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各月の日記

YUNIKOさんの日記

(全員に公開)

2016年
08月03日
22:55

ECOじゃない創作。第3話

この間から書き始めたお話『幼馴染語り』。
気分転換的な自分のストレス発散という名目で続きアップです。
稚拙な文章なので恥ずかしいですが、よろしければ目を通していただけると嬉しいです。

タイトル『幼馴染語り』

---------↓↓本文↓↓----------

第3話 篠田篤史

 新入生のオリエンテーションも終わり1学期も半ばが過ぎたある日の夜、俺は一人で『おばちゃんの店』のベンチに座っていた。高校生になっても俺たちはいつも通りの生活を送っている。幼馴染4人、一緒に登校し授業を受けて用事が無ければ一緒に帰る。何も変わらない、変わっていないと俺は・・・いや、全員が思っているに違いない。ただ、アイツの口から俺たち以外の名前が出る回数が増えた、それが気にはなっている。

『そういえば、向井くんって・・・』
『向井くんって、この学校に通うためにおばあさんのお家に下宿してるんだって・・・。』
『そうそう、今日向井くんがね・・・。』

史華の口からアイツの名前が出ない日は無いくらいよく聞くようになった。もともと人見知りだった史華が俺たち以外の人、しかも男のことをこんなにも話すのは初めてで、俺としては史華の成長にホッとしているのは間違いなく、史華を守ってきた俺は非常に喜ばしいことだ。それにあの笑顔。アイツと一緒に話をしているときの史華は本当によく笑っている。最近では俺たちと一緒にいるとき以上に笑っているんじゃないかと思うくらいだ。けれど、俺はそんな史華の成長ぶりを手放しに喜んでいられない。どうしてか?それはやっぱり俺たちだ。俺たち幼馴染に遠慮しているフシがある。登下校は俺たちと一緒だし、昼食もアイツと一緒に食ってる所を見たことが無い。あんなにも史華の口から名前が出てくるのに。オリエンテーションのときもそうだった。
 オリエンテーションは1泊2日の合宿形式で行われた。俺たちの学校は小高い丘の上に建っていて、学校の周りに民家は無く林に囲まれている。なので、少年自然の家のような研修センターを利用せずとも週末に学校を使えばそれなりの雰囲気が味わえるのだ。ぶっちゃけると、学校の建っているココがそもそも片田舎の街なので自然と緑も多く人も多くない。俺たちの住んでいるところは、そんな街の外れなのでハッキリ言って田舎そのものだ。そんな環境でのオリエンテーションなので、活動自体は殆どキャンプと同じだった。グランドにテントを張り、校舎裏の広場にあるレンガ造りのコンロで食事を作る。新しい仲間と初めてのコミュニケーションがキャンプということで自然とテンションは上がり仲間意識も生まれる。それは幼馴染の俺たちにも例外はなく、

「それじゃ、いっちょやったるか!」
「お、篤史燃えてるね?」

拓也が楽しそうに俺を見る。俺は力こぶを作り

「ったりめー。こういうのスゲー楽しいじゃん。かまどに火起こすとかワクワクだぜ。」

自慢げに返す。そして後ろにいた晶が

「それじゃあ・・・役割り決めちゃおっか。」

ひょいと俺たちの前に立ってその場を仕切りだす。

「んと、んー篤史は薪割り、私と拓也で飯盒担当するから史華と向井君でカレーお願い。以上っ意見ある人!」
「異議ナーシ。」

俺たち3人は声を揃えると、

「あの、オレ料理はちょっと・・・。」

樹が遠慮がちに手を挙げる。すると、晶は笑顔で

「大丈夫だよ。史華って料理すっごい上手だから、向井君は史華の指示通りのお手伝いで問題なし♪」

と応え、史華も

「そだよ私、こう見えても料理はちょっと自信あるんだよ?晶ちゃんの次くらいに上手いはず!だから一緒にやろ?」

両手で小さくガッツポーズを作る。

「わかった。それじゃよろしく。」

こうして、俺たちの班の夕食作りがスタートした。調理台で史華と樹が並んで楽しそうに下ごしらえをしている。飯盒係の二人は水場へ米研ぎへ向かい、俺は少し離れたところで斧を振り下ろしていた。必要と思われるほどの薪を割り終え、一息ついていると後ろでクラスメイトの男子がワイワイとふざけながら薪を割っていた。

