キサラギとトーコのお話が頭に色々浮かんでは消え、消えては浮かんでという感じなので、書ける時にがんばって書こう!とおもいますw
タイタスに誘われ、夜のアップタウンに向かうトーコ。
ティタのことで話があると言われ
ティタの記憶を覗いてしまったトーコは
どこか後ろめたくて
どこか申し訳なくて
第26話 はじまります。
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第26話 ココロの欠片~ティタ復活篇2~
夜も更け店の掛け時計の針が2本仲良く口づけする時間、本日の営業は終了する。
「トーコちゃん、リーンも掃除終わったら上がっていいよ。」
「「はーい。」」
1日の仕事が終わり、バイト二人はふぅっと息を吐く。リーンが肩に手を当てて、
「今日ってなんか夜もいつもよりお客さん多かったですよねぇ。もうマジ疲れちゃいましたよぉ。」
あ゛~と、発音に悩むうめき声をあげて首をコキコキと鳴らす。私はプッと噴き出して
「もう、リーンおじさんくさいよ。だめだよ?私より若いのに・・・って若いよね?」
「え?なんでソコ疑問形なんです?きっと私の方が若いですよ?」
「え?なんでソコ疑問形で返すの?リーンいくつ?学生さんだよね?」
「え?私学生って随分前に終わりましたよ?」
「え?」
「え?」
「あはは♪嘘ですよー!まだ学生っすよ。」
「もう!」
「「あははは☆」」
などと他愛もない会話を楽しみながら、帰り支度を始める。けれど、私の心は今ここにない。昼間のタイタスさんとの会話がずっと私の中に広がっている。私は更衣室の時計を見る。0時20分、今から帰って着替えてなんてしている時間は無い。いや、そうじゃない。無いんじゃなくて我慢できないのだ。
「マスター。今日はすごく汗かいちゃったんでシャワー借りて帰りますねー。」
「あぁ、いいよ。ちょうど水仕事はひと段落したから気兼ねなく。」
私は更衣室にあるシャワールームで汗を流し、身だしなみを整える。
「あれぇ?トーコさん、どうしたんですか?こんな時間からお出掛けです?あっ!もしかしてもしかして!これから待ち合わせとか?!この時間だとお泊りですよね!」
またも、おもちゃを目の前にした子猫が瞳を爛々と輝かせ始める。私は、ほんの少し焦る気持ちを落ち着かせて、
「違うよ。あ、でも人には会うから・・・。でも、リーンが言うそういうのじゃないよ。」
「えー?またまたぁ♪」
「タイタスさんに会うんだよ。ティタのことで。」
「あ・・・。ごめんなさい・・・私・・・。」
子猫がしゅんと耳を垂れるように、リーンは申し訳なさそうに下を向く。私は、普通に笑顔でリーンの前に立ち、
「なんで?謝る必要なんてないよ。ただ、タイタスさんは私にとってもお兄ちゃんみたいな感じだから、リーンの妄想通りの展開にはならないかな♪」
リーンのおでこを人差し指でつつく。
「あぅ・・・トーコさん、ホントにごめんなさい。私ってバカだからすぐにそういう事言って嫌われちゃうんですよね。あはは・・・。」
それに対してリーンは鼻の頭をポリポリと掻きながら、目線はこちらには向けずにいる。私はそんなリーンが可愛くて、
「気にし過ぎだよ。ほら、シャワー浴びておいで。リーンは元気が取り柄で一番のチャームポイントなんだから♪」
頭を優しく撫でる。リーンは大きく笑顔を咲かせてうんと頷くとシャワールームへ入っていった。私は荷物を手に取り、少し急ぎ気味で待ち合わせの場所に向かった。
深夜のアップタウンは昼間の喧騒が嘘のように静かになる。酒場は平原とダウンタウンにしかないので、この時間はまず人が存在しなくなるのだ。深夜限定のゴーストタウンをゆっくりと歩いて目的地を目指す。白の聖堂の横を抜け、目的の場所が見えてきた。そこにはタイタスの姿があった。私は小走りで中央広場へ近づきタイタスに頭を下げた。
「遅くなってごめんなさい!」
タイタスはいつものクールな感じとは違う優しい言葉遣いで
「大丈夫さ。トーコも遅くまで仕事なんだな。それよりトーコこそ大丈夫か?もしも疲れているようなら日を改めて・・・。」
「大丈夫ですよ。さっそく・・・って、いったいこれから?」
私はタイタスの顔を見上げて質問してみた。
「あぁ、これからある場所へ行く。」
「ある場所?」
