めりーくりすますっ!イヴ!
らしいです、ハイ。世間では。
さてさて、イヴに間に合わせてECO生観ながら書いたお話!
とってもザンネンなお話。
ひがみとかリア充~とかそういう感情は一切無しで、ふと頭に
浮かんだものをテキストに。
感想は期待しませんwだって、即興だし、私の好きな終わり方じゃないしwでも、せっかく書いたので載せてみますw
あ、楽しい気持ちの人は読まないほうがいいかもよ?
それでは始まります。
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タイトル:『永遠のイヴ』
歩道橋の真ん中、手すりにもたれかかった状態で私はスマホのホームボタンに触れる。
「拓ちゃんの・・・バカ。」
空を見上げる。昼間の晴天が嘘のような曇り空・・・と言っても、実際に雲が見えるわけではなく、夜空に浮かんでいるはずの月も星も見えないから曇りだと認識できる。ただそれだけ。私はもう一度スマホのホーム画面に目をやる。現在時間・12月24日午後8時35分、現在地・新宿南口。世間ではクリスマス・イヴ、時間的にもゴールデンタイム。本当なら私もその世間の金色に輝く時間を共有しているはずだった。しかし私、片桐志穂はたった今その予定はすべて白紙になった。たった数文字のテキストデータと共に。
【志穂ごめん、仕事のトラブルで今日ムリ】
私はもう一度さっき届いたメールを開き、届いたテキストを見つめる。このメールを寄越してきたのは、鈴木拓、私の彼氏。私たちが付き合いだして1年、出会って28年、記憶的には22年。そう、私たちは幼馴染なのだ。家もお隣同士で家族ぐるみのお付き合いというやつだったり、産まれた病院が同じで彼と私の誕生日が1日違いだとか、そのせいもあってかずっと一緒に過ごしてきたというか。まぁそんな腐れ縁的な状況から、とうとう去年私たちは幼馴染というタグの他に恋人というタグが追加された。私は小さな輸入販売会社の事務、彼は大手自動車メーカーのサラリーマン。彼は当然、毎日忙しかったが、そこはお隣同士というマッピングが逢えないという最悪なフラグは解消してくれていた。
【ねぇ、今日中に終わりそう?】
私は手にしたスマホで、意味のない一言を入力し送信する。私自身こういう事を言う女性が嫌いだ。特に『私と仕事どっちが大事なの?』とか、そんな意味のない比べられない二つを無神経に秤にかけてくるような女性が嫌いだ。好きな人がいるから仕事が頑張れて、仕事があるから好きな人と一緒にいられるんじゃないか。以前、会社の同僚にそんな事を言ったら、思いっきり引かれた。だからこれは現在私の心の中にずっと留めている。けれどその持論を私は今壊そうとしている。
「はぁ。」
溜息がでた。口からこぼれる溜息が白くスマホの画面に当たる。画面が白く曇った瞬間、画面に新着メールの表示。私は急いでメールアイコンをフリックする。
【わからない 終わったら連絡する。】
素っ気ないテキスト。もう少しくらい何かあってもいいんじゃないかと思ってしまう。漢字含め3文字とか4文字とか。私はそのまま返信画面に切り替え
【 バカ 】
と一言だけ入力し送信。私が嫌いな女性と同じに成り果てた。けれど、こうなるには十分な理由がある。と、私は自分で自分を擁護する。今日は、彼と付き合いだしてちょうど1年。そして私たちが恋人になって初めてのクリスマス・イヴなのだ。
だから今日は特別。
だから今日は二人で過ごしたかった。
そして・・・。
そんな私の甘い予定も見事に砕かれ、私はスマホをコートのポケットに仕舞い
「はぁ。どうしよっかな。とりあえずご飯・・・かな。」
コートの襟をピッと立てて、改札へ歩き出した。
気が付けば、彼の会社がある新橋のガード下の立飲み屋いた。日本酒を片手に手羽先と軟骨の唐揚げに手を伸ばす。数年前の私では想像もできなかったことが、さすがに三十路ゲートが目前に見えてくると、こういうところにいる事に疑問を持たなくなる。人間って不思議。
