※白き世界のお話は今回ちょっと置いといて…同人誌で書こうと思っていた話をこちらで文章にしてみました
※時期が2014年上半期な為、今と若干異なる表現がございます。ご了承下さいませ
アップタウンから東へ東へと進んだ先に、その街はあった
大きな門を潜れば可愛い犬の警備兵、足元は石畳の他に青々とした草花が生い茂っていて、街の中に入るとぽかぽかとした陽気、そして土と作物の匂いが出迎えてくれる
石畳を歩いて畑を横切ると、ほんの少しだけ湿った空気が漂っているのを感じられた
ファーイーストシティ。冒険者になった私が最初に足を運んだ街だ
今日も今日とてペットのダンプティー・アルマ…名前は「アウラ」に決めたその子を連れて、友達と一緒に旅をしている
目的は更に東にある「イーストダンジョン」での戦い、もっと簡単に言えば狩りだ
「来ちゃったねー」
「来たんだな」
私とアウラは、辺りをきょろきょろ見回しながら友達の後を付いていく
この街に来たのはまだ片手で足りる位の回数。目に見えるものはどれもとても新鮮で、折角だし色々目に焼き付けたくなっちゃったんだよね
友達は苦笑しながら、時々私達に声を掛けては先へと促してくれる
そうして辿り着いたのは街の東の最果て、ダンジョン入り口。先程ののどかな雰囲気は、ここではもう感じられなかった
真っ暗な穴の奥からは畑とは異なる…かび臭い様な湿った〈嫌な空気〉が時折こちらに流れてくる
私は唾を飲み込んだ
ソードマンの友達は動きが素早いし強い、だから大丈夫。私も魔法で精一杯支援しよう。危なくなったら橋の上まで全力で走る事。他には…
頭の中を整理しているだけなのに、考えれば考える程身体が震えてくる
やっぱり私、こういう事向いてないよなぁ
でも戦わないと強くなれないものね。シンプルに「やれる事をやる」を心掛ける事にして恐る恐る足を進めた
「うぅ…」
後方のアウラからは、怖さのあまりうめき声が漏れている
確か彼女は元魔物…らしいけれど、こういう場所は慣れてないのかも?
自分と同じ考えの子が隣に居るって分かったらか、本人には悪いと思ったけれどちょっとだけ安心した
「…ご主人は、私が守るんだ」
「?…ダンプティーちゃん、何か言った??」
今にも消え入りそうな声が微かに聞こえた気がするけど、アウラは懸命に首を横に振って否定する
ちょっと恥ずかしくてまだ名前を呼べないから…ダンプティーちゃん、どうしたの?ともう一度聴いてみるけど…やっぱり同じ反応
その普段とは異なる、まるで小さくなってしまった姿に。私の頬は一気に緩んでしまった
「かわええ…」
よだれを垂らしそうになった所で、先頭をしっかりとした足取りで進んでいる友達から声を掛けられた
「あ、コンちゃん」
「ハイハイ?」
そして――――
「ダンプティーちゃん、仕舞ってくれるかな?」
「へ?」
「…ぇっ?」
この一言で私達の間に事件が起きるだなんて。当時の私には想像出来なかったのだった
<続く>