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各月の日記

YUNIKOさんの日記

(全員に公開)

2016年
09月05日
16:53

ECOじゃない創作。第7話

この間から書き始めたお話『幼馴染語り』。
気分転換的な自分のストレス発散という名目で続きアップです。
とか言いながら、7話になりました。
初々しくて、青くて、切なくて、そんなお話にしたいなぁと思っているのですが・・・w何話まで続くのやら自分でも見当つきません!

稚拙な文章なので恥ずかしいですが、よろしければ目を通していただけると嬉しいです。

タイトル『幼馴染語り』

---------↓↓本文↓↓----------
第7話 向井樹

 勉強を教えてもらうはずだったのにこの状況は一体なんだ。目の前で繰り広げられた幼馴染のケンカ、その結末が目の前で座り込んで泣きじゃくる三森と二人きりにされた。

「なるほど・・・居てほしい理由はそういうコトか。」

この状況が出来上がる直前、西園寺に居てと言われてそのまま残った。ただその時は、せいぜいケンカになって手が出そうなら俺が止めるんだろうくらいに考えていたのだが、手が出るどころか相手の西園寺は教室を飛び出して行った。俺は大きく息を吐くと

「とりあえず泣けるだけ泣いとけ。上手く言えないけど・・・気持ちのすれ違いってこんなもんだ。解ったつもりでも判ってないそれに気付いて傷ついて。そうやってお互い知り合ってくんだ。」

と泣きじゃくる背中をさすりながら宥める。すると、声をしゃくらせながらゆっくりと顔を上げ

「なぁに・・・?グス・・・それ・・・慰めてくれてるのか・・・な?」

三森は精一杯といった感じの引きつった作り笑顔で聞いてきた。俺はその笑顔を崩さないように一言だけ

「一応な。」

と伝えた。すると、笑顔はどんどん崩れていき、声を震わせながら

「優しいんだね・・・向井くん・・・じゃあね・・・。」

あぁ、やっぱりそうなるよなと思いながらも俺はできるだけ優しく

「ああ、泣いとけ。今はオレと三森しかいない。」

囁くように呟くように、三森にだけ聞こえるように声にすると

「うん・・・ありがと・・・あり・・・うぇぇぇぇぇぇぇん!」

三森は俺の胸元に顔を埋め思いっきり声を上げて泣いた。どれくらいの間そうしていたんだろう。正直、今までの人生でこんな状況になったことが無い俺は女子がこんな風に無くところを見たことも無ければ体験したこともない。気まずい空気。正確に言うと、気まずいというよりは緊張だ。胸元に顔を埋めて泣いている三森をボゥっと見ながらどうでもいい事を考えていた。女子の身体が小さいとか思っていた以上に軽いとか男子にはない甘い匂いがするとか。

(そういえば、母さんもちょっと違うけどこんな感じの甘い匂いがしたな。)

不謹慎だと思ったが、幼馴染同士のケンカは友達同士のケンカとはきっと違う、そう思った俺は同情も慰めの言葉もかけることはできない。それならいっそ、関係ないことを考えたほうが三森を傷つけない、そう思ったのだ。
 俺は元々、東京に住んでいた。父親の顔は知らない、いわゆる母子家庭で裕福ではなかったが幸せだった。俺が中学に上がると同時に母さんが一人の男を俺に紹介した。

『樹、紹介するわ。この人は向井さん、母さんの大切な人よ。』
『初めまして、樹君。今度、キミのお母さんと結婚することになったんだ。樹君のお父さんになりたい。認めてくれるかな。』
『え?』

何の前触れもなく、いきなりこんな衝撃告白を受ければ普通の子供はパニックになる。しかし俺にもともと父さんがいないからか、ドラマなんかでよく見る“俺は認めないっ!”“俺の父さんは一人だけなんだっ!”なんていうセリフも感情も湧いてこない。ただ、その人と一緒にいる時の母さんの顔がとても嬉しそうな顔だったから、

