キサラギとの契約について説明を受けるトーコ。しかし、悪魔との契約にはその代償がつきもの。キサラギと契約を結んでしまうのか?それとも・・・
それでは、第3話いってみよー!
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「さて、その報酬・・・だけど・・・。」
私は固唾を呑んでキサラギの口から紡がれる次の言葉を待つ。でも、この契約を私は結ぶのかまだ分からない。けれどコレを聞いたらもう引き返せないよと、私の中のもう一人の私が訴える。
「ち、ちょっと待って、わ、私まだ契約するとか言ってないし!」
私の言葉にキサラギは、幼さを少し残した大きな可愛い瞳をキッっと釣り上げ、今までのソレとは全く違う抑揚のない声色で
「何を言っているの。トーコ・・・アナタは私を召喚したのよ。悪魔を召喚してそのまま何もなかったことになんて出来るわけないしょう?悪魔の召喚はつまり、悪魔との契約を意味するのよ。」
そして、涼しげな口元を少し緩め
「もう、逃げられないのよ。トーコ・・・」
最後の言葉に、私は恐怖を覚えた。取り返しのつかないことをしてしまったという後悔よりも、ただただ恐怖。
「そ、そんな・・・。」
震える声で、絞り出せるだけの精一杯の言葉を紡ごうとした時だった。
「なぁーんてねぇ、アタシみたいなキュートな子がそんなこと言っても迫力ないよねー☆」
雰囲気一変、キサラギはさっきまでの陽気な声色にもどりチロッっと舌をだす。
「へ?え?え?えええええええ?!」
私は何がどうなっているのか全く理解できない。
「何?どういうこと?え?え?」
「アタシらの仲間内でさ、契約者と対峙した時には、まずこうやって相手になめられない様にするんだって言うんだけどさぁ。ホラ、他の悪魔と違ってアタシってばキュートでしょ?それに、そういうのがウリじゃないしさ、だから似合わないなーって。トーコも全然怖くなかったでしょ?」
突然のカミングアウトに、私は顔を引きつらせながら
「う、うん、ぜ、ぜんっっっぜん怖くなかったよ!これっぽっちも!逆に、カワイイなっておも・・思ったくらいだよっ!あはは、ホント、キサラギってかわいいなー!あは、あは、あははは!」
精一杯ごまかしてみたが。
「だよねぇ(ニヤ)。やっぱり、キャラに合わないことはしてもムダかー(ニヤニヤ)。」
キサラギは頭の後ろで腕を組んで、意味ありげな表情でチェッっと舌を鳴らす。
「で、でさ、その報酬・・・って、一体なんなの?」
私は気を取り直して聞き直す。キサラギは、再度テーブルに腰かけると
「それはねトーコ。アナタのココロを貰うわ。それが報酬よ。」
キサラギは、大きな瞳でまっすぐ私を見つめる。その時、私はゾクッと背中に悪寒が走る。
「ココロ?私のココロ?それって、どういう意味なの?」
言われた言葉の意味がハッキリと理解できない私はキサラギに聞き返す。しかし、
「それは言葉の通りよ。トーコのココロを貰うの。それ以上も以下もないわ。ハイ、説明終わりっ!それじゃ、サクッっと契約しちゃうよ。」
キサラギはテーブルから立ちあがると、周りをキョロキョロと見渡す。
「あれ?私の眠ってた雫は?」
「雫?あ、箱の事?それなら・・・って、ちょっとまっ・・・」
「あー!床に落ちてるしー!ちょっと、トーコもっと丁寧に扱ってよ!コレがないと契約出来ないんだから!それにコレ、アタシのベッドでもあるんだからっ!」
雫型の箱を両手で抱えると、パタパタと羽をはばたかせて私の目の前に浮きあがる。
「さ、契約するよ。」
「ちょっとまって!まだ私契約するって言ってない!」
「なによ?さっきも言ったでしょ?私を召喚するってことはイコール契約するってことなのよ?」
呆れた顔で私を見つめる。
「でも、さっきのは嘘だったんじゃないの?」
「嘘なんか言ってないよ。さっきの内容は全てホンモノ。だからトーコ、アナタは逃げられないのよ?」
どうしよう、このままじゃ本当に契約させられてしまう。私はなんとか阻止できないかと思考を巡らせる。
「あ!それに私、好きな人いないから契約しても手伝うことないよ!」
「大丈夫よ。この契約に期限はないからのんびり待つわ。」
「でも、私が好きな人が出来てもその人に恋人がいるとは限らないし!」
「それも大丈夫。そもそも私を召喚できるってことは、少なからずそういう素質か未来があるってことだから。」
「でもでも、ホラ、えっと、あの、その、」
ダメッ!これ以上の言い訳が!思いつかないっ!はぁぁぁ、ボキャブラリーのない私って不幸!
「あああ!もうっ!!ごちゃごちゃ言ってないで、右手を出す!」
キサラギは私の右手首を掴むと、雫型の箱の真ん中に埋め込まれた赤いハート型の石に触れさせる。
「え?」
キサラギはそのまま何か詠唱を始めた。
「Flamme von der Liebe, die ich, der Schutzfan und eine Sache zwischen du des Liebesfeuers tauschten.Ich mache hier einen Vertrag.Ich behalte Liebe davon mein Sie・・・。(我、愛の守護魔と汝との間に交わさんとするは燃え盛る愛の炎。ここに契約を結ばん。我が汝の守護魔とならんことを!)」
キサラギの詠唱と同時に眩い光が辺りを包み、ソレが終わった瞬間に光も消えた。一体何が起こったのか私は未だ一つも理解できない。いや、理解したくない。けれど一つだけ、一つだけ理解出る。これは現実なんだと。それが理解できたのは、私の胸が焼けるように熱い感覚があるからだ。
「ふぅ、契約完了。トーコ、これからよろしくね。」
先ほど詠唱をしていた時とは打って変って、無邪気な笑顔で右手を出してくるキサラギ。これが契約なの?これが契約の力なの?さっきまでアレほど嫌だとしたくないと思っていた気持ちが今はキレイに消えている。むしろこれから起こることが楽しみにさえ感じている。
「よ、よろしく。って、ええ!?契約しちゃったのっ!?」
「はぁ、まだ言ってるよこの子・・・。トーコ、アナタ本当に頭悪いの?」
「そっ!そんなことないっ!あぁ、もうわかったよ!いいわ、もうどうにでもなれよ!でも、契約したんだから素敵な愛を保障してよ!」
もうこうなったらヤケクソ。どうにでも、いや、どうにかなるでしょ!私は出された右手をギュッと握って、自分の不安を決意に変えた。
・・・To be continue
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