タイタスは私を一瞬見つめてから、空をふと見上げ
「そうだ、トーコ約束してほしいんだ。これから見ることは秘密にしてほしい。エミルにもルルイエやベリアル、その他の誰にも・・・。」
「う、うん。」
「うむ、それじゃ行こう。タイニー。」
タイタスは小さく呼ぶと熊のぬいぐるみ・タイニーが現れた。タイニーは私の姿を舐めるように見て、
「キミがトーコ?」
「は、はい。」
「ふうん、・・・あぁ、たしかに契約の印があるね。見た感じ普通のタイタニアなんだけどなぁ。どうやって守護魔さまと契約できたんだい?・・・って、そんなことはいいか。オーケー、それじゃ転送するよ。」
「え?」
タイニーは私とタイタスの前に立つと、星の付いたステッキをくるくると回す。すると、眩しい光が出た訳でもないのに、目の前が真っ白になって眩む。思わず閉じた目を再び開いたとき、目の前に広がるのはどこまでも広がる夜の砂浜だった。
「あれ?ここは・・・見たことある景色・・・もしかしてタイニーアイランド?」
キョロキョロする私の肩に手を置いて、
「そう。タイニーアイランド。世界の歪みさ。」
「世界の・・・歪み?」
私は言葉の意味が解らず、いや、それぞれの単語自体の意味は知っている。けれど、それが繋がって言葉になった時の意味が理解できない。思わず、その言葉を口に出してみた。
「うむ、ここはね、常世にも現世にも属さない中立の世界。生きていない、死んでいない。存在していて存在していない。そんな矛盾の空間なんだよ。」
「難しい・・・です。」
突然タイタスの口から出た哲学的な言葉に私の思考は答えを出せないでいる。すると、タイタスは肩に置いた手を背中に回し、私をそっと押し出すようにして
「実際に見てみればすぐに理解できるよ。ついてきてごらん。見せてあげるよ。」
「え?あ?うん・・・。」
タイタスはそう言って、私の前を吊り橋の方へ歩き出した。私はタイタスの後ろを黙ってついて行く。本当は色々聞きたかったけれど、聞いてはいけない気がしたから。それに夜のタイニーアイランドは、星祭りの時以外来たことなかったので静寂に包まれたこの雰囲気に呑まれてしまったのかもしれない。そして、歩くうちに違和感を覚えた。ここにはタイニーがいない。吊り橋の両端にいるはずのネイティブタイニーとパイレーツタイニーがいない。それどころかこの島全体がタイニーアイランドであって、タイニーアイランドじゃないような不気味とさえとれた。
「トーコ、止まって。ここから、アソコの泉の方を見てごらん?」
「え?は、はい。」
岩のトンネルを抜け、左手にある小さな泉を草陰から覗くように見てみると、そこには一人の天使・・・タイタニアの少女が立って湖を眺めていた。金色の髪がまっすぐに背中まで伸び、水色のワンピースがその金色を更に引き立てる。穏やかな顔に見えるその横顔は睫毛がすうっと伸び、高くはないが綺麗な鼻筋をしている。しかし、その瞳に生気はなく、どこか虚ろなソレはこの距離から見てもわかるほどだった。
「あれ・・・ティタ・・・?なんで・・・ど、どうして・・・ティタは死んだんじゃ・・・。あのとき坑道でエミルくんに禁忌の魔術を使っ・・・。」
と、そこまで口にした瞬間私は両肩を掴まれ
「なぜ!?なぜ知ってるんだ!あの出来事は私以外誰も真実を知らないはずだっ。ティタが死んだということは仲間全員知っている。けれど・・・けれど!トーコ!どうして知っているんだ?!」
「痛い!痛いよタイタスさんっ!放してっ!」
人が変わったように狼狽し、その表情と雰囲気は圧倒されるほどで私の瞳にはうっすらと涙さえ浮かんでいた。私の泣きそうな顔を見てタイタスは慌てて掴んだ手を離し
「すまん、つい取り乱してしまった。でもどうして・・・」
「その説明は改めてします。それよりも今はどうしてあそこにティタがいるのか教えてっ!」
「それは・・・」
タイタスは話出すことに少し躊躇いを見せた。
「私が説明してあげるわ、トーコ。」
「キサラギ?!」
岩の洞窟の上からキサラギがパタパタと羽をはためかせてゆっくりと降りてきた。そして手ごろなタイニーロックに腰かけると、得意の脚組頬杖ポーズを取って二人を見据えた。
・・・To be continue
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