「すいませーん。おかわりー。」
「はーい、すぐお持ちしまーす。」
空になったコップを高々と持ち上げ、おかわりを注文。すると
「お姉さん、いける口?」
同じコップを持った四十半ばの男性と部下らしき二十代、三十代の男性が声をかけてきた。
「え?」
「課長、ダメですって、すいません。ちょっとペースが早くて・・・。」
「バッカ、別にいいだろう!一人で飲むより二人、二人より三人じゃないか。ほら、お姉さん乾杯しよ、乾杯。」
突然声をかけられて戸惑ったが、家族でクリスマスを過ごすつもりをしていたら、奥さんとお子さんだけでネズミの国へ出かけてしまわれたらしく、独りぼっちで寂しいらしい。一緒にいた二人は部下で二人とも一緒に過ごす人がいないからと付き合ったそうだ。これはアレだ、類は友を呼ぶというやつだ。きっとそうだ。私はお気に入りの手羽先と軟骨の唐揚げのお皿をサラリーマン3人組のテーブルに移し、
「それじゃもう一回、乾杯しましょ。乾杯っ!」
私の胸にできていた隙間に、このわずかな時間をあてて埋めることにした。
それから陽気な寂し組は、陽気に愚痴をこぼしながらソレをあてにお酒を飲む。気が付けば時計は午後11時を指していた。シンデレラよろしく私たちはそこで解散し、駅へ向かう。頬をなぞる冬風が火照った体の熱ベールを一枚一枚剥がしていく。心地いい。あまりの気持ちよさに私は駅へ向かう足の向きを少し変えて、公園に入った。夜の公園はカップルで賑わうかとおもいきや、そこは冬。人影なんて全く無い。所々に設置された街頭が悲劇のヒロインを演出しやすいようにとポツンポツンと地面にスポットを当てる。私はベンチに腰を下ろすとポケットからスマホを取り出し、スリープを解く。時刻は11時42分、あと十数分で今日が終わる。私はロック画面に映し出された現実に溜息を一つ落とし、
「拓ちゃんのバカ・・・。」
もう一度小さくつぶやいた。
ヴーン、ヴーン、ヴーン
「ひゃっ!」
私の言葉に反応するようにスマホが震えた。私は驚いて思わず落としそうになったスマホを抱きかかえるように両手で持つ。そこには新着メールの表示。心が高鳴る。私はメールのアイコンをフリックして受信フォルダを開く。
「あ・・・拓・・・ちゃん・・・。」
【ごめん!今会社出た。もう家?】
メールタイトル空白のメールの本文に並んだ数文字のテキストは私の世界を明るく照らす。私は急いで返信画面を呼び出し、
【ううん! 今、新橋駅近くの公園!生涯センターの!】
急いで自分の居場所を入力すると、急いで返信。すると、間髪入れず新しい返信。
【わかった それじゃ時計のとこで待ってろ】
逢える。彼に逢える。
【うん、待ってる】
それだけ送信して、画面の右上に表示された時計を見る。11時48分、
「逢える・・・拓ちゃん・・・。」
私は嬉しくて、嬉しくて、涙が出そうなほど嬉しくて、けれど彼に逢うまでは絶対泣かないと、目元にじんわり浮かび始める涙をグッと堪えて、公園の時計の元へ走る。そして暫くし、私は今か今かと公園の入り口に視線を送っていた。そのときだった、向かいのコンビニの脇路地から髪を乱し、ネクタイを緩めた彼が姿を見せた。私の胸がキュンと鳴って、
「拓ちゃんっ!」
私の声に気付いた彼はそのまま小さな袋を持った左手をあげて、笑顔で駆け出した。
「志穂っ・・・・・・。」
彼の唇がそう動いたはずなのに、彼の声は聞こえなくて、代わりに私の耳に飛び込んだのは、甲高いスキール音と段ボール箱を叩いたような音。
「あ・・・・ひ・・・・た・・・・く・・・・どう・・・」
私は声が出せなくて
今起こった出来事が理解できなくて
彼に送ったバカを後悔して
彼に好きと伝えられなくて
私はその場に座り込み
彼に逢ったら流そうと思っていた涙を
こんなカタチで流してしまった。
公園の時計が12時を指し
今この瞬間を覆い隠そうと
空から白い悲しみが舞い降りる。
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