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各月の日記

YUNIKOさんの日記

(全員に公開)

2014年
02月17日
23:24

とある絵テロリストさんの・・・

ちょっと本編は休憩して、
とある絵テロリストさまの夏コミに発刊されたご本に寄稿させて
いただいたお話を、このたびココで公開させていただくことを
許可いただきましたので、アップします。
短いお話ですけど、私自身けっこうお気に入りです♪

えめるさま、公開をご快諾くださいましてありがとうございます。
でわでわ、お時間の許す限りごゆるりと・・
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『緑×理×感謝 そして』

 半年前の夜、私は冷たいダンボールの感触とは違う柔らかく暖かいベッドで、忘れかけていた私以外の体温を感じながら眠りについた。そこは、どこまでも続く赤黒い空と赤い月の世界ではなく、蒼い月が上り真っ暗な闇を白く輝かせる世界・・・。小さなボロボロのダンボールで吹き抜ける乾いた風を凌ぐ必要もなく、小さな身体に突き刺さるような冷たい雨に震える必要もない。隣で眠っているドミニオンの女剣士・エメリ様。私をあの冷たい世界から救い出してくれた人。私に鈴緑という素敵な名前をくれた人。私のご主人様。この人には一生尽くしても尽くしきれないモノをたくさん貰った。私はそれに少しでも応えたい・・・。けれど、私には魔法を使うことができない。おぼろげな記憶の片隅に魔法を使ったことがあるような無いようなそんな欠片はあるのに。でも、詠唱を唱えようとすると胸の辺りにぽっかり穴が開いたような感覚に陥り、言霊が全く浮かんでこない。もう半年。一向に回復の兆しを見せないまま、私は心に巣くう焦りと戦っていた。
 そんなある日の夜、私はこっそりとベッドから抜け出し、夜の闇に包まれたアップタウンを歩いていた。気が付けば大きな黒い門の前、黒の聖堂と呼ばれる建物の前にいた。私はそっと扉を開くと聖堂の中へ足を踏み入れる。一歩一歩ゆっくりと。

「ほう、こんな夜更けに誰かと思えば猫か。どうした?」
「ひっ・・・。」

誰もいないと思っていた鈴緑は、奥から聞こえてきた声に身体を硬直させる。その声は低く、太く、でも決して怖くない声。その声は私の呼吸とは関係なく降ってくる。

「こんな時間に一人でここへ来るとは・・・。己の存在意義に迷うたか。それとも・・・気付いたか。」

鈴緑は服の胸元を握る左手にギュッと力が入る。小さく深呼吸すると、キッと闇を睨み付けるように視線を投げ、

「私、ネコマタなのに言霊が使えない。ううん、初めから使えないんじゃない。言霊を紡ごうとすると、穴が開いたように言霊の部分だけが見つからないの。私の記憶に・・・。司祭様っ!私はどうすれば戻れるのですか?何をすれば元の私に、ネコマタになれるのですか!」

鈴緑の声は闇に吸い込まれ、壁があるはずなのに反響せず消えていく。

「なるほど。私を司祭と呼ぶということは、もうあの時の魂は浄化され本来の魂へと還ったか。ならば問おう猫よ。お前はその力を取り戻し何とする。」

闇の中からゆっくりと姿を現したのは、司祭服を纏ったドミニオンの男。この黒の聖堂の司祭であった。司祭の言葉が鈴緑の頭に針を刺すような軽い頭痛を呼び起こす。鈴緑はその痛みに一瞬表情を歪めるが、間髪入れず答える。

「私はっ!この私を救ってくださったご主人様に、エメリ様に返しきれないほどの恩義があります!例え一生の全てを捧げても報いることができないかもしれません。それでも!だからこそ、少しでも私がご主人様にできることをしたい。そのためには言霊が必要なんです!ご主人様の盾となり、ある時は癒しの翼に。たとえこの御霊が消えようと私は・・・わた・・し・・・は・・・。」

勢いよく出たはずの言葉は、いつしか溢れ出す涙によって勢いを失い、最後は言葉に詰まってしまった。鈴緑の声をじっと聴いていた司祭は、

「よかろう、ならば猫よ。いや、もう主から名を授かっているなら名で呼ぼう。鈴緑よ。お前の願い叶えることはできる。しかし、世の理はすべからく対価が伴う。お前にその覚悟はあるか?」

司祭の放つ眼光は鋭く鈴緑の胸に突き刺さる。流れる涙を両手で拭い力強く頷く。司祭はフッと口元を緩めると、

「そうか。それではついて来い。その願い叶えてやろう。」

聖堂の奥へと歩き出した司祭のあとを鈴緑は一歩一歩踏みしめるように奥へとついて行く。
 祭壇の裏側に隠された小さな隠し扉を開けると、地下へと続く階段が現れた。司祭たちは更に暗いその奥へと足を落としていく。しばらくして視界が開けたそこは、聖堂の地下とは思えないほどのホールに出た。壁際に並んだ松明がぼんやりと丸く膨らんだ天井を照らし、幻想的な雰囲気を作り出している。司祭は中央近くまで歩みを進めると、その手前で立ち止まりゆっくりと振り返った。