「俺の華麗な斧さばきを見てろよ!おりゃっ!」

力任せに振り下ろした斧は、薪の芯を捉えられずいびつに割れ飛び散った。

「おわっ!あぶねっ・・・って、篠田っ!よけろ!薪が!」
「ん?」

クラスメイトに名前を呼ばれた俺はそちらに振り返ろうとしたときだった。次の瞬間、脳みそを揺さぶられる感覚と直後に訪れた激痛に襲われ視界が奪われた。

「あっくん!」

俺はその場に蹲り、衝撃と激痛が走った箇所を手で押さえ視界が戻るのを待つ。

「あっくん!あっくん!あっくん!あっくん大丈夫?」

すると隣で必死に俺を呼ぶ声が聞こえ、

「史華・・・?ああ、大丈夫だ。」

そう答えると

「や・・・あっくん、血が出てる・・・大丈夫じゃないよ!保健室行こっ!一緒に行くから。」

俺の肩を抱えるようにして覗き込む。

「大丈夫だってこンくらい。それよりアイツと料理作ってこいよ。保健室くらい一人で行ける。」
「やだっ!一緒に行くっ!あっくん怪我してるんだから!」

俺が何を言っても聞かないという勢いで迫る史華に俺は断ることができず一緒に保健室へ向かった。保健室には運悪く校医が席を外していた。俺は丸椅子に腰掛け、史華が戸棚にあるガーゼと消毒薬を持ってきた。

「えっと・・・まずは血を拭いて・・・消毒して・・・しみるかもしれないけどガマンだよ?」

立膝をついて上目遣いで諭すように言う史華に俺は思わず胸が高鳴る。

「ガ、ガキじゃねぇし。っつか、俺自分でできるから、史華戻れよ。」

俺はソレを隠すようにぶっきらぼうに言い放つと

「だめ、私がやるの・・・うん・・・これからは・・・私が・・・。」
「史華?」

史華の言葉に違和感を感じた俺は名前を呼ぶ。すると、史華は弱々しい声で言った。

「私・・・小さい頃からずっとみんなの後ろをついて歩いてて、泣き虫で怖がりで鈍臭くて、いつもみんなの後ろをついて行くのに必死で・・・あっくんにいつも守ってもらって、いつも私のために色々してくれて・・・。」
「史華?・・・おま・・・。」
「でもね、私も高校生になって、いつまでもあっくんの後ろはダメだって・・・守ってもらってばかりじゃダメだって・・・これからは私もあっくんのこと守りたいって・・・あっくんがしてくれたように私もあっくんのために色々してあげたいって思って・・・。」
「ふみか・・・。」
「だから、こういうときも私が手当てしてあげたいの。ホ、ホラ入学式のとき、あっくん向井くんの事で怒ったでしょ?アレもね、中学校のときみたいに私がからかわれて傷つかないようにって心配してくれたんだよね・・・なのに私気付けなくて・・・。」

消毒薬のツンとした匂いが俺たちを包み、俺はその匂いすら感じない程に身体が熱くなっていた。言葉を紡ぐほどに史華の顔を下を向き、最後にには俯いてしまっていた。

「情けねぇな・・・。俺、ずっと史華を守るって決めてたのに。覚えてっか?小学校に上がったとき、『俺が一生史華を守る』っつったの。泣き虫でいつも俺の後ろをチョロチョロついて回ってたオマエを見てさ、コイツは俺が守ってやらなきゃって思ったんだ。」
「・・・・・・。」
「俺がさ、アイツのことで怒ったのは・・・違うんだ・・・。」
「ち・・・がう・・・?」
「史華がコケそうになってアイツに受け止められてさ・・・あの時オマエのアイツを見る目がさ・・・俺、今まで見たことない目だったんだ・・・。こんなに長く一緒にいたのに初めて見る目でさ。そのとき・・・俺・・・瞬間的に『もう守れないかもしれない』って思っちまったんだ・・・情けねぇよ・・・史華はちゃんと成長して俺のことも考えてくれてるのにさ、俺は自分のことばっかで・・・。」

