、そこにツナギ姿のライグが顔を煤とオイルで汚して歩いてきた。ライグは、ミサキ達の姿を見て
「お、おい、なんでここにいるんだ。ってか、なんでここがわかったんだ。」
「ライグ・・・。あの・・・。」
「ん?あぁ、そういや気分はどうだ?ずいぶん派手に酔ってたからなぁ。」
「う、うん・・・。大丈夫。その、送ってくれたってシロから聞いた。あ、あ、ありがと。」
「ん?あぁ、いいってことよ。気にスンナ。それよりどうしたんだ?」
「き、昨日のお礼が言いたくて・・・。」
ミサキは俯き声をフェードアウトさせながら呟くように伝えると、ライグは人差し指で鼻の下をこすり、
「そんなのWisでよかったんだぞ?わざわざ来なくてもよ。」
「ううん、お礼はちゃんと顔見て言う。大事な事。」
「そか。わざわざありがとな。せっかく来たんだし、なんもねーけどよ、コーヒーでよかったら淹れてやるよ。俺も休憩すっからさ、ゆっくりしてけ。」
「うん。ありがと。」
ライグはそう言うと、軍手を脱いで無造作にお尻のポケットへ突っ込み、
「ハウスっていうよりロボ工房にしてるから、散らかってっけどついてこいよ。」
ライグの後をついて奥へ進むと、ガレージのようなハウスに先日彼が乗っていたロボが分解された状態で置いてあった。壁には棚が並んで、工具や部品が所狭しと並んでいた。そんなガレージの隅にソファとテーブルが置いており、そのソファの一つには毛布が掛けられていた。恐らくベッドにしているのだろう。
「テキトーに座ってくれ。コーヒー淹れるから。」
「あう、それならシロが用意いたします。」
慌ててライグに歩み寄るシロの頭を撫でて
「いいよ、今日は客なんだ。一緒に座って待ってろ。な?」
「はい。それではお言葉に甘えて。」
「おう。」
シロはトテトテとミサキの元へ戻り、ソファに3人並んで座る。ほどなくして、アルミ製のトレーに不揃いのカップが4つ香ばしい香りを漂わせ現れた。テーブルの上にトレーを置くと、自分もどすっとソファに座り、
「お前らがいつも飲んでる上等じゃないが。砂糖と・・・ミルクは入れないから無いんだ。わりぃな。」
そう言って、ライグはカップを順に置いていく。3人はそれぞれカップに砂糖を入れ、ずずずと淹れたてのコーヒーを味わう。ライグはスラム街に転がっているドラム缶のように側面が凸凹になったスチール製のマグカップに2度息を吹きかけ口をつける。そして、
「それで?結局のトコ何しに来たんだ?まさか本当に礼を言うためだけに来たわけじゃないだろう?」
「う・・・。」
ミサキは両手でカップを持ったままビクンと肩が揺れる。シロは黙って目を閉じている。ミニーも黙ってカップを置き、澄ました顔でじっと座っている。
「あの・・・」
「ん?」
「あ、あのロボはライグが作ったの?」
何を言っているの?と言わんばかりにシロの眉がピクンと動く。
「んあ?あぁ、あれか。あれは何ていうか貰いモンだ。変な科学者の手伝いを依頼されてな。お前も見かけたんじゃないのか?結構長いこと手伝い探してたっぽいからなぁ。」
「知ってる。胡散臭そうだったしめんどくさいから断った。」
「はぁ?なんだよそりゃ。手伝ってやれよ、俺が声かけたとき泣きそうだったんだぞ、アイツ♪」
ガハハと笑いながら、コーヒーを飲むライグ。それをじっと見つめるミサキ。視線に気づいたライグは、
「アイツなぁ、世界征服ロボとかふざけた名前でさ・・・。」
「うん。」
二人はそれから他愛もない話をしながら、家族のような温かい時間を共有した。ライグの子供の頃の話だったり、ミサキがアルマ達と出会った話だったり。途中からシロとミニーも参加して久しぶりの他人が入った団欒はミサキ達3人の心を癒やしていった。2杯目のコーヒーを飲み終えたライグは、マグカップをテーブルに置くとおもむろに
「なぁ、ミサキ。」
「ん。」
「そろそろ本題に入るぞ。」
「ぎくっ。」
「口で言うな。ったく、昨日も言ったけどな、なってやるよ。あー、でもアレな。恋人とかじゃないぞ?この間のあれは吊り橋効果ってやつだからな?ダチってやつな。あ、アレだ、お友達から始めましょうってやつな。いいな?」
「ライグ・・・。ほんと?」
「あぁ。」
「ほんとに友達になってくれる?嘘じゃない?」
「あぁ、嘘じゃない。」
「わかった。受けて立とう。」
「なんでやっ!」
ライグはミサキに盛大なツッコミを入れると、シロが小声で
「マスター、照れちゃって可愛いのれす。」
とボソッっと呟いた。ミサキはその言葉にみるみる顔を赤らめて、
「ラ、ライグ。」
「ん?どした?」
