契約1日目、仕事先にまで現れたキサラギに不安を隠せないトーコ。
はたして、愛の契約はどうやって遂行されていくのか・・・。お待たせ(?)しました。第5話はじまりでーす。
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店先を箒でせっせと掃く。開店前のちょっと忙しい時間帯。掃き掃除の後は、テラスのテーブル拭き、水撒き、それが終わったら店内の掃除・・・やることは山ほどある。
基本的に掃除が好きな私は、それほど苦になる仕事でもないのだけれど今日は違う。だって・・・
『ねぇ、トーコってどんな男が好みなの?』
「・・・・・・」
『背が高いとか、イケメンとか、たくましいとか?』
「・・・・・・」
『ねぇ、ねぇってば!』
「あー!うるさいなっ!私は今忙しいのっ!」
私は、箒を動かす手を止めて少し大きな声で小さな悪魔に言う。
「トーコちゃんどーした?何か言った?」
店の奥からマスターの声が聞こえた。
「い、いえ~!なんでもないですー!」
はぁ・・・小さくため息をつくと、
「キサラギ~・・・」
私は湧き上がる苛立ちを堪えながら彼女を睨む。
『ホラ、トーコ周り見てみなよ。みんな不思議そうに見てるよ?』
「え?」
私はキサラギの言葉で我に返り周りを見る。すると、店の前を通る人達が少し怪訝そうな視線を送っていることに気づき、自分の顔が熱くなり思わず下を向く。
『さっき言ったじゃん。アタシの姿はトーコにしか見えないんだから。声だって耳から聞こえてる?トーコの心に直接話しかけてるから、ハッキリ聞こえてるでしょ?』
言われてみれば、この雑踏の中キサラギの声はとてもクリアに響いてくる。
『だからね、トーコも心でアタシに話しかければそれで通じるわ。やってみ?』
心で話しかける・・・、それって声にしないで頭に浮かべればいいのかな?いまひとつピンとこない私。それでもやってみないと始まらないわけで。
『こう・・・かな?聞こえてる?』
『そうそう、トーコやればできるじゃない。』
私は、聞こえてくるキサラギの言葉にホッと胸を撫で下ろし、掃除を再開する。
『これから外ではこれで会話するんだからね。』
『わ、わかったよ。で、でも私、仕事中はいっぱいいっぱいで聞こえてても答えられないかもしれないし、そもそも聞こえないかもしれないよ?』
『大丈夫よ。そんなこと最初からわかってるからさ。それじゃ、アタシは大人しく観察してようっと♪』
『ハイハイ、そうですよね。はぁ・・。』
こうしてその後は特に変わったこともなくランチタイムを終え、この店の本番とも言えるディナータイムを迎えた。
・・・To be continue
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