そう言った時だった。

「そんなことないっ!私、あっくんが独りよがりだなんっ・・・て・・・。」
「っ!」

史華が勢いよく顔を上げると、俺と見つめ合うような形になり、お互いの顔の距離が数センチと迫った。俺は思わず目線を落とすと、その先には薄く開いた柔らかそうな唇が迫り慌てて目線を戻す。すると、史華と視線がぶつかる。

「~~~~~!」

史華はみるみる顔を赤らめ、

「にゃっ!」

今までに見たことの無い勢いで立ち上がると、ろくろの上に乗っているのかと思うくらいキレイに回れ右をして背を向けた。

「ご、ご、ご、ご、ごめん・・・あの・・・私、その、びっくりして、別にあっくんのこと嫌がったわけじゃなくて、いや、あの、」
「お、おう、お、お、俺もび、びっくりしたぜ・・・。後は自分でバンソーコ貼っとくから・・・史華、班に戻ってカレー・・・作ってきてくれよ・・・俺、もう腹ペコで・・・。」

お互いしどろもどろで気まずくて、会話なんか成立するはずなくて。

「う、うん、わかった・・・そうするね。ゆっくりでいいからね、それじゃ・・・ね。」

そう言うと、史華は俺の方を振り返ることなく保健室を出ていった。
 結局そういうことなんだ。俺たちがいたから史華は変われたんだろうけど、俺たちがいるから進めない。俺はただ、アイツの史華の笑顔を守ってやりたいんだ。今までも、今も、そしてこれからも。だから、史華の笑顔のもとになっているアイツにちゃんと史華の気持ちが届くように俺は守ってやるんだ。だから、今俺の中にあるこの気持ちはきっと『兄が妹を思う気持ち』なんだ。だから優先させるべきは、史華の気持ちをアイツに届けること。あいつがずっと笑顔でいられるようにすること。

「ああ・・・そうだよ・・・。俺が守るって決めたんだからな。」

俺は星空を見上げて呟く。

「珍しいね。夜一人でこんなところにいるの。」

暗闇から聞こえた声は、徐々に街灯で声の主を照らし出す。

「ん?拓也か。そっちもじゃねぇか。どうしたんだよ。」

声の主は拓也だった。拓也は俺の隣に座り

「なんかねぇ、ちょっと散歩したい気分になったっていうか、気分転換したくなったっていうかね。篤史は?」

ん~っと伸びをしながら俺の質問に答える。

「なんかなぁ、ちょっと散歩したい気分になったっていうか、気分転換したくなったっていうかさ。」

俺も伸びをしながら応える。すると、

「なんだよそれ♪何か考え事だった?」

顔は夜空に向けたまま聞いてくる。そうだ、拓也は地味に鋭いんだった。俺は変に勘ぐられることのないよう正直に言う。

「考え事っつうか、確認だな。俺たちの・・・俺の。」

すると、拓也はスッと立ち上がりこっちに顔を向け笑顔で言う。

「そっか。確認だったらいいんだ。」
「そうなのか?」
「あぁ。篤史、僕らは何も変わらない。今はまだ。だから、今ならもし選択肢を間違ったとしても僕らはソレを正せる。そう思うんだ。」
「なんだよソレ?」
「なんだろうなぁ?ただ何となくそう思っただけさ。それじゃ僕は帰るよ。おやすみ。」
「ああ、おやすみ。」

こうして、俺は一人自問自答の夜を終えた。

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