「・・・・・・・・・ありがとう。」
「おう。よろしくな・・・って、おい、なんで泣いてんだよ!」
「えう・・・」
ミサキはポロポロと涙を流して笑顔で頷いていた。その姿を見たライグは自分の胸が締め付けられるような感じに襲われた。そして、ミサキの手、指先、肩、黒髪、耳、顔、全てに目が離せない自分に動揺して、思わず立ち上がり
「と、と、友達ってことは、だ。当然、今後一緒にパーティ組むんだからな。お、俺のパーティはハードなクエストが多いからな。し、し、しっかりついてこいよ。長い髪も邪魔になるかも知れないからな。ぽ、ポニーテールとかなんとかしとけよ?これから暑くなる季節だしな。き、切ってもいいかもな。」
ライグはしどろもどろになりながら、わさわさと頭を掻きながらミサキたちとは目を合わさないように斜め上を見ながら言ってのける。ミサキはそんなライグにほんの少しだけ微笑んで、
「うん。わかったリーダー。」
「リーダー・・・お、おう。」
ライグはポリポリと鼻の頭を人差し指で掻いて返事した。
その後、ミニーは先日のお礼と稼動橋の食料品屋で食材を買い出すと、夕飯を準備した。
「なぁ、一緒に食っていかないのか?こんなご馳走・・・。」
ガレージを後にし、出口まで来ていたミサキは振り返り、
「うん、家で他の子が待ってるから。」
「そうか、そりゃ残念だな。また来いよ。」
「恋よ?」
「ちがう!」
「テレチャッテ ライグ カワイイ。」
「なんで棒読みなんだよ!」
「レディだからよっ!」
「ホントかよ!」
「嘘よ!」
「なんだよ!」
「わかんないっ!ミニーもお話したかったの!」
「はぁ。そっか、またこいよ。」
「ハイ♪」
こうしてミサキの突撃は無事に終わり、
「マスター?」
「ん。」
「よかったですね♪」
「・・・・・・ん。」
シロの言葉にミサキはアップタウンの空に広がる星の海を見上げながら小さく返事を返す。二人の小さなやり取りを少し先を歩いていたミニーが
「なにがー?ねー、マスターなにがー?」
二人の元に駆け寄ってきた。ミサキはミニーの頭を撫でながら、何も言わずニッコリ微笑んだ。
「もー、ずるいー。ミニーも教えて欲しいのー。」
「ミニーちゃん、お淑やかはどこに行っっちゃたです?」
「いいのー、今はれでぃじゃなくてもー。知りたいのー。」
「ハイハイ、お家に帰ってご飯を食べて、一緒にお風呂に入ったときにシロがこっそり教えてあげるです。」
「ホント?」
「あい♪」
「それじゃ帰ろー!」
ぴょんぴょん飛び跳ねながら歩くミニーを先頭に星のランプの下、仲の良い小さな家族は家路についたのだった。
それから数日後、ガレージ庭の時間が止まっていた。
「な、な、な、な・・・。」
「ライグが言ったから、役に立ちたいから。切ってきた。似合う・・・?」
ライグは持っていた工具を地面に落としてしまった。久しぶりに出会ったミサキは、髪をあの長くツヤのある黒髪がバッサリと切られておかっぱ姿になっていたからだ。大きな猫耳のカチューシャはそのままで。
「そうか・・・って、お前あんな長かった黒髪っ!綺麗な黒かmゴホン・・・。そんなバッサリ切らなくてもよぉ・・・。」
「・・・・・・似合わない?」
少し不安げな表情で、いつもの一本調子の語尾が僅かに震えている。ライグは人差し指で鼻の頭をポリポリと掻きながら、工具を落としたせいで空いた右手をミサキの頭に乗せて、
「に、似合ってるぞ・・・。少なくとも・・・俺はか、か、可愛いと思う・・・ぞ。」
「うにゃ。」
わしわしと頭を撫でる。
そう少しだけ乱暴に。
もちろんわざと。
理由は聞かないでやって欲しい。
それがきっと今の彼への優しさ・・・というものだ。
「それじゃ、パーティ組むぞ!仲間見つけてクエストこなして、ガンガン稼ぐ!」
「ん。わかった・・・。あ、仲間になりそうなのいる。」
「お?なんだよ、友達いんのかぁ?」
「友達・・・どうだろう。友達って言われたことないけど、優しいフォースマスターを知ってる。女の子だけどたゆんたゆんだけど男前。」
ミサキの説明にライグは額に手を当てると、
「たゆんたゆん?女で男前?意味わかんねぇし。まぁ、それでも会わないわけにはいかないよなっ。よし、行くぞミサキ!」
「きっといいパーティができる・・・気がする・・・たぶん。」
「ったく・・・ま、それでいいんじゃね?そんなもんだぜ。最初なんてな。」
今日、新しいパーティが生まれる。
きっと最高のパーティ。
たぶん。
F i n
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