あれですよね、忘れたころにアップするとか・・・
守護魔キサラギと自キャラのお話です。過去のお話はまとめに
リンク貼っていますので、お時間が許されるようでしたら目を通してもらえると嬉しいです。
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diary_164216それじゃいきますね~。
第28話 BAD END FLAG Part1
はじまります。
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第28話 BAD END FLAG Part1
あと数時間もすれば夜が明けるであろう曖昧な時間。トーコは独りアップタウンの中央広場でただぼうっと空を見上げていた。一緒にいたタイタスは既に帰宅して、キサラギはタイニーアイランドに残っている。
「私に何ができるの・・・?こんな事・・・こんな話なら・・・聞かなきゃよかった。」
死んだはずのティタがタイニーアイランドに幽閉されていて、でもティタは間違いなく死んでいて、ココロが破裂して世界に飛び散ってタイタスさんやエミル君が探していて、それが集まればティタは生き返って・・・。
「わけわかんないよ・・・。どこのお伽噺なの・・・。」
確かに、前にエミル君から聞いたことはあった。エミル君とタイタスさん二人で『心の欠片』を探してるということは。でも、それは何ていうか形見さがしというか思い出さがしみたいなものだとトーコ自身勝手に思い込んでいた。しかし、今日タイニーアイランドにいたティタは間違いなく生きていて、もう何がなんだか全てが理解の外にあった。
「このこと・・・エミル君は知ってるのかな・・・。」
もう一度空を見上げて、トーコは小さく呟く。
翌日、トーコは目が覚めてもベッドから出れずにいた。昨夜の事をあれこれ考えるとなかなか寝付けず、しかし仕事の疲労もあって気が付けば昼前だった。ベッドから部屋を見渡す。床に脱ぎ捨てられた服、近くにキサラギの姿はなく、昨夜家に帰ってきたのかも怪しい。今日は休みだし予定している用事もない。トーコは、今日はこのまままったりと過ごそうとシーツを被り直したときたっだ。
ぐぅぅ~・・・
自己嫌悪。こういう時でも普通にお腹が空くとか、いったいどういう神経なんだと自分に毒づく。トーコは盛大に溜息を吐くと、ベッドからもそもそと這い出し下着姿のままキッチンへ向かう。グラスに水を注ぐと一気に飲み干し冷蔵庫を開ける。レタスとハム、チーズにソフトドライトマトくらいしか見当たらない。
「サンドにするかぁ。」
冷蔵庫から食材を取り出しブレッドケースからバゲットを1本取り出すと、手際よく4等分して縦に割きレタスとチーズ、半分にカットしたソフトドライトマトを順番に挟み、オリーブオイルと垂らしてブラックペッパーを振ったお手軽サンドを手際よく作り、キサラギの分はオイルを垂らさずお皿に乗せてブレッドケースに仕舞う。そして、コンソメブロックをマグカップに入れ、ソフトドライトマトも2つ放り込むと熱いお湯を注いで即席のコンソメスープを作ると、テーブルに置いてトーコも席につく。
「いただきます。」
目の前のサンドを両手で掴み、いざかぶりつこうとしたときドアノックハンドルで叩く金属音が耳に入った。トーコはサンドを皿に戻すと、
「はーい。どちらさまですか?」
テテテと足早に玄関に駆け寄ると、返事を聞かずにドアを開ける。
「トーコちゃん?エミルだけどさっきお店に行ったら休みの・・・・・・・っ!」
ドアの先にはエミルが立っていた。そして、トーコと目を合わせるなり顔を赤く染める。
「あ、エミルくん。こんにちはー、今日はどうしたの?ん?え?何?」
エミルの狼狽えぶりにトーコは驚いて声を掛ける。エミルは右手で自分の目を覆い
「ト、ト、トーコちゃん!その、あの、服・・・」
「服?・・・・・・ひゃっ!」
トーコはそのまま開けたドアを閉め、
「ご、ご、ご、ごめんなさいっ!す、すぐ仕度するから!ちょ、ちょっと待ってて!」
「う、うん・・・。ゆっくりでいいよ。」
「うんっ!すぐ着替えるから!」
ドアの向こうでバタバタと忙しく動く足音と時折聞こえる小さな悲鳴にエミルは
