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各月の日記

NADEさん@魔女服はいいぞさんの日記

(全員に公開)

2015年
10月11日
22:34

【プレイ日記】仮ではない名前(長文)

「ね…アウラ」
「なんだ、ご主人。お菓子でもたべたいのか?」

狩りをしている間は命懸け
無我夢中で目の前の敵を倒して、時には全力で逃げて振り切って

ただ、ふとした瞬間に思い出してしまう


「ううん。お腹は減ってないの、そうじゃなくて ね」

「名前…そろそろ決めてあげたいんだ」


アウラの本来の姿。大きなぬいぐるみの身体は傍に居るだけで安心する
その帽子に乗りながら、私は彼女に身体を寄せて呟いた





――――そうだなぁ。君はアルカナ君(仮名)!

仮の形で命名したのは、アルカナハート・アルマを雇って初めての日
元々彼に付いてる名称だし、そのままでも良かったかもしれない
例えアルカナキングに仕えていた事を止めたとしても。本質やその人の過去は消せないのだから

でも、少しでも良いから変えてあげたかった


「…あいつは「あるかなくん」なのか?」
「そ。でも本決定じゃなくて仮、まだ決まってないの」
「むうう…私のときはそんなこと、しなかったぞ?」
「あー…」
私の隣でちょっとむくれている可愛い子。ダンプティー・アルマの「アウラ」
彼女の名前は、ファーイーストシティの帰りにネームプレートを売っている場所を見付けた事と…私も他の冒険者みたいに名前を変えたいと思って
本当に本当に物凄ーく、悩んだ末に付けてあげた

本当はアップタウンの近所・南平原でも売ってたんだけどね
そんな基本中の基本も、名前を変えられる事もそれまで全然知らなかったから。気が付いたら一緒に居て名を変えるまでに結構時間が経っていた

いやー…いざ名前を付けてみたら
「ご主人!私はアウラなのか?」
「私はダンプティー・アルマのアウラだ!」
「どうだ?いいなまえだろう?」
と、嬉しそうに何度も名前を繰り返してたのが凄く可愛くてねぇ
ああ、いけない。よだれよだれ…

私は口元を拭いながらアウラに説明を始める
「アウラは一回で決めたかったの。それに驚かせたかったからね」
「あるかなくんはおどろかさないのか?」
「ん。だって、彼は驚かせるのが得意な人だもの。勝てないよー」

それに、今の彼は何処か心が頑なで
相手への理解が乏しいままでは付けられなかったんだ

少しだけ後ろ向きな言葉を言い掛けて私は口を噤んだ





「で、段々と彼の事も少しずつ分かってきた気がするんだ」
「さすがご主人だな」
タイタニア界で大海原を駆ける大冒険を終えて。初めてのパートナーに胸を張って話せる位には<彼>から信頼されてきた…と思っている
最初は力の加減も上手く行かなくて凄くギクシャクしてた。けれど、今は自然と動きが分かるんだ

目をキラキラさせているアウラへ言葉を続けた
「それでね、名前なんだけど。水をイメージしようかなって思ったの」
「水?」
「何かね、赤い色が多いから赤っぽいの考えたんだけど…いまいち違うなぁって」
「そういうものなのか?」
「だって、アルカナ君って任せろ!とかボクに付いてきてー☆って、言う?」
「いわない。私はまかせろっていうぞ!」
「確かに!可愛い!アウラ赤っぽい!!」

小さく燃える炎、って意味ならきっと間違ってない。それなら赤い
でも。あの人は何処か揺蕩う水の様だった
突然の別れと出会い、慣れない環境でもどんな状況でも本心は見せず
そんな中でも少しずつ心を開いてくれた人
後は…願いも込めている、かも





「楽しそうだね~、何かあったのかナ」
「ん。まあね~」
早朝。飛空庭の外は湿った冷たい空気が流れてきて、気持ちは良いのだけどもう半袖ではいられない位寒くなっていた

とある悪戯をアウラと一緒に考えて、自然と顔が綻んでしてしまう
驚いてくれるかな?
喜んでくれるかな?

今日はそれを実行する日

「アルカナ君、トランプやろ!ババ抜き」
「良いね~☆アウラちゃんもやるのかい?」
「私はご主人のおてつだいだ」

私の真裏でカードを見ているアウラは凄く素直、あと可愛い
これだとアウラの様子で私の手札がどうなっているかが直ぐに分かってしまう筈
それがどんな意味を持つか、彼を試しながらの挑戦だ

「ババ抜き」は52枚のカードの中にジョーカー(ババ)を一枚混ぜ、お互いの手札から一枚引き、同じ数字が二枚になったらそれを捨てるの繰り返し
最後にババが手元に残った人の負け…と言う簡単なゲームだ



引き合いを繰り返し、互いの手札も少なくなって後4、5枚になった
ジョーカーを持っているのは私
何気にアルカナ君…私が手を出す瞬間にカード押し出したりして、つい引かせようとするものだからまんまと引っ掛かっちゃったんだよね…むうう

これ以上カードが無くなると難しくなるし、そろそろ良いかな?

彼の番。一瞬だけカードを見る目が横に逸れてアウラを見た
私はすかさず手首に仕込んだ<あるもの>をカードに忍ばせ、彼と同じ手段を使って引かせた





「…ん?」
「<無地のネームプレート>って、知ってるよね?」

私は何事も無かった様に相手の手札を引く仕草をする。勿論さっきの行動はゲームにならないから、本当に引いたりしないけど

「アヴェルス?」
「そ。前から考えててさっき漸く決まったから、書いたの」

―――にわか雨
雨の通り過ぎた後は、空気が澄んで気持ちが清々しくなる
どうか、君もそうであって欲しいと願って


「んー、名前は良いんだけどネ~」
「およ??」
特に驚く様子もなくいつもの調子で彼は言った

「キミたち。最初からバレバレだったよ~☆」
あっさり見抜かれていた。完敗だった


「ま、折角だから受け取っておくよ☆」


そう言った彼の表情は、逆光で良く見えなかったけれど
いつもより笑っていた気がした







「よーし、次行くよー。アヴァルス!」
アヴェルスだよ~、コントレイル☆」


※アヴァルス=ラテン語で「貪欲」。どんよくん
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