「さあ鈴緑よ。お前が望む未来がここにある。」
「え・・・。これ・・・私?」

ホールの中央に置かれた石の祭壇。そこに自分と同じ緑色のネコマタが眠っていた。その姿を目にしたとき、鈴緑の胸が焼けるように熱くなるのを感じた。

「この子・・・」
「これはお前だ。あの忌まわしき大戦と呼ばれた時代・・・。主人を失い暴走した魔力を私が封印した。当時の記憶と共に。これに触れて祈れば、ソレはお前の中に取り込まれ昔のままに戻ることができる。しかし、先ほども言ったが世の理には・・・。」
「その対価って・・・何を差し出せばいいんですか?」

司祭は鈴緑の瞳を真っ直ぐ見つめ静かに答える。

「それは声だ。」
「声・・・私の・・・もうしゃべれないってことですか?」
「そうだ。鈴緑、お前はこの力を手に入れて主人の盾にそして時には癒しの翼になりたいといった。しかしそれは主人とお前がお互い固い絆で結ばれていなければ実現しない。」

司祭の言葉に鈴緑の表情が固くなる。

「しかし、実現できるなら言葉は不要になるだろう?互いの心が固い絆で結ばれているのだからな。」
「だから・・・声・・・私の・・・。」

そのときだった。ホールの入り口から聞き覚えのある声が響いた。

「だめっ!そんなことしなくっていい!緑ちゃん!」
「え?ご主人・・・さま?どうして・・・」
「アタシは緑ちゃんに盾になって欲しくて聖杯を満たしたんじゃない!アタシは、アタシは緑ちゃんと友達になりたかったの!一緒に楽しく暮らしたかったの!だから、だからそんな事言わないで!考えないで!」

エメリの呼吸は荒く、髪を額に頬に貼り付け、全身汗だくで普段の飄々とした雰囲気は微塵も感じることができない。そんなエメリの姿を見た鈴緑は、祭壇に眠る自分を背に振り返り。

「ご主人様?そんなお姿で風邪を引いてしまいますよ?私は、鈴はご主人様に助けていただいてからのこの半年、いっぱい素敵なものを頂きました。本当ならばとっくに消えていた私にこんな素敵な日々を与えてくださったんです。今度は鈴がご主人様の役に立ちたいのです。それに無くなるのは声だけ。鈴がいなくなるわけじゃないんですよ?いつまでもお傍にいます。いさせてください。」
「いや・・・そんなの・・・ちがうよ・・・みどりちゃ・・・ん。」

エメリは声にならない声で、酸素を求める身体に鞭を打ち言葉を搾り出す。しかし、出たのは声ではなく涙。

「これで吹っ切れました。このままご主人様に会わず声を失うことに迷いを感じていましたけど、こうやって最後に・・・さ・・い・・ごに・・・グス、ご主人様に・・・すずの・・・しゅじゅの声が聞いてもらえる・・・んでしゅ・・からぁ・・・グス。ごしゅじんしゃま・・・しゅじゅを・・・鈴を救ってくださってありがとうございます。これからもよろしくお願いしますね?」

そういって、鈴緑はにっこりと今までにも見せたことのない優しい微笑を見せた。頬に一筋の涙を流して。
  • ECOの創作

コメント

1番~7番を表示

2014年
02月17日
23:47

(∩´∀`)∩ワーイ ワー・・・・゚・(´Д⊂ヽ・゚・

やっぱネコマタ話はだめだ・・・・なける・・・・幸せになっとくれ
2人とも(っ_;)

2014年
02月18日
01:19

なんとも切ない・・・ ;_;

二人が幸せに暮らしている続編はいつ頃うpされますか!?(ぇ

2014年
02月18日
06:28

エメリさんがホールに入ってきたとこでもう泣いてしまいました…

幸せになって欲しいです;;

2014年
02月18日
19:14

>>ふむたん
読んでくれてありがとー♪
そうよね、やっぱりネコマタイベントがECO史上一番ステキな
物語だと思うんですっ!

>>るみねちゃん
読んでくれてありがと~!
切ない感じなんですけど、けなげな緑ちゃんを感じてもらえたら
嬉しいです♪

>>エコイストさま
読んでくれてありがとー!
+。・(Pд`。q)゜。+ ちゃいました?うふふ♪
覚醒するイベント、プレイ時間ではホント数秒のシーンなんですけど
こういう物語があって覚醒するとかちょっとロマンチックじゃないですか?w

けなげな緑ちゃんとエメリさんとの絆をこれで感じてもらえたのなら
嬉しいです♪

2014年
03月27日
01:33

その節は素敵なお話提供をありがとござましたっ!!!
サークルカットでお茶を濁して逃げます。

|ミ

2014年
03月27日
02:02

>>えめるたま
やーんっ!えめるたまの久々コメや~。゚(゚´Д`゚)゚。
こちらこそ拙い文章のくせにページいっぱい使っちゃって><

また遊びにきてくださいねっ!

2014年
03月27日
02:22

また遊びにきt・・・っとw
例のブツを送り付けました!

今度はゆにっこの溜まったお話を読むぞぉおおおっ>w<

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