「ふふっ。トーコちゃん可愛いなぁ。」
などと微笑ましくその時を待っていた。しばらくしてドアがゆっくりと開かれ
「お、お待たせ、エミル君。どうぞ。」
「あ、うん。」
エミルを迎え入れるトーコは、黒のボーダーシャツに黒のジャンパースカートに着替えていた。
「ごめんね、突然連絡も無しに訪ねちゃって。」
申し訳なさそうにエミルが言うと、トーコはブンブンと首を振って
「ううん、全然!全然大丈夫。私こそ今日お休みだったからついお寝坊しちゃって。みっともない姿見せちゃった・・・ごめんね?」
と舌をチロっと出して頭を下げる。ほんの少し気恥ずかしい雰囲気ではあったが
「と、とんでもない!僕もその、綺麗だったからつい見蕩れちゃ・・・っ、なんでもない!」
「え・・・?」
というエミルの自爆で盛大に気恥ずかしい雰囲気になった。トーコは気を取り直して、
「あのね、私ブランチこれからなんだけど、エミル君お昼は?」
「あ、うん、まだ・・・。」
「そっか、それじゃ簡単なサンドイッチだけど食べてく?」
「いいの?」
「うん。一人より二人の方が美味しいでしょ♪」
「そうだね、それじゃお言葉に甘えて。」
「はい♪」
トーコはブレッドケースに仕舞ったもう一皿を取り出し、キサラギに心の中で謝りながら、手際よくオリーブオイルを垂らして準備をする。手抜きコンソメスープも用意してテーブルに並べると二人向かい合って座り
「手抜きでごめんねなんだけど。どうぞ召し上がれ。」
「美味しそう。うん、いただきます。・・・・・・んっ、んまいっ♪」
「えへへ。よかった♪」
二人は、特に会話もないまま食事が進む。サンドイッチとスープをたいらげると食後のお茶を淹れ、二人は食後の幸せを噛みしめていた。と、そこでトーコがふと口にする。
「そういえば、エミル君どうしてウチに?」
「・・・・・・。」
エミルはティーカップをテーブルに置くと、トーコを真っ直ぐに見つめゆっくりと口を開いた。
「昨日の夜・・・タイタスに全部聞いたんだね。」
「え?」
「ティタのこと。」
「・・・うん。」
エミルの言葉でトーコは全て知っているんだと理解した。エミルの真っ直ぐな瞳を見つめ返すことが出来ず思わず俯いてしまう。すると、エミルは優しい声で
「ごめんね。トーコちゃんは関係ないのに・・・だから、このことで悩まないで欲しいんだ。これは僕と・・・ううん、僕の問題なんだ。」
「そんな・・・」
「だから、トーコちゃんは今まで通りの生活を送って欲しいんだ。それを言いたくて。」
トーコは胸が苦しくなった。ここまで知ってしまって、それで今まで通りの生活に戻るとか絶対ムリだと。相手が全く知らない人ならそれもできただろう。他人事だと可哀想に大変だねと言えたかもしれない。けれど、ティタは友達でエミル君もタイタスさんも私の身近にいる人たちがこんなにも苦しい思いをしているのに黙って見過ごすなんてできない。それに・・・
「・・・ムリだよ。」
「え?」
トーコの小さな拒否の声にエミルは思わず聞き返す。
「私・・・全部知っちゃったの・・・。ティタがどうしてこうなったのか。氷結の坑道であの日何があったのか・・・。」
トーコの言葉にエミルは驚きを隠せず、
「ど、どうして・・・タイタスが話した・・・の?ルルイエ?それともベリア・・・」
「ううん、違うの。少し長くなるけど・・・聞いてくれる?」
トーコは顔を上げ、真っ直ぐに見つめるとエミルはその瞳に何かを感じたのか黙って頷いた。
「実はね、私キサラギっていう守護魔と契約したの・・・。」
「え?守護魔?・・・ホントに居たんだ・・・ヒトトセの守護神・・・。」
「でね、その契約自体も事故みたいなもので・・・って、ソコはいいんだけど、キサラギは恋の守護魔だから私の恋を成就させるって・・・」
「・・・うん。」
トーコはそれから恋をするために自分を変える特訓だとか今まであった出来事を話していった。そして、
「ある日、私がエミル君にマーシャと付き合ってるの?って聞いたことあったでしょ?」
「・・・あぁ、うん。」
「あの時に、エミル君が言いかけて止めた事と悲しい目をした事が気になって・・・。そうしたらキサラギがティタの記憶を覗いて真実を見てきたって・・・それを私に見せて。」