『はい、こちらこそよろしくお願いします。』

と一言挨拶すると、母さんは俺を強く抱きしめて“ありがとう”って言って泣いた。それから暫く経って向こうの家に引っ越した。そこで初めて向こうにも子供がいたと知った。俺よりも5つ上で受験生だった。義理ではあったが、初めてできた兄に俺は浮かれた。けれど、現実はそう甘くない。受験生であった義兄の精神状態は常にナーバスで家族は全員彼に気を遣う日常だった。義兄と相部屋だった俺はそんな環境で義兄の顔色を窺い、母さんや義父さんに勉強の邪魔にならないようにと日々言われ、部屋に居る時は気配を消して生活した。しかし、そんな生活が続く訳なんてあり得ない。俺は次第に帰りが遅くなり、いつしか家に俺の居場所は無く外泊することが増えた。非行に走る典型だ。世間で良くないと言われる人種の友達もできた。深夜までゲームセンターに入り浸り、その後はファミレスやコンビニの駐車場でたむろする。当然、そんな生活を送っていれば家族との会話なんていうものは勿論発生するはずも無く、家での孤立は確定的となった。そんな生活の中、義兄の受験が終わり無事志望校に合格したという事を母さんからのメールで知った。そして文末に帰ってきなさいではなく“帰ってきて”と書かれていたことが印象的だった。俺は数週間ぶりに家に帰ると、母さんが俺を抱きしめて

『ごめんね、ごめんね。』

と繰り返しながら泣いていた。母さんの流す涙が抱きしめられた俺の頬に触れたとき、俺は大事な大好きな母さんを傷つけ続けていたと気付いた。そして、

『母さん、俺・・・県外の高校に進学するよ。義父さんや義兄さんが嫌いってわけじゃないけど、今の俺の生活態度のままじゃ、きっとまた母さんを悲しませてしまうと思うんだ。だから・・・その、なんていうか、今までの自分をちゃんと見つめ直して、誰も俺の事知らないトコロで自分を作り直したい。』
『樹・・・。』
『それで・・・その・・・ちゃんとした息子になれたら、そのときはちゃんと義父さん義兄さんじゃなく、“父さん”“兄さん”って呼びたい。・・・いいかな。』