「なるほど・・・。それじゃタイタスが話かけたのは・・・」
「はい、驚くほどに偶然で・・・でも、タイタスさんはキサラギの事気づいてたみたいで『隠しておけないから』って。」
エミルは少し考える風にして、
「そっか。ありがとう話してくれて。」
「ううん・・・私も本当は知られたくない事だって分ってて、でも言い出せなくて・・・だから今日こうやって話せてよかった・・・。」
トーコは冷め切った紅茶を口にして更に口を開く。
「それで、昨日の夜タイニーアイランドでティタのココロの結晶を見せてもらったの。」
「うん。」
「あと1ピースだって・・・だから、最後の1ピース・・・私にも協力させて。」
「え?・・・どうして?」
エミルは少し驚いた。すると、トーコは
「私・・・正直言うと、ティタの記憶を覗いて『この子ズルイ』って思っちゃったの。だって、好きって気持ちを命まで賭けてアピールして自分はその答えを聞かないんだよ?そんなの・・・絶対エミル君ティタの事忘れられない!ずっとエミル君の心はティタっていう鎖で繋がれて・・・新しい世界なんて見えないし他の女の子の気持ちも届かない・・・。そんなのズルいよ・・・。絶対勝ち目ないんだもん・・・。」
僅かに声を震わせた。それを聞いたエミルは
「それって・・・トーコちゃん・・・もしかして・・・。」
「だから!だから何としてもティタを生き返らせて、ちゃんとエミル君に告白して私も告白して、どっちか選んでもらうの!・・・・・・・あ。」
今、自分がとんでもないことを口にしたと固まった。エミルもトーコの突然の告白同様のセリフに口を開いたまま止まっていた。しかし、エミルはすぐに笑顔を作り
「ありがとう。すごく嬉しいよ。・・・うん、わかった。それじゃトーコちゃん、一緒に探してくれるかい?ティタのココロ。」
「うん。」
こうして、トーコはティタのココロを一緒に探すことになった。
「あ、お茶冷めちゃったから淹れなおすね。それで聞きたいこともあるし・・・エミル君時間大丈夫?」
「大丈夫だよ。それじゃお言葉に甘えておかわり・・・お願いできる?」
「はい♪」
トーコはティーポットを手にキッチンに入るとお茶のおかわりを準備して戻ってきた。二人のカップに仄かに香るジャスミンのお茶が注がれると
「それじゃ・・・早速なんだけど、その欠片ってどうやって場所がわかるの?」
一番気になっていたところから質問する。
「欠片はね、もともと一つの結晶だったでしょ?だから呼び合うんだ。欠片が教えてくれるっていうのかな、こっちだって。」
「?・・・それって声が聞こえるとか?近づくと光るとか?」
「うーん、声っていうか・・・意志っていうか・・・直接心に響いてくるというか。あ、でもそれを感じられるのは僕だけみたいなんだ。タイタスは何も感じないって。」
「え?そうなの?」
「うん、タイタスが言うには『ティタの想い人だから感じられるのかもしれない』って。だから割とスムーズに見つかったんだ。最後の1ピースを残して。」
「最後の1ピースは何も感じられないっていうこと?」
「うん・・・。ただ、もしかしたら集まった欠片をタイタスがタイニーアイランドへ預けてしまったから呼び合う対象が無くて感じられないのかなって思ったりしてるんだ。」
「なるほど・・・それじゃ、集まった欠片借りちゃえば?」
「え?・・・まぁ確かにそれができれば早いけど・・・人は星霊祭以外じゃ夜の島に行けないでしょ?」
エミルの言葉にトーコはほんの少し鼻を膨らませ、
「そこは・・・たぶん大丈夫。キサラギと契約してるって知られたし、たぶん夜の方に転送してもらえると思う。あ、だったら今晩行ってみる?」
「ホントに?でも、トーコちゃん明日仕事でしょ?」
「うん、でも欠片借りるだけならそんなに遅くならないでしょ?探すのは明後日以降にしてさ?それに他に探し方があるかも知りたいし。」
「わかった。それじゃ夕方くらいに・・・迎えに行くよ。」
「うん。わかった。」
エミルはお茶を飲み終えるとトーコの家を後にした。エミルが帰って1人になったトーコは食器を片づけながら
「・・・そっか、私・・・エミル君が・・・エミル君の事が好き・・・なんだ。」
小さく呟いた。
・・・To be continue