俺の思いがどれだけ伝わったか分からないが、母さんはその夜、皆を説得してくれた。そして、今俺はココにいる。

「落ち着いたか?」

しゃくりあげる声が止まり、呼吸も整い始めた三森にそっと呟くと

「うん・・・。もう大丈夫。ごめんね。」

三森は俺から身体を離すと、少しだけぎごちなさの取れた笑顔で応えた。

「それじゃ、とりあえず顔・・・洗ってこいよ。化粧が落ちてすごいことになってる。」

俺の言葉に三森は目を見開くと両手で一瞬顔を覆い、すぐに解いて

「って、私お化粧なんてしてないもんっ!ピチピチだもん!向井くんヒドイ!」

そう言って俺の胸を叩く。俺は微笑んで

「ふっ、ホントに大丈夫そうだな、よかった。」

そう言うと、彼女はきょとんとした顔で俺を見つめ、すぐに頬を染めて

「え?・・・向井くん・・・ありがと・・・。」

小さな声で呟いた。俺は聞こえてない振りをしてポケットからハンカチを取り出し

「でも、涙の痕つけたままで帰れないだろ?」

差し出すと、三森はソレを受け取り

「うん、それじゃちょっと行ってくる。」

教室を出て行った。しばらくしてさっぱりとした顔で戻ってきた彼女の表情はまだ少し固く見えたので

「それじゃ帰るか。一緒に帰ろう、送るよ。」

そう提案すると、彼女は

「うん。」

一言だけ返した。
 二人で帰る道すがら、俺は何を話せばいいかと考えていると三森の方から声を掛けられた。

「私・・・晶ちゃんに嫌われちゃったなぁ。」

あーあと、困ったような表情で、少しおどけた風に声にする。

「そうかな?」

俺がそう返すと、彼女は不思議そうにこっちを見上げて

「だって、あんなに怒った晶ちゃん初めて見たんだもん。忘れてって言われてたのにお節介して・・・。怒ってないわけないよ。」

そう言い返してくる彼女に

「あれは悔しかったんじゃないかな。」
「悔しい?なんで?」

俺の言葉にきょとんとした瞳で問い返す彼女に

「西園寺は篤史の事が好きで、それを三森に知られて。三森は西園寺の為を思って取った行動に西園寺は素直に受け入れられなかった。それが悔しかったんじゃないか?」

三森はうーんと唸って

「そうかなぁ・・・晶ちゃん確かに素直じゃないトコあるけど・・・そういうことなのかなぁ・・・。」

ぶつぶつと考え込んでいた。俺はポケットに入れた手をそのまま広げて肘を張ると、彼女の背中を押すように当てた。

「うにゃ☆」
「そんな考え過ぎない方がいいぞ。幼馴染って友達以上家族未満な関係だろ?色々勘ぐるよりも素直に話せばちゃんと通じる・・・だろ?」

俺の言葉に難しい顔がみるみるほぐれ

「うん、そうだよね。私のバカな頭であれこれ考えてもしょうがないよね。うん、明日ちゃんと話してみる。ちゃんと謝る。ありがとう、向井くん。」

硬さが取れた笑顔でお礼を言う彼女に俺は視線を前に向けたまま

「気にするな。俺も西園寺に『ここに居て』って言われて残ってただけだし。」

特に抑揚もつけず返す。すると、彼女は何かを決意したように口を開いた。

「向井くんって優しいね。向井くんはさ、私の目標なんだ。最初に助けてもらった時からずっと思ってたんだ。向井くん、普段は何ていうか無愛想でちょっと怖いイメージなんだけど、実はすごい周りを見て人を見て・・・気遣える人なんだって。だって、晶ちゃんが私たちグループのコトでケンカしてる中に、それ以外の友達とか人を絶対入れないし、それに好きな人のことなんて普通話さないよ。あっくんだってそう・・・私が言うのもアレなんだけど、あっくん私のことで怒ったときって、その人のこと絶対許さないんだよ?でも向井くんの時は違う。許すどころか仲良くなってるし。それって向井くんが二人の心を開いたんだって。すごいなって。そう思ったら、私も向井くんみたいに周りをちゃんと見て気遣えて、これからはあっくんとか晶ちゃんが困ったとき、私が助けられるようになるって・・・その標的・・・じゃない目標が向井くん。」

彼女の三森史華の思いを聞いた俺は

「それは・・・」

『ずっと人の顔色を窺って気配を消して居場所を捨てるような生活をしてきたから』等と言えるはずもなく

「それは俺だって同じだよ。俺には幼馴染なんていないから、三森とか篤史たちの関係が羨ましいと思う。俺にも・・・」

と、そこまで口にした瞬間、頭に西園寺晶の顔が浮かび俺は言葉を失ってしまう。

「どうしたの?」

三森は不思議そうにこちらを見上げる。

「ん、なんでもない。ただ・・・。」
「ただ?」
「俺は幼馴染の一人じゃないけど、これからも・・・その・・・友達として一緒にいれたらなって思う。」

俺は頭に西園寺晶の笑顔を浮かべながらそう呟いた。

「うんうん、勿論だよ。別に私たち幼馴染で特別なグループじゃないし。それに友達はたくさんいた方が楽しいもんね。」

無邪気な笑顔ではしゃぐ三森が眩しくて、その姿に西園寺を重ねてしまう俺は

「晶・・・か。」

この幼馴染グループの中に入ることができなくても、それでも西園寺晶・・・彼女の傍に居たいと思っていた。

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